防衛テック変革”へ──スカイゲートテクノロジズが10億円を背景に日本発の安全保障DXへ挑む

防衛テック変革”へ──スカイゲートテクノロジズが10億円を背景に日本発の安全保障DXへ挑む

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防衛・セキュリティ分野のスタートアップであるスカイゲートテクノロジズ株式会社が、第三者割当増資により総額約10億円の資金調達を実施した。引受先には既存投資家の慶應イノベーション・イニシアティブやジェネシア・ベンチャーズに加え、新たにジャフコグループ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、りそなキャピタルが参画している。

スカイゲートテクノロジズは2020年2月に設立された。主に宇宙・サイバー・電磁波といった分野を横断する統合指揮統制ソリューション「Skygate JADC2 Alayasiki」や、ゼロトラストアーキテクチャに対応したセキュリティ製品「Skygate Cygiene」などを展開している。これらのサービスはAIやデータ統合処理技術を活用し、防衛機関向けだけでなく民間企業にも提供されている。組織には防衛省や自衛隊出身者を含む、防衛向けソフトウェア開発の経験者が多く在籍している点も特徴となっている。

代表取締役の粟津昂規氏は、創業者であり元自衛隊幹部自衛官として防衛現場での経験を持つ。大学在学中にIT系企業を起業し、陸上自衛隊に入隊後は通信部隊やサイバー領域の実務に携わった。その後、民間企業でも事業経験を積み、2020年にスカイゲートテクノロジズを立ち上げた。創業メンバーには粟津氏と同様に、防衛分野とIT分野の両方を経験した人材が名を連ねている。

日本の防衛テック領域は、米国やイスラエルに比べてスタートアップの数が限られている。従来はハードウェア中心の産業構造だったが、近年ではサイバーやAI、クラウドといったデジタル領域の重要性が増している。総務省の「情報通信白書 令和6年版」によれば、2023年のサイバー攻撃関連の通信数は2015年の約9.8倍に増加しており、サイバー空間での防衛ニーズが急速に拡大している。防衛調達も、従来の完成品や兵器の導入に加え、データインフラやAI・クラウドサービスの活用が現実的な課題となっている。

一方で、日本国内で防衛分野に特化したスタートアップは依然少数であり、法制度や調達プロセス、認知度の壁が高い。スカイゲートテクノロジズは2025年、航空自衛隊向け「宇宙システムにおけるセキュリティ標準ガイドラインの作成」事業などを受注し、実績を積み上げてきた。また、クラウド地上局構築やプロフェッショナルサービスの提供など、防衛領域で培ったIT・セキュリティ技術の応用範囲を拡大している。

今回の増資により、スカイゲートテクノロジズは防衛機関向けシステム開発に対応可能な組織体制の強化や研究開発力の向上を目指している。資本増強は官公庁入札における参加資格等級の引き上げや、より大規模な調達案件への対応を可能にする。また、民間企業向けのセキュリティサービスについても、防衛領域で蓄積した技術や運用ノウハウを転用する計画を進めている。さらに、業界横断で防衛とスタートアップの連携基盤を形成するためのイベント「DEFENSE TECH DAY」を主催し、新たな人材の獲得やエコシステムの構築にも取り組んでいる。

競合状況を見ると、国内では主に民間向けの統合セキュリティやAIベースの監視システムを手掛けるスタートアップが存在するが、防衛分野に特化し現場知見とソフトウェア技術を組み合わせている企業は少ない。海外では米国のPalantir Technologiesやイスラエルの防衛テック企業が市場をリードしているが、日本発の同分野スタートアップはまだ初期段階にある。

今後の課題としては、人材獲得や法・会計・調達面での障壁克服が挙げられる。さらに、防衛と民生の両分野で技術を活用するデュアルユース戦略の推進も重要な論点となる。

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