株式会社straya
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株式会社strayaは、警備業界向けに業務効率化と人材定着を支援するDXプラットフォーム「KUMOCAN(くもかん)」を開発・提供するスタートアップである。このたび、同社はDNX Venturesをリード投資家とし、DG Daiwa Venturesおよびエンジェル投資家が参画する形で、累計1億円超の資金調達を実施した。
strayaは2023年6月に設立。代表取締役の渡辺拓也氏は、かつてIndeed Japanにて大手警備会社の採用支援を担当していた経歴を持ち、業界が抱える構造的な人材課題に直面した経験が創業の原点となっている。現場理解を深めるため、創業メンバーはエンジニアを含めて実際に警備現場に立ち、課題の解像度を高めてきた。
同社が注力する警備業界は、国内で約3.5兆円の市場規模を持ち、約59万人が従事する社会インフラ産業である。一方で、採用難・高離職率・人手不足という「三重苦」が業界全体に広がっており、とりわけ交通誘導や雑踏警備といった業務においては、有効求人倍率が極めて高く、労働力不足によって案件の受託を断念するケースも多い。
こうした課題に対して、strayaが提供する「KUMOCAN」は、警備業務の現場で日常的に発生するシフト管理や勤怠・給与計算、配置業務をデジタル化するSaaSプロダクトである。事務作業の効率化と人的ミスの低減を目的としている。加えて、現場で収集した勤務状況や満足度のデータを活用し、AIによる退職予測や人員配置の最適化といった機能も備えている点が特徴だ。

渡辺氏は、「警備業界では、配置やマネジメントが属人的に行われることが多く、現場と内勤の意思疎通が希薄になりがちです。その結果、働きたいと希望していた日数や相手との不一致が生まれ、離職につながってしまう」と指摘する。実際、strayaが実施した警備員へのヒアリングでは、マネジメントの不一致が離職の主因であるという声が多く寄せられたという。
導入企業の現場では、KUMOCANを活用して警備員のコンディションを可視化し、離職の兆候を検知することで、早期の対応が可能となった。たとえば福岡に拠点を持つ警備会社では、導入後すぐに離職予兆がある人材を特定し、個別のコミュニケーションを実施することで退職を防ぐ事例も出てきている。

「給与やキャリアではなく、日々の接点やマネジメントの質こそが離職を左右している」と渡辺氏は語る。こうした現場に根ざした洞察とプロダクト改善のサイクルは、strayaの強みの一つだ。
ビジネスモデルは、利用人数に応じた従量課金制を採用している。初期費用と月額料金が設定されており、導入後のカスタマーサクセス支援については、追加課金を行っていない。顧客理解とプロダクト改善を重視しているためである。現在は中小規模から中堅クラスの警備会社を中心に導入が進んでおり、今後はさらなる拡大に向けて体制強化を図る方針だ。
今回の資金調達はエクイティによる調達であり、リード投資家にはB2Bスタートアップへの豊富な投資実績を持つDNX Ventures、共同投資家としてDG Daiwa Ventures、そして複数のエンジェル投資家が名を連ねる。strayaでは、この調達を通じてプロダクト開発の加速、営業・カスタマーサクセス体制の強化を図るとともに、プロダクト品質と顧客解像度をさらに高めることを目指す。
代表の渡辺氏によれば、DNX Venturesとは、SaaS事業における成長戦略や業界展開について、日々壁打ちを行っているという。目先の利益ではなく、業界構造そのものの変革に向けた議論を重ねている点が特徴だ。
一方、DG Daiwa Venturesとは、LP投資家に鉄道・電力といった社会インフラ系企業が多く含まれており、事業領域との相性が良い。今後は、これらのネットワークを活かし、アライアンス構築や導入機会の創出も視野に入れている。
また、同社は今後の展望として、警備業界に加えて発注元にあたる建設業界などとの連携にも関心を示している。現場データと業務フローを一元管理することで、業界横断での人材活用やマッチング精度の向上を可能にし、業界全体の生産性向上を目指す。
strayaは、単なる業務効率化にとどまらず、警備業界が抱える「採用難・定着率の低さ・現場の逼迫」といった構造的課題に真正面から向き合っている。現場データとテクノロジーを駆使し、人材課題の本質的な解決を目指すHR特化型SaaS企業として、その今後の歩みに注目が集まる。
