(2022年6月20日週) 海外資金調達 Weekly <Unicorn編> 労務管理システムやスマホ決済端末など競合が多い企業に資金が集まる

この記事では、7月11日週に資金調達が報道されたユニコーン(企業評価額10億ドル以上の未公開企業)3社を評価額順に紹介します。
第一位は、後払い決済のKlarna(企業評価額 67億ドル)です。Klarnaの今回の資金調達は、株式相場の調整に伴う「IT企業の苦戦」を象徴する典型例のようにみえます。2021年6月の評価額が456億ドルであったため、企業価値が1年で85%減少したことになります。
一方、Klarnaは投資家に長期での成長に着目するように促しています。同社によると、2018年末と2022年6月末の時価総額を比べた時、類似企業のShopifyは135%増、PayPal18%減、Block54%増、Affirm78%に対し、同社は219%増でした。Shopify、PayPal、Blockは時価総額がKlarnaより1桁大きいため、比較対象として適切ではない可能性があるものの、時価総額52億ドルと同じくらいの規模で直接の競合であるAffirmよりも時価総額の成長率が大きかったことは明るい材料です。ただ、Affirmは上場企業であるため、未上場のKlarnaよりも景況感の悪化が時価総額に素早く反映されたかもしれません。2021年の資金調達ラウンドはSoftbank Vision Fundが主導しているため、今回の評価額下落によるソフトバンクの業績への影響が懸念されます。
設立期:
2005年
本社:
スウェーデン
企業評価額:
67億ドル
今回調達額:
8億ドル(企業評価額の12%)
参加投資家:
Sequoia, Silver Lake, Commonwealth Bank of Australia, Mubadala Investment Company, Canada Pension Plan Investment Board
後払い決済(BNPL)の最大手の1社。
日本の後払い決済領域では、2021年9月にPayPalがPaidyを3,000億円で買収し、2021年12月にネットプロテクションズが上場しました。ネットプロテクションズの株価は年初来で58%減少しており、世界中で見られる「IT企業の苦戦」現象は日本も例外ではないことが分かります。
株式会社Paidyは、EC向け後払い決済サービス「Paidy」を運営する企業。 PaidyはECなどで商品を買った後、コンビニエンスストアや銀行振り込みで代金を支払う仕組み。支払い履歴などから人工知能(AI)が利用者ごとの信用を予測し、貸し倒れのリスクを抑えている。事前登録やクレジットカードが不要となる点を売りにしている。 加盟店にはアマゾンジャパンのほか大手アパレルブランドの通販サイト、大手家電量販店がある。 2021年9月に米決済大手のペイパル・ホールディングス(Paypal)がPaidyを買収すると発表した。
株式会社ネットプロテクションズホールディングスは、EC事業者向け後払い決済サービス『NP後払い』などを運営する株式会社ネットプロテクションズの持株会社。 『NP後払い』は、ネットショップやカタログ通販などで購入者が商品到着後に郵送される請求書によって銀行・郵便局・コンビニ・LINE Payで支払うことができるサービス。
第二位は、オンライン保険のWefox(企業評価額 45億ドル)です。先週の記事でもYuLifeという保険テックの企業を紹介しました。評価額が減少したKlarnaとは対照的に、同社の評価額は50%増加(2021年6月資金調達時と比較)しました。同社が高い評価を受けている理由の一つが、競合と異なるビジネスモデルを採用することで差別化ができていることです。Getsafeなどのライバルが直接消費者へ保険商品を販売するのに対して、同社は3,000の代理店に販売を委託しています。消費者も慣れ親しんだ代理店から購入する方が心理的ハードルが低いようです。2024年にはアジアにも進出する予定であるため、近い将来、我々も同社の製品の対象顧客となるかもしれません。
設立期:
2015年
本社:
ドイツ
企業評価額:
45億ドル
今回調達額:
4億ドル(企業評価額の9%)
参加投資家:
Mubadala Investment Company, LGT, Horizons Ventures, Omers Ventures
200万人の顧客を有するオンライン保険サービス。昨年は売上が倍増、今期も倍近くの6億ドルの売上を計画。
第三位は、クレジットカードのStori(企業評価額 12億ドル)です。同社は、クレジットカードを持ちたいものの、信用力の問題で既存の金融機関から発行を受けられない人々を対象にしています。Wefox同様、同社の評価額は増加(2021年9月資金調達時と比較すると25%増)しており、同社のように厳しい環境下でも評価額を上げられている企業もあります。同社のユニークな点は、CEOが中国出身であることです。経営陣は、クレジットカード会社や大手銀行で働いたメンバーが多く、米国や中国での経験やノウハウを市場が発展途上のメキシコに持ち込むことが期待されます。
設立期:
2018年
本社:
メキシコ
企業評価額:
12億ドル
今回調達額:
1.5億ドル(企業評価額の13%)
参加投資家:
BAI Capital, GIC, GGV Capital, Lightspeed Venture Partners, General Catalyst, Goodwater Capital, Vision Plus Capital, Tresalia Capital.
メキシコでクレジットカード商品を販売し、140万の顧客(前年比3倍増)を抱える。主な収益源はクレジットカードの利息とインターチェンジフィーで前年の売上は20倍増加した。
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