知られざる微生物の力、マイクロバイオーム創薬で迎える健康と美容の新局面

知られざる微生物の力、マイクロバイオーム創薬で迎える健康と美容の新局面

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KEPPLE編集部


総合的な菌ケアサービスを展開する株式会KINSが、第三者割当増資および金融機関からの融資による約15億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、森六ホールディングス、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル。融資における借入先は、三井住友銀行、静岡銀行、日本政策金融公庫、名古屋銀行、みずほ銀行、東日本銀行。

今回の資金調達により、大学と共同研究する独自菌の販売、および研究開発体制の強化を目指す。

菌を活かして慢性疾患の根本的な解決を目指す

KINSは、美や健康を司る全身の常在菌のケアを提案し、研究開発から販売までを一気通貫して行う、マイクロバイオームに特化したヘルスケア企業だ。

近年、腸内細菌を用いた腸疾患を治療する先進医療など、身体中で人と共生し、さまざまな疾患に影響するマイクロバイオーム(微生物の総体)による医薬品の開発が進んでいる。常在菌の活用例として、腸内細菌のバランスを保ち、腸内環境を整えることで健康や美容効果を得る「腸活」が身近だ。

同社は腸内に限らず、広く全身の細菌を整えることで健康になる「菌ケア」を提案する。菌ケアに関する3つの軸で事業を展開し、複数の部位や疾患に対してマイクロバイオーム原料や創薬のシーズを生み出している点が特徴だ。

一般消費者向けには、常在菌の知見をもとにした化粧品や健康食品などのプロダクトをヒト・ペット向けに販売するコンシューマーヘルスケア事業を展開する。

プロダクトイメージ
また、日本では動物病院、シンガポールでは皮膚科クリニックを運営する。二子玉川の動物病院では、獣医学に常在菌に関する知見を取り入れ、歯科・皮膚に注力してペットの健康を保つ。今後も複数の診療領域で、国内やアジアを中心にクリニックと動物病院を展開する。

コンシューマーヘルスケア、およびクリニック事業を通じて得た疾患や菌のデータは、同社のラボにて研究開発に活用される。大学や民間企業との共同研究を進め、有望な菌株は新たなプロダクト開発に用いるほか、医薬品としての開発が見込まれる場合には製薬会社との連携を強化する。すでに大学との共同研究により発見された独自菌の研究を進めている。

KINSのビジネスモデル
今回の資金調達に際して、代表取締役 下川 穣氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

マイクロバイオーム創薬の新たな可能性

―― 御社が取り組む菌ケアについて教えてください。

下川氏:近年、腸活や菌活という言葉を聞く機会が増えています。これらは一般的に、ヨーグルトなどの発酵食品を摂ることで、良質な菌を経口摂取して腸内環境を整えるものです。

こうした人々の身体に存在する常在菌は、腸だけに関連するものではありません。全身の菌のバランスを整えてケアすることは、慢性疾患や症状にも影響しています。腸活だけでなく、全身の菌をケアしていくという思いから、「菌ケア」という表現を使ってアプローチしています。

―― 従来の健康食品や医薬品による身体のケアでは不十分なのでしょうか?

日本では、睡眠の質を向上や血糖値の上昇を抑えるほか、脂肪吸収をサポートするような機能性表示食品がたくさん存在しますが、効果にはばらつきがあることがあります。

また、病院で処方される西洋薬は即効性があり、症状を抑えることに優れていますが、副作用を発症することもあります。花粉症のような慢性疾患は、薬を飲むことで一時的に症状を抑えることができたとしても、根本的な解決にはつながりません。

加えて、西洋薬では薬への耐性菌が発生したり、良い働きをする菌まで殺してしまうこともあります。そのほか漢方薬では、ゆっくりと体質を変えていくなど、それぞれに特徴があります。

ヒトの体に共生する、常在菌などの微生物の総体であるマイクロバイオームの活用により、漢方薬のような体質改善に加えて、西洋薬ではなかなか根本的な対応が難しい疾患に対してもアプローチできる点は大きなポイントです。

―― マイクロバイオームの医療への活用は進んでいるのでしょうか?

マイクロバイオーム自体は、十数年前から研究され出したまだ比較的新しい概念です。マイクロバイオーム創薬は、ヒトと微生物の協力関係を維持しながら、細菌を活用して医薬品を開発するアプローチで、21世紀の大きなイノベーションとなると私は考えています。

2022年には、アメリカとオーストラリアで腸内細菌を活用した医薬品が薬事承認がされ、腸疾患や癌、アトピー性皮膚炎などさまざまな疾患を対象とした医薬品候補が存在しています。日本でも、先進医療としての取り組みに注目が集まっています。

―― なぜマイクロバイオーム創薬が近年注目され出したのでしょうか?

マイクロバイオームが病気に効果を発揮するか評価するためには、多岐にわたる検査が必要です。一方で、これまでは検査機器の高額さが障壁となり、多額の資金を持つ機関でない限りは研究を進めることが困難でした。

近年は、技術革新により検査にかかるコストが下がったことで、マイクロバイオームの研究が活発になっています。

独自のポリアミン産生乳酸菌の活用

―― 御社が研究している独自乳酸菌について教えてください。

当社が有する食品由来の独自菌であるポリアミン産生乳酸菌は、口から摂取すると体内に定着し、ポリアミンの生成に役立つ可能性が示唆されています。

研究の様子
ポリアミンは強力な抗酸化作用を持つため、細胞の酸化ストレスを軽減するのに役立つとされ、慢性疾患やがんなどのリスクと関連する酸化ストレスを減少させる可能性があります。腸内環境を整えることやオートファジーの活性化、肥満予防、アンチエイジングなどの効果があることが報告されています。

ポリアミン自体はまだ世間では一般的でない物質ですが、来年以降かなり注目されるはずです。このポリアミン産生乳酸菌の特性や仕組みをより詳しく調べるために研究を進めています。

将来的には医薬品としての開発を検討する可能性もありますが、まずは飲料メーカーや食品メーカーなどと連携し、食品として世の中に広げていくことを予定しています。

―― 創業のきっかけを教えてください。

元々は歯科医師として入職し、その後は都内の医療法人で理事長を務めていました。歯科に留まらず様々な医療分野に触れる中で共同研究を行う機会に恵まれ、マイクロバイオームについて学んだのはこの時です。

学ぶほどにマイクロバイオームの素晴らしさを知り、これは社会に革新をもたらすとの思いが、起業を後押ししました。

クリニック運営をしながら、マイクロバイオームの研究を進めて新たなテクノロジーを拡大していくことには難しさがあります。当初、日本ではまだ検査ビジネスが中心でしたが、海外では、すでにマイクロバイオーム創薬に関する事業を行う企業も出始めていました。まずは国内にマイクロバイオームを広げる土台を作るために、ビジネスとして取り組むことを決意して創業しました。

マイクロバイオーム創薬と独自原料の新たな可能性

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

今回の資金調達により、プロダクト開発やクリニックを充実させ、新規原料の開発とラボの増床や機能拡大を目指します。また、各事業の採用も強化し、2024年末までに現在の50名程度から100名程度の規模まで拡大予定です。

当社は研究開発領域によるマイクロバイオーム創薬を進めていきたいという思いがありながら、足元ではクリニックとプロダクト販売により、一定のキャッシュを創出できています。こうした点をご評価いただき、エクイティとデットの組み合わせによる資金調達が実現しました。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

プロダクトの提供や新たなクリニックの開業など、既存事業を軸にして新たな取り組みを進めます。クリニックの数を増やすことで、得られる検体やデータも増え、研究スピード向上につながります。すでに2院開設しており、10月には立川に新たな動物病院の開設を予定しています。スピード感を保ちながら、当社ビジョンにマッチする院長を採用することが非常に重要なポイントです。


また、共同研究している独自菌の培養や量産体制を構築します。独自菌を用いた新プロダクトの開発、ペット用品や食品などの原料としてのメーカーへの販売のほか、製薬会社とも連携して研究開発を促進します。

マイクロバイオームは腸内環境の改善や皮膚疾患に限らず、月経前症候群(PMS)や不妊治療など、多くの分野での活用が期待されています。長い取り組みにはなりますが、製薬会社との研究を通じて薬の開発につなげ、グローバルに継続的に展開していくことを目指して取り組んでいきます。

株式会社KINS

株式会社KINSは、腸内細菌などの常在細菌に関するプロダクトを提供する企業。対処療法ではなく、根本的な解決を目指して、検査キットや診断ツール、生活習慣をコントロールするためのサプリメントなどを提供。 『KINS BOX』は、腸内環境を整え、肌トラブルなどを解消するためのスキンテストとサプリメント購入ができるサービス。LINEを使って相談ができるコンシェルジュサービスも運営している。 今後は、新商品開発や検査機関の創設なども目指している。

代表者名下川穣
設立日2018年12月3日
住所東京都目黒区柿の木坂1丁目9番5号3階
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