CandexがシリーズCで51億円を調達、日本市場で調達・購買SaaSの本格展開を開始

CandexがシリーズCで51億円を調達、日本市場で調達・購買SaaSの本格展開を開始

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フィンテック領域で調達・購買プロセスの効率化支援を行うCANDEXJAPAN株式会社は、シリーズCラウンドで約51億円(3300万ドル)の資金調達を実施したと発表した。本ラウンドは9Yards Capitalが主導し、HedosophiaやGoldman Sachsなど複数の投資家が参加した。これにより累計調達額は1億1500万ドル(約171億円)となり、今後の事業拡大に向けた資本基盤を強化した。

Candexは2011年に米国で設立され、主に多国籍企業向けに「テールスペンド」と呼ばれる少額取引先との調達・購買業務を効率化するSaaSソリューションを開発・提供する。現在、ソニーや日立、デル・テクノロジーズ、シスコなど135社超の大手グローバル企業が導入しており、サービスは52カ国以上に展開されている。2023年からはアジア市場への本格進出を開始し、日本、中国、台湾、韓国に拠点を設けている。

テールスペンドとは、企業の購買全体に占める金額比率は低いものの、取引先数としては大半を占める小口サプライヤーとの取引を指す。多国籍企業の購買部門では、全体支出の5%程度を占めるに過ぎないこれらのサプライヤーが、取引先全体の8割超を構成するとの調査もある。個別の取引先登録や審査、契約、支払い作業にかかる手間やコストは無視できず、業務負荷や内部統制の課題となっていた。Candexは購買部門と小規模サプライヤーの間に入り「マスターベンダー」として一括仲介することで、発注から支払いまでのプロセスを一元化。これにより、企業側はベンダーマスター数の削減、コスト低減、コンプライアンス対応の効率化を実現できるとしている。

同社のサービスは、SAP AribaやCoupa、Oracle、Workdayなど主要な購買発注システムと連携する設計となっている。これにより、ユーザー企業は既存の業務フローやIT基盤を大きく変更することなく導入が可能だ。Candex独自のレポーティング機能では、各部門に分散していた小口取引データを集約してサプライチェーンの透明性を高めるほか、サプライヤーへの平均支払期間を1.2日以内に短縮する仕組みも特徴のひとつである。収益モデルはバイヤー企業からの取引1件あたり3%の手数料収入が中心。

Candex Japanは2022年に設立され、日本市場での事業展開を担っている。日本法人の代表を務める北本大介氏は、外資系企業やスタートアップの日本法人立ち上げや事業推進での経験を持ち、Candex Japanの設立当初から現地採用や組織構築を指揮してきた。なお、Candex全体の創業者でありCEOを務めるジェレミー・ラッピン氏は米国本社でフィンテック分野の事業運営経験を有し、グローバル調達業務の課題認識からCandexの設立に至った。北本氏は創業メンバーではない。

日本法人はすでに国内で20社超の顧客を抱え、日本独自の厳格なコンプライアンス要件や業務標準、多国籍企業の多さを背景に、サービス拡大を目指している。Candexは各国で現地法人を設立し、税制・法制対応や請求書の現地通貨払い、銀行口座運用まで含めた現地密着型の運用体制を構築している。日本法人でも国内税法準拠や日本語カスタマーサクセスを展開することで、導入障壁の低減を図る。

テールスペンド管理の効率化は、購買部門における国際的な課題である。多国籍大企業の取引先の約80%が支出全体の5~20%にとどまる小口サプライヤーで構成されており、これらへのプロセス最適化や自動化のニーズは高い。また各国の税制や法制度対応、頻繁なサプライヤー入れ替えも運用負荷の要因となっている。グローバルではSAP AribaやCoupaなどのe-プロキュアメント基幹システムが普及しており、日本国内でも市場規模は拡大傾向にある。経済産業省によると、20234年度の国内電子購買市場は約24.8兆円と推計されている。

一方で、主要なSaaSベンダーが中・大規模取引向けの基幹システムに注力する中、Candexのようにテールスペンド特化型サービスをグローバル対応で提供する企業は少ない。同社は各国の現地法人設立やオペレーション最適化を通じて、ローカルニーズへの対応力も高めている。

今回のシリーズC資金調達により、Candexは今後さらなるグローバル展開や日本国内での開発投資、サービスの標準化・自動化領域の強化、顧客基盤の拡大を進めるとしている。また、e-プロキュアメントシステムや調達コンサルティング企業、システムインテグレーターとの連携拡大も視野に入れる。

Candexの日本市場での本格展開は、多国籍企業を中心とした大企業のバックオフィス業務効率化やコーポレートガバナンス高度化の潮流の中で進行している。今後は、日本の商慣習や独自のコンプライアンス要件への対応が、グローバルサービスの浸透に向けた重要な論点となる見通しである。

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