遠隔地でも的確な指示を、ホシューが挑む現場作業者の負担軽減

遠隔地でも的確な指示を、ホシューが挑む現場作業者の負担軽減

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KEPPLE編集部

日本経済の基盤ともいえるほど重要な製造業。それを支えるのは、現場で働く作業者だ。一方で、人材不足や労働生産性に関する課題が依然として存在している。

多くの課題がいまだ根強く残る製造や物流業界などの「現場」業務の課題解決に取り組むスタートアップの1社がホシューだ。知識の属人化を防ぎ、情報を組織で共有する「ナレッジマネジメント」のサービスを提供する。数社で試験導入も進めているという。

同社は、2022年12月に取締役 高木 一郎が代表取締役 社長 ルー・ヒュー・フックと共同で設立。柏の葉スマートシティのスタートアップ事業成長プログラム「KOIL STARTUP PROGRAM 2023(KSP)」への参加を通じて事業アイデアを磨き上げてきた。

柏の葉スマートシティは、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅周辺の一帯を指し、東京大学や千葉大学をはじめとする研究機関が集まる知の集積地。「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」の3つのテーマを掲げ、三井不動産らを中心に公・民・学の連携による街づくりが進められている。

このイノベーション拠点となるのがKOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)だ。KSPは、柏の葉スマートシティにおいてスタートアップの事業成長を支援する役割を負い、プログラムの参加企業にはKOILのコワーキングスペースの1年間無償利用などの特典がある。他には近隣スタートアップ経営者のコミュニティ「Startup CXO Meeting 柏の葉」なども運営する。

取締役の高木 一郎氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

ベテランの知見にアクセス、作業効率の向上に

―― プロダクトの主要な機能について教えてください。

高木氏:ホシューは、現場向けのナレッジマネジメントサービスとして提供しています。AR通話や自動録画・文字起こしの機能を中心に、経験のない若手作業者でも、ベテランの知見やノウハウを活用できるようなサービスです。

現場の作業者は「配線の位置がわからない」といった問題に日々直面しています。ホワイトワーカーが画面共有しながら自分のわからない点を説明するのと同じように、実際の現場の様子を映しながら通話し、作業指示ができるのがAR通話機能です。この通話は自動で録画・文字起こしされるので、振り返りにも活用できるのです。

ただ通話をするだけではなく、タスク管理の機能も備えています。各案件で必要な作業を分解して管理することで、管理者は遠隔地でも各担当者の着手状況を把握できます。各作業で発生した対応は、報告書などのドキュメントとしてまとめなければいけないことがほとんどです。AIを活用し、ドキュメントを自動生成できる点も大きな特徴です。

ホシューのタスク管理画面イメージ
ホシューのタスク管理画面イメージ

―― なぜホシューのようなサービスが必要なのでしょうか?

現場で何らかの問題が発生して一度対処すれば、今後は同じ問題が起きても「その担当者であれば」十分対応できるでしょう。ただ、この問題解決策が社内で共有できていないと、他の社員が初めて問題に直面した際にはまた手探りで対処しなければいけません。これでは新入社員が入ってきても、イタズラに時間を浪費してしまいます。

ナレッジの蓄積ができているといっても、紙で管理しているために「知見の再利用」が困難な状態であることも珍しくありません。ベテラン社員の知見をデジタルに蓄積し、経験の少ない若手社員でも、過去の対応履歴を参照して素早く問題に対処できる状態を作らなければいけないのです。

―― すでにプロダクトの試験導入も進んでいると聞きました。

AR通話には大きな価値を感じていただいています。この機能の活用で、遠隔地の作業員に向けた指示が迅速、的確にできるのです。実際に作業員が直面している状況を見ながら、「この配線はこうしたほうが良い」といった具合に指示が出せます。

スマホ画面イメージ画像
ポインターを活用することで遠隔地からの指示が直感的に理解できる

また、ホシューには「一人録画機能」というICレコーダーのような機能もあります。この機能を活用して社内会議を録音し、議事録を自動生成するという使い方をしているケースもあります。当初想定していなかった使い道ですが、新たな気付きを得ることができました。

AR通話通話から現場業務改善の仕組みに

―― 創業のきっかけを教えてください。

私自身が物流畑の出身で、現在も物流倉庫向けロボットとシステムをサブスクで提供する企業に勤めています。物流業界では自動化に向けた取り組みとしてロボットなどの設備導入が進んでいる一方で、これらの機械メンテナンスはいまだに人が時間をかけて行っているのです。

私はシステム開発を担当しているのですが、メンテナンスの部署が苦労している様子をよく目にしていました。わざわざ現地に出張しても、行ってみると5分で解決できたみたいなことがよくあるわけです。

そこでAR通話の機能開発を進めたのが、創業のきっかけです。

―― 創業時には「KOIL STARTUP PROGRAM 2023」に参加しています。

当初構想していた事業は、AR通話機能にフォーカスしたものでした。しかし、この機能だけでは参入障壁が低く、顧客の囲い込みが難しい。方向性は見えてきたものの、自分一人で考えるには限界がありました。

これまで自分の中で考えていたアイデアを、誰かにぶつけながらブラッシュアップしたい。そう思っていた矢先にプログラムの募集を知り、参加を申し込みました。そこからAR通話の機能だけに閉じず、業務フローに沿った形でデータを蓄積しながら現場業務を改善できる仕組みとして、ホシューを1年かけてリニューアルした形になります。

―― 今後に向けて意気込みを一言お願いします。

現場の作業効率を高めるプロダクトとして磨き上げ、3年後には、100社以上の企業に導入したいと思っています。「ホシューを利用すれば、現場のナレッジマネジメントが完結する」と言ってもらえるような状態が目標です。

日本の製造業は、現場の担当者なくして成り立たない業界です。こうした現場担当者の作業負担を軽減することで、エンジニアや作業者の不足といった問題の解決に貢献していきたいと思います。

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