災害の経験から生まれたリスク情報プラットフォーム SpecteeがE2ラウンドで総額16億円を調達

災害の経験から生まれたリスク情報プラットフォーム SpecteeがE2ラウンドで総額16億円を調達

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「避難所の壁は張り紙で溢れていた」──東日本大震災の被災地でボランティア活動を行っていた村上建治郎氏は、被災地で必要とされている物資や支援についての情報が外に届かない現実に直面し、2011年に株式会社Specteeを創業した。あれから15年。同社が提供するリスク情報プラットフォームは今や官公庁・自治体・民間企業にまで採用され、製造業のサプライチェーン管理にも活用されている。

Specteeは、第三者割当増資および金融機関からの融資により、E2ラウンドセカンドクローズを完了したと2026年3月に発表。本ラウンドの調達総額は16億円で、累計調達額は36億円に達した。

調達資金は、製造業向けサプライチェーン・リスク管理クラウド「Spectee SCR」の事業拡大およびプロダクト強化に充てる。今回のラウンドには事業連携を前提とした投資家が参画しており、TIS・積水ハウスに加え、アスエネ・東芝が新たに加わった。

Specteeは現在、用途に合わせて2つのサービスを展開している。

防災・BCP対応を支援するSaaS「Spectee Pro」は、災害・事故の発生状況をリアルタイムに収集・可視化するサービスだ。都道府県庁の防災・危機管理部門の約7割に導入されているほか、官公庁や多くの民間企業でも活用されている。海外での展開も進んでおり、フィリピンでは国・自治体を中心に約140ライセンスを発行済みである。

Spectee SCRのUI
Spectee SCRのUI

一方、製造業向けの「Spectee SCR」は、グローバルに広がるサプライチェーンの多層構造を可視化する「サプライヤー連携」機能が特徴だ。リスク発生時に影響を受けるサプライヤー拠点や部品を即座に特定し、アラートとして即時通知する仕組みを持つ。能登半島地震の際には、それまで通常2週間ほどかかっていたサプライチェーンへの影響調査から役員へのレポート作成にかかる時間を、48時間以内に短縮した企業の事例もあったという。

両サービスを支えるのは、気象データ・全世界のローカルニュース・人工衛星・自動車プローブデータ・街頭カメラ・SNSなど多様なデータソースをリアルタイムで解析するAI基盤と、24時間体制で稼働するオペレーションチームだ。このチームはグローバルに配備され、世界中のリスク情報の事実確認や優先順位などの整理を行う。

代表取締役CEOの村上建治郎氏は「近年、中東情勢の緊迫化や気候変動による自然災害の激甚化など、サプライチェーンを取り巻くリスクが多様化・複合化する中で、自社のサプライチェーンにどのような影響が出るのか、早く、正確に把握したいというニーズは大きくなっている」と話す。

今回のラウンドで新たに参画したアスエネとは、Spectee SCRのサービス提供とデータ連携を計画している。サプライチェーン管理クラウド「ASUENE SUPPLY CHAIN」を展開するアスエネとの連携について、村上氏は「アスエネは脱炭素や人権問題など、ESG領域でトップを走る企業。Specteeのリスク管理とかけ合わせることで、大きなシナジーが生まれる」と期待を寄せる。

東芝とは、同社の戦略調達プラットフォーム「Meister SRM」との連携を軸に、2023年から進めてきた協業をさらに深化させる。

中長期的には、製造業のサプライチェーンにとどまらず、ロジスティクス・スマートシティ・インフラなど幅広いリスク管理領域への展開を視野に入れる。村上氏は「我々が持っているリスクデータをもとに、様々なサービスを展開していきたい。防犯や街づくりも含めた、リスク管理全体に関わっていく」と話す。

海外展開については、現在サービスを提供するフィリピンに加え、今年中にベトナムでの展開開始を予定している。日本政府の支援事業の枠組みなども活用しながら、東南アジアをはじめとしたグローバルサウスへの事業拡大を進める方針だ。

マニラ市内の防災センターでの活用(画像:同社提供)
マニラ市内の防災センターでの活用(画像:同社提供)

「災害は世界共通の課題で、災害大国の日本が一番強みを出せる領域でもある」と村上氏は語る。東日本大震災の被災地で抱いた問題意識が起点となったサービスが、いま世界規模での課題の解決に向けて動き出している。

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