ビー・インフォマティカ株式会社

東南アジアの中小企業向けデジタルマイクロファイナンス事業を展開するビー・インフォマティカ株式会社が、プレシリーズAラウンドで総額2億1400万円の資金調達を実施した。今回の調達は、エクイティによる約1.9億円とデットファイナンス2400万円の合計で、ベンチャーキャピタル、ファミリーオフィス、大手デザイン会社、複数の個人投資家などが引受先となった。これにより、同社の累計調達額は3.6億円に達している。
ビー・インフォマティカは2020年11月に設立され、マレーシアを中心に中小企業向けのデジタルレンディング事業を手掛けてきた。主力サービス「Funding Bee」は、主に銀行融資のハードルが高い中小企業を対象に、小口融資をオンラインで提供するモデルである。マレーシア政府からデジタル貸金業ライセンスを取得し、データとAIを活用した独自の与信審査モデルを開発している。これにより、融資申請から審査、契約、資金実行までの全プロセスをデジタル化し、迅速かつ透明性の高い金融サービスを実現してきた。
同社が採用する信用スコアリングモデルは、伝統的な財務データに加え、経営者の人物特性やネットワークといった定性データにも着目している。OCRによる書類自動処理、AIによるリスク分析、API連携を活用したE-KYCや電子署名など、手続きの効率化にも注力している。こうした仕組みは、東南アジアの信用情報インフラ不足に対応する構造に対応するものである。また、SNSやビジネス活動のデータも与信判断に利用し、小規模事業者に対して柔軟な与信アプローチを展開している。
代表取締役の稲田史子氏は、中央銀行での勤務経験やマイクロファイナンス事業の実務経験を持つ。2019年にマレーシアで同社の前身となる事業を立ち上げ、翌年に日本法人を設立。以降、現地中小企業向けの融資実績を積み重ねてきた。稲田氏は、金融業界の表彰歴も持ち、東南アジアの金融アクセス改善を中心に事業を展開している。ビー・インフォマティカの創業者は稲田氏であり、現在も代表を務める。
東南アジアでは、中小企業の約7割から8割が銀行などの正規金融機関から十分な融資を受けられていないとされている。多くの事業者が自己資金や親族からの借入、高利貸しに頼る状況が続き、黒字化や担保の有無が新規融資の障壁となっている。こうした背景から、フィンテックを活用したマイクロファイナンス事業者が台頭しているが、日本発ブランドで現地展開を進めている例は依然として少数である。
各国でデジタル貸金業ライセンスの発行が進む中、完全なオンライン化に対応したサービスを提供する企業は多くない状況だ。ビー・インフォマティカはAI等の技術活用や独自の与信モデルを強みとし、競合との差別化を図っている。
同社は2025年3月、マレーシア政府からデジタル貸金業ライセンスを取得し、4月より完全デジタル運用を開始。2024年8月の本格ローンチ以降、11ヶ月連続で融資件数・残高の両面で目標を達成し続けている。順調に事業基盤を拡大しており、現地市場における存在感を着実に高めている。今回調達した資金は、以下の5つに充当する予定だ。
- マレーシア市場における与信枠の拡大
- AIを活用した定性情報による与信モデルの高度化と自動化
- UI/UXの改善によるユーザー体験の向上
- ンドネシアなど新規国への市場調査と戦略立案
- イスラム金融、組込型金融(ペイメント連携)等の新スキーム導入
今後も、既存市場での深耕と並行して、技術と金融の融合による新たな価値創出に挑み続ける構えだ。