ERPスタートアップTailor、約21億円を調達ーー北米中心にグローバル展開を加速

ERPスタートアップTailor、約21億円を調達ーー北米中心にグローバル展開を加速

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ERPを開発・提供するTailor Technologies, Inc.(本社: 米国カリフォルニア州サンフランシスコ)は、シリーズAラウンドにおいて総額1400万米ドル(約21億円)の資金調達を実施した。

今回のラウンドはANRIがリードし、スパイラル・キャピタルが参加した。この調達は今後3000万〜4000万米ドル規模のシリーズAラウンド完了を見据えたものであり、さらなる資金調達も検討されている。

Tailorは、エンタープライズ企業向けにモジュール型のERP(基幹業務システム)プラットフォームを提供するスタートアップだ。従来のERPが機能一体型で構築される「モノリシック型」であるのに対し、TailorはAPIファーストの設計を徹底し、業務プロセスに応じた柔軟な組み立てが可能な「コンポーザブルERP」「ヘッドレスERP」を実現している。

特筆すべきは、Tailorのアーキテクチャがデータ・ロジック層とUI層を分離した構造を採用している点だ。この設計により、企業は業務アプリケーションの開発・改修を迅速に行える。各種モジュール(在庫管理、購買、出荷、会計、オムニチャネル対応など)は必要な分だけ選び、柔軟に組み合わせることができ、結果として導入・運用コストを大幅に抑えられる。

さらに、AIとの統合も見据えた構造を有しており、業務データとプロセスモデルを標準化することで、追加開発をせずに外部のAIエージェントと連携可能。企業がDXや業務の自動化を推進する上で、将来的な拡張性も担保されている。

2021年7月には日本法人も設立し、北米と日本を主な市場として事業展開を進めている。

代表取締役の柴田 陽氏は、大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでのコンサルティング経験を経て、複数のテック系スタートアップを立ち上げてきた。これまでに、店舗集客サービス「スマポ」やタクシー配車アプリ「日本交通タクシー配車」などのプロダクトを手がけ、3社の創業・売却に携わった。2016年にはクラウドポート(現ファンズ)を共同創業し、2021年にテイラーを設立した。

エンタープライズERP市場は、SAP、Oracle、マイクロソフトといったグローバル大手が存在感を示している一方、市場のクラウド化と共にSaaS型の新興プレーヤーも台頭しつつある。矢野経済研究所の調査によれば、国内ERP市場は2023年のERPパッケージライセンス市場規模は1419億8000万円、2026年には約1755億円と予測されている。従来型ERPのカスタマイズ需要は依然として根強いが、基幹業務のクラウド化、API連携やAI活用への関心は高まっている。また欧米市場では、モジュラー型やAPI主導型ERPの導入が進んでおり、既存システムとの共存やレガシー刷新の動きがみられる。

Tailorのアプローチは、こうした市場環境やクラウド移行、API連携の潮流を踏まえたものである。APIを軸とした設計によって、従来は分断されがちだった業務システム群の一体的な運用や、企業ごとの業務フロー自動化が可能となる。一方で、グローバル大手との競合、日本企業特有の商習慣や法規制、エンタープライズ市場ならではのセキュリティ・可用性確保など、乗り越えるべき課題も多い。

今回の調達によって、ERPプラットフォームの開発強化と、北米を中心としたグローバル展開の本格化を進める構えである。今後はシリーズAラウンドの追加実施も視野に入れており、調達規模によっては新たな協業や地域展開が生じる可能性もある。プロダクトの柔軟性や拡張性が、今後どのように市場に受け入れられるかが注目される。

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