ノンデスク産業のDXを支援するX Mile株式会社がシリーズBラウンドにて、第三者割当増資による約18億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Minerva Growth Partners、JPSグロース・インベストメント※、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、SMBCベンチャーキャピタルの4社。
今回の資金調達により、さらなるマルチプロダクト戦略の推進や開発・組織体制の強化を目指す。
※ JPインベストメント株式会社の子会社及び三井住友トラスト・インベストメント株式会社を運営者とするJPSグロース・インベストメント投資事業有限責任組合
業界別ソリューションでノンデスク産業のDXを推進
X Mileは、ノンデスク産業のDXに取り組む企業だ。物流や建設、製造などのノンデスク産業における人材不足や労働生産性の課題に対して、HR・ITプラットフォームを展開する。
同社が提供する「X Work」は、ノンデスク産業に特化した求人検索サービスだ。ドライバーなどの求人のほか、物流作業員や自動車整備士など、日本全国の幅広い職種の求人を掲載している。累計で40万名以上が登録する。
また、人材不足を解消に貢献する手段として、X Workのほかに物流・自動車整備・建設領域それぞれに特化したエージェントも手掛けている。
ノンデスク産業の低い労働生産性を背景に、主に物流業界向けに提供する業務効率化SaaSが「ロジポケ」だ。配車管理などの単一機能を備えたプロダクトではなく、経営管理や請求管理、運送手配、採用などの総合的な業務効率化を支援している点が特徴だ。
X Mileがノンデスク産業向けに提供するサービスの取引数は、2024年1月時点で1万事業所を超える。2023年からの1年間で2倍となった。
また、事業を通じて蓄積したノンデスクワーカーのデータは約40万件に上る。今後は蓄積したデータを活かし、さらなるマルチプロダクト戦略の推進を目指している。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 野呂 寛之氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
ノンデスク産業のマイナスをプラスに
―― 物流業界における労働生産性の低さや、人手不足に関する現状を教えてください。
野呂氏:例えば運送会社では、ドライバーの勤怠や給与を管理する管理者が多忙な状況に置かれています。数十名のドライバーの勤怠管理や給与計算といった業務を毎日アナログで行っており、デジタル化が進んでいません。
こうした背景から、管理者の残業時間はホワイトカラーと比較しても多くなってしまっています。物流は、止まってはならない領域の仕事です。それにも関わらず、第三者から見ると激務のイメージが強く、中長期的に安心して働こうとは思いづらいような働き方が蔓延しています。
また、現場で働くドライバーなどのノンデスクワーカーについても、運搬する荷物をトラックに積むまでに長時間待機するなど、非効率な業務による長時間労働を強いられています。加えて、運賃が低ければ、必然的にドライバーの給与も上がりません。
物流に限らずノンデスク産業の多くは、きつい・汚い・危険といったイメージが抱かれやすい仕事です。衣食住を支えている領域であるにも関わらず、新規の労働力獲得が困難な現状は大きな課題です。
―― どのような経緯でX Mileの創業に至ったのでしょうか?
以前から、日本経済の成長が停滞していることへの危機感を抱いていました。そのため、経済成長を促すイノベーションを起こす上で、スタートアップ・政府・VCの領域に自然と関心を持つようになりました。
スタートアップであれば、大きな取り組みでもスピーディーに実現することができます。国内のスタートアップも不足していた背景から、まずはスタートアップ領域で働くことを決意し、テラモーターズの海外事業などで働きました。
初めて関わったスタートアップは入社当初は3名程度の組織でしたが、1年で30名まで成長しました。新たな産業価値を生み出し、熱量高く成長するスタートアップの可能性を体感した瞬間でした。その後も、複数のベンチャー企業に参画し、前職のPaymeには2番目社員として入社し、取締役COOを担いました。その次の挑戦として創業したのがX Mileです。
―― ノンデスク産業に注目をしたのはなぜでしょうか?
2010年代は、ソフトウェアやメディアエンターテインメント領域の事業が多く誕生していました。そんな中、祖父が農業や医療・介護などの社会課題に関連する事業に携わっていることもあり、リアルな産業にはもともと関心があったんです。マイナスをプラスにすることのできる事業をやりたいと考えていました。
物流や建設業では顕著に課題がある一方で、これらのノンデスク産業でソリューションを提供するプレイヤーは少ない。業界が複雑で、事業構築の難易度が高いことも要因の一つだと思います。生活のインフラとなる産業にもかかわらず参入しづらい分野だからこそ、この領域で事業をやってみようと決意しました。
令和を代表するメガベンチャーへ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
ノンデスク産業の中でも、各領域でサービスを提供していることが当社ビジネスの特徴です。今後もマルチプロダクト戦略を推進する上で、さらに多くの事業を仕込んでいく必要があります。今回の調達資金は、これらの事業展開に向けた製品開発や組織拡大の費用に充てる予定です。
これまでは、毎年3つ以上のペースで新規事業を展開してきました。今後もペースは落とさず、例えば脱炭素関連や2024年問題を考慮した労務対策など、ニーズのある新規の事業機会を探っていきます。また、現在は200名程度の組織をさらに拡大できるよう、採用も積極的に行ってまいります。
―― 今後の展望を教えてください。
さまざまな領域の社会課題を発見・解決する、巨大なコングロマリット企業になれたら面白いと思っています。日本ではこうしたメガベンチャーはあまり多くありません。複数の社会課題に取り組むパイオニアとして、令和を代表するメガベンチャーになることが目標です。
そのためにも、ノンデスク産業向けサービスの取引数として、2024年中に1.5万事業者、2025年には2万事業者との取引達成を目指します。今後は、資本提携による長期的なアライアンスや事業連携も積極的に進めながら、目標達成に向けて取り組んでいきたいと思います。