株式会社Bashow

車載アプリを提供する株式会社Bashowは、TPRおよびアルバクロスが運営する投資ファンドを引受先とし、J-KISS型新株予約権を活用したプレAラウンドにおいて総額1.8億円の資金調達を実施した。同社は、クラウド接続が進展するモビリティ分野において、移動中の体験価値を高める車載アプリ事業を本格展開している。
Bashowが開発・運用するスマートフォンアプリ「Bashow」は、ユーザーの位置や状況に応じて、その地域のトピックを10秒程度の音声で案内するサービスである。従来のナビゲーションや観光案内アプリと異なり、地名やランドマーク情報にとどまらず、最新のイベント情報、飲食店の限定メニュー、地域で話題となっている話など、その時・その場所ならではの動的な情報を提供することが特徴だ。独自のマルチAIシステムを用いて膨大な公開情報からトピックを自動生成し、案内タイミングもユーザーの行動認識や移動状況に合わせて最適化する仕組みを採用している。
2024年度は、さいたま市、静岡県掛川市・菊川市・御前崎市、神奈川県横浜市でサービスを提供中であり、地域自治体の支援を受けながら運用されている。現在はiOSアプリのみの対応だが、2025年にはAndroid版のリリースを予定している。
代表取締役の程塚正史氏は、大学卒業後、衆議院議員事務所、コンサルティング会社を経て、2014年から日本総合研究所で自動車・モビリティ領域の研究員を務める。研究活動と並行して、小型EVメーカーや車載システム事業など4件の新事業を創出。2024年4月にBashowを設立し、車載コンテンツ市場の基盤システム構築に取り組む。
車載アプリ市場は、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の潮流により拡大傾向にある。2030年代には、20兆円規模に達すると予測されている。自動運転技術やSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の普及に伴い、車内空間が移動以外の新たな価値消費の場へと変化しつつあり、情報提供やエンターテインメント、購買など多様なサービスが開発競争を繰り広げている。競合としては、GoogleやAppleの車載OSと連携するアプリや、ナビタイム、Yahoo!カーナビのような多機能型ナビゲーションアプリが挙げられる。加えて、中国や米国のIT大手も車載向けコンテンツ市場への参入を強化している。一方、日本発のスタートアップによる自治体連携型サービスはまだ少数にとどまる。
今回の資金調達を通じて、トピック案内サービスの品質向上と利用者拡大を図る。パートナーとの連携により多様なトピックを創出し、案内のタイミングも精緻化する。また、現在は一部地域に限定されている運用エリアを、首都圏全体など大都市圏へ拡大する計画であり、それに向けた社内体制の整備も進めていく。
今後も、地域の魅力に気づき、関心や行動の幅を広げるきっかけを提供する。また、デジタルコンテンツを通じて、移動体験をより豊かで価値あるものに変えていくことを目指す。