株式会社リィエイル

株式会社リィエイルは2025年7月17日、計8社を引受先とする第三者割当増資によって5.8億円の資金調達を実施したと発表した。これにより、設立以来の累計調達額は約6.85億円となった。リィエイルは、難治性下肢潰瘍を対象とする再生医療等製品「Repri cell(通称:RE-01)」の研究開発を進めており、今回の調達資金は主に医師主導治験(臨床試験)の推進に用いる。
リィエイルは2017年9月に設立された順天堂大学発のスタートアップで、患者自身の末梢血から単核球細胞群を分離・培養し、疾患部位へ投与する治療技術の開発と事業化に取り組んでいる。主力パイプラインのRE-01は、難治性虚血性下肢潰瘍患者を対象とし、創傷治癒促進と血流改善を狙った細胞製剤である。RE-01は患者の末梢血から細胞を採取し、独自の培養方法で血管新生や抗炎症作用、組織再生機能を持つ細胞集団へ加工する。その後、患部への投与を通じて下肢切断リスクの低減を目指す。リィエイルによれば、第1相治験では重大な安全性の懸念は認められず、全例で潰瘍の完治が確認されたという。
同社の代表は設立者の田中里佳氏で、順天堂大学大学院医学研究科再生医学主任教授を務める。田中氏は血管再生医療の臨床応用や事業化に長年関与してきた。経営体制には取締役の本多壮一郎氏も名を連ねる。
再生医療分野では、国内外で細胞加工技術や治療法の開発が活発化している。日本では、2014年の再生医療等安全性確保法施行以降、厚生労働省による規制緩和も追い風となり、臨床研究から実用段階への移行が進む。2022年時点で国内で承認された再生医療等製品は17品目に上る。難治性下肢潰瘍では、従来の薬物療法やバイパス手術など既存治療の効果が限定的な患者が多く、新たな細胞医療の社会実装が求められている。
難治性虚血性下肢潰瘍は、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、膠原病などによる血流障害が原因で発症し、標準治療で改善が見込めない場合、最終的に下肢切断に至るケースも多く、医療・社会的損失が顕在化している。新規治療法への期待は高く、自由診療領域では既に血管新生療法関連の細胞治療が一部導入されているが、標準化や薬事承認、保険適用の整備は依然として課題となっている。
今回の資金調達の引受先には、TOPPANホールディングス、久光製薬、アサヒグループジャパン、西武しんきんキャピタル、ゼロワンブースターキャピタル、桜十字、Izulなどの事業会社や投資ファンドが参加した。
調達資金は今後の開発と治験体制の強化に充てられる見通しだ。RE-01の次段階治験を2025年内に計画しているほか、再生医療等安全性確保法の下で、RC-01など他疾患向け細胞加工物の開発や臨床研究も展開する方針である。
リィエイルが臨床応用を目指す細胞製品群は、基礎研究で安全性・有効性が確認されたものに限定して市場投入を進めている。再生医療市場全体では、規制動向や保険償還政策が事業展開に大きく影響を与えている。研究成果の社会実装、持続的な開発投資、分散型細胞製造プラットフォームの構築、グローバル治験展開といった課題が業界全体に共通して存在する。リィエイルもこれらの課題に対応しながら、事業化と研究開発の両立を目指している。