KAICO、シリーズBで総額5.4億円を調達ーー蚕由来の飼料添加物でアニマルヘルス分野へ本格参入

KAICO、シリーズBで総額5.4億円を調達ーー蚕由来の飼料添加物でアニマルヘルス分野へ本格参入

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蚕を使ったタンパク質生産技術を開発するKAICO株式会社は、シリーズBラウンドで、第三者割当増資による総額5.4億円の資金調達を実施した。

今回のラウンドには、既存投資家の伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、東京センチュリーに加え、新たにアグリビジネス投資育成、DGインキュベーション、肥銀キャピタル、佐銀キャピタル&コンサルティング、JMTCキャピタルが参加している。これにより、累計のエクイティ調達額は13.9億円に達した。

同社は、蚕を使ったタンパク質生産技術で注目を集める九州大学発のバイオスタートアップだ。2018年に設立され、福岡を拠点に医薬品や診断薬、ワクチンの開発を手がける。最大の特徴は、蚕にバキュロウイルスを感染させることで、通常の培養系では難しい高機能タンパク質を安定的に生産できる点にある。

同社が力を入れるのが、注射不要の「食べるワクチン」。ノロウイルスなどを対象にした経口ワクチンは、冷蔵保管が不要な上、投与のハードルが低い。豚用ワクチンの研究では、感染症の抑制と体重増加の両立にも成功している。こうした技術は、人獣共通感染症や途上国のワクチン供給にも応用が期待されている。

また、地域の耕作放棄地を活用した養蚕との連携にも取り組み、バイオ産業による地方創生という側面も持つ。

今回の資金調達は、蚕由来タンパク質を活用した豚用飼料添加物「KAICO Powder」の事業化に向け、生産設備の拡張および量産体制の構築に充てられる。すでにベトナム農業農村開発省により飼料添加物として登録されており、同国で販売が開始された。今後はアジア諸国への展開も視野に、商流構築を進めている。さらに、養殖魚や愛玩動物向けの経口投与型製品も開発中であり、それぞれ実証実験フェーズから事業化フェーズへ移行している。

代表取締役の大和 建太氏は、大学卒業後、三菱重工業に入社し15年間勤務。起業などを経て九州大学大学院経済学府MBAコースにて出会った技術を元に、2018年にKAICOを創業した。2021年経口ワクチン技術を開発。2024年にはベトナムにて豚用飼料添加物の販売を開始。将来は人用経口ワクチンの実用化を目指している。

同社は、事業の伸長に伴い、原料である蚕の安定調達体制の整備も進めている。これにより、国内で衰退傾向にあった養蚕業の復興や、桑の植樹面積拡大によるCO2削減といった環境負荷軽減への貢献も期待される。

今後は、蚕を活用した技術によってアニマルヘルス分野における課題解決に取り組むと同時に、畜産・養殖業の生産性向上や地球環境への貢献を目指す方針だ。

画像はKAICOプレスリリースより

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