サプリメントの開発や販売に取り組むスタートアップ4選

ノルウェー発の発酵バイオテクノロジースタートアップ Norwegian Mycelium AS(NoMy)の日本法人である NoMy Japan は、日本甜菜製糖株式会社とパートナーシップを提携するとともに、同社などから約125万ユーロ(約2億円)の出資を受けた。今回の出資はレイトシードラウンドの一環であり、調達資金はマイコプロテイン技術の事業加速、量産設備の構築、食品安全認証取得などに活用される予定だ。
この出資は資金提供にとどまらず、日甜との戦略的関係構築の一環として位置づけられている。今後、甜菜製糖が北海道で展開する製糖工程で生じる副産物(甜菜パルプなど)を活用し、マイコプロテインの国産化および商業展開を本格化させていく方針だ。
NoMy Japanは2024年1月に設立された発酵科学ベンチャーであり、Norwegian Mycelium ASが100%出資する形で設立された。親会社NoMyは2020年、ノルウェー・オスロでデイビッド・アンドリュー・クイスト氏(Chief Explorer)、イングリッド・ダイアナ氏(CEO)によって創業されている。クイスト氏は真菌生物学の研究者としての経歴を持ち、実業家としても複数のバイオテクノロジー事業に関与してきた。ダイアナ氏はGoogleやYouTubeのノルウェー代表職を歴任した経歴を持つ。両名は発酵科学と国際ビジネスの知見を活かし、持続可能な食料供給の実現を目指して事業を展開している。
NoMyが開発するマイコプロテインは、食品工場やバイオガス施設などで発生する副産物や排水を原料に、糸状菌(マイセリウム)による発酵で生産される高付加価値タンパク質である。動物性や大豆由来のタンパク質に代わる新たな選択肢として、水産飼料や食品用途での活用が期待されている。
日本甜菜製糖は1919年設立の老舗であり、甜菜(ビート)から砂糖を製造する国内有数の製糖企業だ。北海道を中心に精糖のほか飼料やオリゴ糖、イーストなど多岐にわたる事業を展開し、製糖副産物の有効利用や農業振興にも積極的に取り組んできた。近年は、異業種ベンチャーとの協業や脱炭素、循環型社会の実現を視野に入れた新規事業開発を進めている。
国際的にフードテック分野は、環境負荷や食料安全保障、タンパク質供給の持続性が大きなテーマとなっている。国連の試算では2050年に世界人口が97億人に達するとされ、タンパク質の供給不足(プロテインクライシス)が懸念されている。世界の代替タンパク質市場は2021年時点で約4861億円規模、2030年に3兆円超に成長するとの見通しもある。欧州を中心に、畜産依存の低減や食品残渣のアップサイクルを促進する政策が拡大し、日本でもバイオリファイナリーや未利用資源の価値化が議論されている。
NoMy Japanが生産を目指すマイコプロテイン(菌糸体タンパク質)は、甜菜製糖の副産物など非可食資源から作られる新たなタンパク質源で、大豆や動物性原材料に比べ土地や水、温室効果ガス排出の面で環境負荷が抑制しやすいとされる。栄養価や利用用途にも柔軟性があり、食品メーカーや農業関連事業者からの関心も高い。欧米のQuorn FoodsやNature’s Fyndといった発酵プロテイン企業が競合として挙げられるが、日本の甜菜副産物を活かした差別化や北海道の生産インフラの活用が特徴となっている。
今回の資本提携により、日本甜菜製糖の生産インフラや農業ネットワークを活用し、砂糖製造副産物の高付加価値化を進める計画だ。調達した資金をもとに、マイコプロテインの商業化や量産体制の整備、食料安全保障などに取り組むという。
マイコプロテイン事業は、研究開発や食品規格認証などの課題も残るが、スタートアップと伝統的な製糖企業による連携は、循環型社会やフードシステムの再構築を目指す動向の一例といえる。今後は商業化の進展や国内外の事業展開により、フードバリューチェーン全体での新たな動きが期待されている。
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