BtoC企業のCX課題を一気通貫で解決するInsightX、シリーズAで6億円調達

BtoC企業のCX課題を一気通貫で解決するInsightX、シリーズAで6億円調達

xfacebooklinkedInnoteline

パーソナライズを軸としたCX(顧客体験)変革AIプラットフォーム「InsightX」を提供する株式会社InsightXは、DNX Venturesを引受先とする第三者割当増資により、シリーズAラウンドファーストクローズで総額6億円の資金調達を実施したと発表した。同時に、代表取締役CEOの中沢弘樹氏に加え、佐竹佑基氏が同じく代表取締役CEOに就任し、12月から共同代表制となった。

InsightXは2021年7月の創業以来、独自開発の「シェルフ型レコメンド」をコアプロダクトとして、オンワードホールディングス、パル、アーバンリサーチ、ルミネなどファッション・アパレル業界を中心に10社以上のBtoC企業に導入されている。同社の技術により、ECサイトを利用するエンドユーザー一人ひとりのインサイト(潜在的なニーズ)をリアルタイムで捉え、それに基づいた商品の切り口やコンテンツをパーソナライズして提案することで、各企業が「自分だけの特別な売り場」を提供できる仕組みを実現している。

InsightX シェルフ型AIレコメンド
各ユーザーのインサイトに合わせた切り口でおすすめ商品を集めた “シェルフ”を全自動で表示させることが可能

国内EC市場は2014年の約13兆円から2024年には約26兆円へと2倍に拡大し、商品数も大幅に増加している。一方で、消費者の可処分時間は増えておらず、膨大な選択肢の中から自分に合った商品を見つけることが困難になっている。同社によると、約73%の消費者が「商品の選択肢の多さに圧倒されている」と回答しているという。

こうした環境下で、多くのBtoC企業はデータ活用基盤や検証プロセスが不十分なまま施策を立案せざるを得ず、さらに、UI/UX変更には数カ月を要するケースが多いため、スピーディーな顧客体験の更新が難しい状況にある。長年の蓄積データを有するAmazonやNetflix等の大手企業を除き、多くの企業では高度なパーソナライズのハードルが高かった。同社はこのような現状の解決を目指す。

InsightXの強みは2つある。

1つ目は、従来のレコメンドエンジンが個別商品を提示するのに対し、同社の「シェルフ型レコメンド」は商品の切り口そのものをパーソナライズする点だ。これにより、パーソナライズと訴求力の高い表現を両立させたコンテンツを、運用工数をかけずに自動構築できる。

2つ目は、同社の専門技術チームが独自のAIプラットフォームを駆使し、顧客体験の課題特定から施策立案、実装、効果測定に至るまで、CX改善を一気通貫で伴走支援する点だ。

CX変革AIプラットフォーム InsightX
オンボーディングやデモ実装を担うDS(Deployment Strategist)とその後のデプロイを担当するForward Deployed Engineer(FDE)の2チームがCX向上のため並走支援する

中沢氏によると、同社は2023年1月から約2年間で、無償POCを10社程度実施してきた。「この2年間は、時間をかけてプロダクトやカスタマーサクセスの土台をつくる時期だった。それを経てプロダクトとしてのクオリティが向上し、様々な企業にご提供できるという自信がついた。今年初めからスケールに向けて動いているが、商談から受注に至る割合が高く、我々が積み上げてきた実績がマーケットから評価されていると感じる」と中沢氏は振り返る。

今回の資金調達により、同社はプロダクト開発の強化、営業・マーケティング体制の拡充、組織体制の強化を進める。現在の8人体制から20〜30人規模まで組織を拡大し、プロダクトやCXパーソナライズの仕組みをより多くの企業に提供していく考えだ。

また、今年12月からの共同代表制の導入について、中沢氏は「事業規模の拡大に伴い、より複雑で高度な経営判断が求められる局面が増える。プロダクト開発と事業推進の両面から迅速な意思決定を実現し、さらなる成長を加速させる」と説明した。佐竹氏は創業期から取締役COOとして事業運営の最適化と組織体制の構築に取り組んできた人物で、今後は2人のCEOとして経営を担う。

引受先のDNX Venturesは、2022年9月に同社のシードラウンドでも出資しており、今回が2度目の出資となる。DNX Venturesはシリコンバレーと東京に拠点を構え、SaaSを中心とするB2Bスタートアップへの投資を行うベンチャーキャピタルだ。

今後の展開について、同社は引き続きシリーズAラウンドファイナルクローズに向けて資金調達活動を継続する。ファッション・アパレル業界で培った実績とノウハウを基盤に、あらゆるBtoC企業へと展開を広げる計画だ。中沢氏は「各業界ごとにそれぞれ少しずつペインが異なるので、深く入り込んでそれに合わせた施策を行う必要がある。多品種で嗜好性のあるモノを扱うEC領域を我々はターゲットマーケットとして考えているが、各業界ごとの特有のペインを解けるように試行錯誤し、サービスをカスタマイズすることが必須だ」と述べる。同社は対応領域を拡大し、今後2年間で売上を10倍にする目標を掲げている。

同社のミッションは「事業者の情熱をユーザーの感動へつなぐ」。中沢氏は「ビッグテック企業の特権であった高度な顧客体験のパーソナライズを、あらゆる企業が当たり前に実現できる世界。この実現に向けて、今回の資金調達と共同代表制の導入により、1段ギアを上げて事業を推進していく」と意気込みを語った。

オープンイノベーションバナー

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業