穴熊がシリーズA資金調達を実施、テキスト通話アプリ「Jiffcy」の開発加速とグローバル展開へ

穴熊がシリーズA資金調達を実施、テキスト通話アプリ「Jiffcy」の開発加速とグローバル展開へ

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テキスト通話アプリ「Jiffcy(ジフシー)」を提供する株式会社穴熊は、シリーズAラウンドで資金調達を実施した。同社は今回の調達を通じて、アプリ機能の拡充やAndroid版の提供、グローバル展開に向けた体制整備を進める方針だ。

穴熊は2018年に設立され、「コミュニケーションの可能性を解放する」というミッションのもと、従来のメッセージングとは異なる「テキスト通話」という新しい手法を提案している。

Jiffcyは、リアルタイムに文字が一文字ずつ表示される仕組みを特徴とし、打ち終える前の思考や感情の揺らぎまでも共有できる。電話のように呼び出してつながるという形態を採用し、声を出さずに対面に近い感覚でのやり取りを可能にする。

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電話のように相手を呼び出して、相手が応じると入力した文字が1文字ずつ変換前から表示されるリアルタイムトーク(特許取得済)が可能

「声を出さずに電話するという体験を実現したい」と語る西村氏は、応答率が音声通話の1.5倍に達する点や、グループ通話機能の導入により夜間の利用が活発化している点を強調する。特に若年層の女性や難聴者からの支持が広がっており、「社会的意義も感じられるようになってきた」と述べている。

同社は、App Storeでの配信開始後、Z世代を中心にユーザー数を伸ばし、2024年7月に招待制を終了して以降、幅広い世代へと拡大。現在は最大4人でのグループ通話が可能で、今後は60人規模の通話にも対応予定だ。スタンプ機能や、音声とテキストを統合する双方向通話の実現も視野に入れており、「音声通話の上位互換を目指して進化させたい」と展望を語った。

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これまで1対1に限られていたテキスト通話が最大4人のグループで行えるようになったことで、グループ単位でスピーディに高いレベルの意思疎通を実現

今回の資金調達は、こうしたプロダクトの改良とユーザー拡大を短期間で実現するために踏み切ったものだ。西村氏は「Jiffcyの性質上、口コミによる自然な拡大を待つだけでは競合に先行されるリスクがある。より積極的なユーザー獲得と機能改善に投資すべきタイミングだと判断した」と説明する。具体的な調達金額は非公表だが、複数のベンチャーキャピタルが参画しており、事業成長の加速が期待されている。

シリーズAラウンドにはNTTドコモベンチャーズ、みずほキャピタル、ジェネシア・ベンチャーズ、サムライインキュベート、ビッグブル、朝日メディアラボベンチャーズ、W、スタートアップファクトリーなどが参画。とくにNTTドコモベンチャーズとは、通信インフラの未来を見据えた連携も模索しているという。

代表の西村氏は、大学在学中から複数のサービスを立ち上げ、一定の収益を得て起業。コロナ禍の孤独感から、「音声通話は心理的・物理的なハードルが高い」との実感を出発点に、声を出さずにリアルタイムで対話できるJiffcyの構想に至った。「人と本音でつながれる場所を、物理的な制約なく提供したい」と語るその背景には、経営者としての祖父の影響や、自身の起業家としての志がある。

ユーザーの年齢層も広がりを見せており、リリース当初は18歳以下のZ世代が中心だったが、現在は20代前半の社会人や30代以降の利用者も増加傾向にある。男女比では女性が約6割を占め、特に実生活のパートナーとの親密なコミュニケーションに用いられるケースが多い。また、難聴者コミュニティからの支持もあり、アクセシビリティの観点でも注目されている。

グローバル戦略としては、現在すでに約100か国での利用が確認されており、日本に次いでアメリカ、韓国、フランスなどが主な利用国となっている。西村氏は「時価総額の観点からも、まずはアメリカ市場を重点的に攻略する。そこを押さえることで、将来的な買収や展開の自由度が大きく広がる」と語り、米国市場でのユーザー獲得に注力する考えを明かしている。

現時点でアプリは無料で提供されているが、将来的には広告、スタンプなどのコンテンツ課金、さらには法人向け展開などを視野に入れており、「一定のインフラ的な地位を築いた後に本格的な収益化に移行する」との計画だ。

「Jiffcyの浸透によって、コミュニケーションにおける誤解を減らし、新たなアイデアの創出を促したい」と語る西村氏は、IPOを見据えた次回の資金調達も計画中だ。テキスト通話という新たなコミュニケーション様式が今後どのように社会に定着するか、引き続き注視される。

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