23.5億円調達のナッジが描く、次世代型クレジットカードからチャレンジャーバンクへの道筋
次世代型クレジットカード「Nudge(ナッジ)」を運営するナッジ株式会社がシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による追加資金調達を実施したことを明らかにした。今回のラウンドでの調達額は総額23.5億円となった。
One Capitalをリード投資家とする今回のラウンドでの新たな引受先は、KDDI Open Innovation Fund、伊藤忠商事、住商ベンチャー・パートナーズ、三菱商事、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、博報堂DYベンチャーズ、ベルシステム24ホールディングス、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、NOBUNAGAキャピタルビレッジの11社。
調達した資金は、プロダクトおよび社内体制の強化や、出資先との事業シナジーの創出に充て、さらなる事業展開を目指すとしている。
日常的な利用が“応援”につながるクレジットカード
日本は世界各国と比較してキャッシュレス化が遅れている。数年前よりも店舗側の導入は進んだが、利用者の半数以上はまだ現金を使っているのが現状だ。クレジットカードの利用についても、ポイントを貯めること以外にカードを使う喜びを作り出せないか、同社は課題としていた。
Nudgeは、利用者がクレジットカードで支払いを行うことで、「クラブ」と呼ばれる提携先を応援できる“次世代型”のクレジットカード。提携先は9月末で100社に迫り、事業会社やスポーツチーム、アーティスト、自治体など多岐にわたる。利用者は日常的なカード決済で自動的に好みのクラブを応援できるほか、応援の返礼品としてクラブ限定の特典が手に入る。
今回の資金調達に際して、代表取締役社長 沖田貴史氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
スタートアップだからこそ、こだわった取り組み
―― これまで、日本の決済サービスにはどのような課題がありましたか?
沖田氏:私はシリアルアントレプレナーとして、90年代からフィンテック、特に決済分野にずっと携わってきました。日本のキャッシュレス化が遅れていることは、フィンテックに関わる一員としてとても悔しいです。
2000年代の前半から中盤にかけて、日本は「おサイフケータイ」などでキャッシュレスの世界をリードしていました。ただ、携帯電話がスマートフォンに変わり、それが一気に逆転したのです。当時の日本は経済が停滞していたこともあり、習慣を変えることや行動変容は起こりませんでした。
―― 今回の資金調達では、金融業界の企業からの出資もありますね。
既存のカード会社も、新たなクレジットカード事業にはずっと取り組みたかったと思いますが、既にある肥大化したシステムをチューニングするのは技術的に難易度が高いため、手がつけられなかったのだろうと考えられます。私たちは今回、一から新しいプログラムを構築すること、技術負債がない状態でトライすることにこだわりました。
出資者の中には、部分的に競合する可能性のある企業もいらっしゃいますが、むしろ「一緒に作っていこうよ」と言っていただいています。これまでの経験を生かし、インダストリー全体として取り組みたいけれどできなかったことを、“新参者”としてスムーズにやっていこうという気持ちが大きいですね。
オープンイノベーションを実のあるものに
―― 資金調達の具体的な使途について教えてください。
ここ1年はアプリの機能向上に関するアジャイル開発と、クラブの拡充という両輪で事業を推進してきました。それを継続しながら、出資者とのシナジー追求も推進していきます。
また、認知度の向上という側面から、プロモーションやマーケティングにも注力したいと考えています。それらの取り組みを支えるマーケターなどの採用や、ナッジ社内の組織体制も強化していきます。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
まずはクレジットカード事業を広げ、伸ばしていくことです。プロダクトのアイデアはまだまだありますので。
一方で、決済事業にとどまらず、私が25年前から言い続けている「貯蓄から資産運用へ」というテーマにも取り組みたいと考えています。興味はあるがわかりにくいとか、不安に感じられている部分をわかりやすくすることで、Nudgeという単語が意味する「(背中を)押す」ようなアクションも、将来的には起こしていきたいです。
今回の資金調達に絡めると、より自然な形でのオープンイノベーションを目指しています。出資者と対等の立場で、一緒に未来の金融体験を作りたい。オープンイノベーションは世の中に浸透しつつありますが、それをさらに実のあるものにしていきたいと考えています。
未来の金融体験を創るチャレンジャーバンクを目指して
世界的に進む金融の民主化の流れの中で、私たちはスマホなどで金融サービスを提供するチャレンジャーバンクを目指しています。これまでの金融のサービスは伝統的な金融機関だけが提供するもので、今も私たちは一方的な受け手のままです。それが、金融業界でもプロシューマー(生産消費者)のような形で、利用者側が提供者側に参加できるようになると、社会全体が良くなり、伝統的な金融機関も変わりやすくなります。私たちのようなスタートアップが頑張ることで、伝統的な金融機関もイノベーションへと向かっていくと考えています。
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ナッジ株式会社
ナッジ株式会社は、クレジットカード『Nudge(ナッジ)』を運営する企業。『Nudge(ナッジ)』は、ユーザーがクレジットカードの利用を通して特定のコミュニティを応援することができる仕組みが特徴。 『Nudge』は、歌手やアイドルグループ、スポーツクラブ、スポーツ選手、地域、アニメ作品などと提携しており、提携先をクラブと呼んでいる。ユーザーは好きなクラブを選択し、クレジットカードの利用額に合わせて、クラブ限定の写真や動画、グッズなどの特典を受け取ることができるほか、クラブ限定の特別なデザインや無料で発行できるNudgeデザインのカードを選択できる。
代表者名 | 沖田貴史 |
設立日 | 2020年2月12日 |
住所 | 東京都千代田区大手町1丁目6番1号 |