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高まる情報セキュリティ対策の重要性
近年、情報セキュリティの重要性が一層高まっている。企業はサイバー攻撃やデータ漏洩のリスクを軽減すべく、AIや機械学習を活用した高度なセキュリティソリューションの導入を進めている。
総務省※によると、2021年の国内の情報セキュリティ製品市場(売上高)は、前年より16%増の4360億1500万円となった。情報セキュリティ対策強化が求められる背景には、新型コロナウイルス感染症によるリモートワークの増加が影響しているとの見方が多い。
企業はより高度で持続的なセキュリティ対策を求められており、サイバー攻撃への迅速な対応がますます重要視されている。
スタートアップ6選
LRM株式会社
企業HP:https://www.lrm.jp/
従業員の情報セキュリティ教育を支援するクラウドサービスを提供する。90種類以上のeラーニング教材と40種類以上の標的型攻撃メール訓練用テンプレートを提供し、自社に合った教材を選んで配信できる。ISMSやPマーク取得に向けた教材も準備され、定期的に更新されるため、自社で教材を作成する手間が省ける。採点や集計も自動化され、情報セキュリティ担当者の負担を軽減しつつ、従業員のセキュリティ意識向上に貢献する。2016年のサービス開始から、業種・規模問わず幅広い企業を対象に累計1600社以上が導入している。
2024年4月には、三菱UFJキャピタル、南都キャピタルパートナーズ、みなとキャピタル、KOBEスタートアップ育成1号ファンド(フューチャーベンチャーキャピタルが運営)を引受先とした第三者割当増資と株式譲渡による、1.8億円の資金調達を実施した。
SecureNavi株式会社
ウイルス対策や脆弱性診断などの技術的対策に対し、情報セキュリティの認証やガイドライン準拠、社内規程整備を「文系のセキュリティ」として位置づけ、サービスを提供する。組織の情報セキュリティレベルを高めることで、情報セキュリティ事故を減らす考えだ。また、従来のExcelやWordでの管理工数を削減し、数百社のノウハウを基に開発された仕組みで、ISMS認証やPマーク取得を支援する。認証取得後の運用までサポートする点が特徴だ。
2023年11月には、シリーズAラウンドにてSBIインベストメント、DNX Ventures、モバイル・インターネットキャピタル、NEXTBLUEを引受先とした第三者割当増資による、4.6億円の資金調達を実施した。2024年6月には、半導体やセキュリティ事業を展開するマクニカと、セキュリティレベル・生産性向上に向けパートナー契約を締結した。
MTU株式会社
メディカルセキュリティクラウドサービス「Mowl(マウル)」を開発する。同社が支援するのは、医療機関のサイバーセキュリティ対策だ。Mowlは、ITセキュリティ部門やデータ管理部門の業務を支援する、メディカルセキュリティに特化したクラウドサービスだ。医療機関のセキュリティ対策の状況を可視化し、独自の「偏差値」を算出してレポーティングする。
2024年4月には、シリーズAラウンドにてDesign for Ventures、Iceblue Fund 、90s、伊藤嘉盛氏(トグルホールディングス代表取締役)をはじめとするその他株主を引受先とした、第三者割当増資による3.8億円の資金調達を実施した。
株式会社Conoris Technologies
クラウドサービスのセキュリティチェック業務サポートプラットフォーム「Conoris」を開発する。Conorisは、クラウドサービス提供企業とクラウドサービスユーザー企業間のセキュリティチェック業務を支援するプラットフォームだ。
2022年8月には、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により約7500万円の資金調達を実施した。2024年1月には、クラウドサービスのリスク評価サービスを提供するアイティクラウド社との事業提携を行った。
株式会社KEKKAI
企業HP:https://kekkai.io/
ウォレットセキュリティプラグイン「KEKKAI Plugin」 などの開発・運営を行う。KEKKAI Pluginは、NFTの購入時など、ブロックチェーンでやり取りをする際に、危険検知機能やスキャムサイト検測機能などで、詐欺などを防止するツール。
2024年2月には、ブロックチェーン同士の相互運用性(インターオペラビリティ)ソリューションを開発するFutabaと業務提携を開始した。2024年6月には、新ブランド「KEKKAI LABS」を設立し、事業者向けにコード監査などのセキュリティサービスを提供開始した。
株式会社テラアクソン
企業HP:https://www.telaaxon.com/
神戸大学数理・データサイエンスセンター長である小澤誠一教授の研究成果を社会実装する目的で、2022年5月に設立された神戸大学認定ベンチャー企業。金融機関向けに金融情報を保護し、詐欺などの犯罪から守るプロダクトの開発をして行っている。ほかにも、AIが人のプライバシーを侵害せず、個人情報を無許可で伝達しないようにするため、プライバシー保護技術の研究を行っている。また、AIが人々を傷つけるリスクにも焦点を当て、倫理的な行動を促進する保護技術の研究も行っている。
2023年11月には、プレシードラウンドにて、神戸大学キャピタルを引受先とした第三者割当増資による3000万円の資金調達を実施した。2024年3月には、INNOVATIONプロジェクト「UPDATE EARTH」の「NIPPON INNOVATION AWARD」にノミネートされた。
今後のセキュリティ対策スタートアップ動向に注目
情報セキュリティの重要性は今後も増し、企業は高度なセキュリティ対策を求められる。大規模な情報漏洩事故のニュースを耳にすることも増える中で、安全なデジタル環境の確保は企業の成長と社会の安定に不可欠だ。今後の動向に注目したい。
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※総務省 「情報通信白書」