日本が誇る海藻テックを世界へ、Cashi Cakeが切り拓く地方創生の新たな道筋

日本が誇る海藻テックを世界へ、Cashi Cakeが切り拓く地方創生の新たな道筋

KEPPLE編集部

  • #DeepTech Trend
  • #食品

近年、「Food」と「Technology」を組み合わせた、食の最新技術を総称する「フードテック」が盛り上がりを見せている。陸上養殖、人工肉、調理ロボット、オンライン注文・配達サービス、AIによる食事推奨サービスなど加工・流通・調理・消費にわたってさまざまなビジネスモデルが誕生している。

矢野経済研究所※1によると、日本のアグリテック・フードテック市場規模(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質の4市場計)は、2021年にメーカー出荷金額ベースで718億円に到達したと推定している。また、2030年には2100億円にまで成長すると予測しており、今後は最新技術の発展に伴い、食糧生産の枠組みが変化する可能性があると考察している。

一方、農林水産省※2によると、世界のフードテック分野への投資額は、2012年から2022年までの過去10年で31億ドルから296億ドルまでと約10倍に成長していると推定している。

こうした世界的なフードテック市場の成長背景には、人口増加や経済成長に伴う食料需要の増加、土地・水・生物資源などの自然資本の持続的な利用の拡大、個人の食に対するニーズの多様化などがある。

このようにフードテック業界が注目される中、ロサンゼルスで海藻を使ったフードテック事業を展開するCashi Cake Inc.がプレシリーズA  ファーストラウンドにて、第三者割当増資による5.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、三菱食品、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルほか、個人投資家など。

また、地方独立行政法人鳥取県産業技術センターと、海藻を使った高濃度アルコールを包む
技術を開発し特許を申請したことを発表した。


今回の調達資金は、和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO」と機能性飲料ブランド「OoMee(うーみー)」の事業拡大に伴う採用費および人件費と、機能性海藻パウダーや特許技術の販売を行うBtoB事業のそれぞれの商品開発、新たな特許技術の開発に充てる。日本国内の地方に埋もれている優れた技術を掘り起こし、グローバルに販路を開拓することで地方創生に貢献することを目指すという。

独自開発したヘルシーな海藻プロダクト

Cashi Cakeは「日本文化を世界に」をミッションに掲げ、海藻加工の技術を開発・活用し、和菓子ブランドのMISAKY.TOKYO、機能性飲料ブランドのOoMeeなどの海藻テック事業を展開する。

MISAKY.TOKYOは、ロサンゼルス発の和菓子のDtoCブランドだ。海藻を原料とする食物繊維豊富な寒天を使用し、完全無添加の大粒の琥珀糖を製造している。ルビーや水晶などの宝石を模して作られており、ヘルシーでありながらカラフルで煌びやかな見た目が特徴だ。


また、2023年7月には、静岡県および一般財団法人マリンオープンイノベーション(MaOI)機構と共同で、海藻由来乳酸菌の調査・研究と、OoMeeの開発を行うことを発表した。OoMeeは、寒天をベースにしつつ、フルーツやハーブを加えることで飲みやすさを実現した機能性飲料だ。

MISAKY.TOKYOではこれまでに、ブランドのTikTokアカウントフォロワーが140万人、アカデミー賞・エミー賞前夜祭にベンダーとして選出されて出店、アメリカ最大のフードマガジンBon appetiteへの掲載などの実績がある。キム・カーダシアンのブランドとのコラボなども実現してきた。

今回の資金調達に際して、CEO 三木 アリッサ氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

日本は海藻テック先進国

―― 海藻テックに関して日本と海外にはどのようなギャップがありますか?

三木氏:海外ではそもそも海藻の食文化がなく、技術が発展していません。海藻を食べるメリットが一般化しておらず、技術開発が行われてこなかったのです。

また、たとえ海藻のメリットを訴求したとしても、海外で海藻を食品化・ビジネス化するには、3つの課題があります。

1つ目に、海藻は海面温度の影響を強く受けやすく、また海藻の食物繊維も脆いため、品質管理が難しい点です。2つ目に、一般消費者に好まれる味として製品化することも容易ではありません。食品開発では、美味しさの構成要素の1つである酸味のバランスを整えることが重要で、酸味を感じやすいビタミンCが利用されます。しかし、食物繊維が弱い海藻に混ぜると、繊維が壊れ、ざらついた食感になったり、見た目が悪化することがあります。

3つ目に、海藻商品の量産化も難易度が高いです。海藻はうまく管理しないとすぐにカビ菌が蔓延してしまいます。かといって、高熱処理をしても食物繊維が脆いため溶け切ってしまいます。

一方で、日本国内では古くから海藻が親しまれてきたこともあり、これらの課題を解消する技術を有しています。400年以上続くとされる日本の海藻技術の歴史の中でノウハウが蓄積され、数々の課題が解決されています。世界的に見れば、日本は海藻テックの先進国です。

―― 御社のプロダクト開発技術について教えてください。

弊社の強みは、日本国内有数の海藻テック企業と連携して海藻技術の基礎研究を行いつつ、その技術をベースに独自で商品開発ができる点です。

たとえば、用途別の寒天加工に長けた技術を有する伊那食品工業とは、同社の技術と弊社のビタミンC制御技術や量産化のノウハウを活かすことで、天然由来で美味しい海藻食品の開発を行っています。

また、海藻から作成した膜で醤油を包む技術を有した鳥取県産業技術センターと共同で、高濃度アルコールを包み込む技術を開発しており、将来的にはどんな飲料にも対応したプラスチックの代替品として製品提供することを目指しています。

さらに、海藻由来の乳酸菌の研究を行っている静岡県MaOI機構と連携して、海藻の持つ食物繊維と乳酸菌を活かし、腸内環境を整える海藻機能性飲料OoMeeを開発しています。

日本の技術を世界に広め、地方創生を実現

―― 御社の事業を始めようと思われたきっかけは何でしょうか?

きっかけは大きく2つあります。日本の技術を世界に広めたいという思いと、海藻に大きな可能性を感じたからです。

幼少期に米国と日本を行き来する生活を送り、9歳から日本に移り住んだのですが、多感な時期だったこともあり、アイデンティティクライシスを経験しました。しかし、その後に日本のスタートアップ企業やイスラエルの企業で働いたことで、さまざまな価値観を知り、改めて日本文化の良さに気がつきました。

一方で、こうした日本文化の担い手である職人たちは高齢化問題を抱えており、素晴らしい技術を持っているにも拘わらず世界に広めることができていないという現状を知りました。どうにか優れた日本技術の訴求に貢献できないか模索していました。

そんな中で海藻は体に良く、環境に良く、美味しいという三拍子が揃っているという稀有な植物でありながら、世界ではその食文化が根付いておらず、日本は海藻テック先進国であると知りました。

海藻は、糖尿病予防など健康によいことが証明されているだけでなく、ブルーカーボンの吸収源となるなど、社会的にもポテンシャルが高い食品であると考えました。そして、素晴らしい海藻技術を持った日本の地方企業と私たちが共に取り組むことで、彼らの技術がグローバルに認知され、最終的には地方経済の外貨獲得にも繋がるという現在のビジネスモデルを構想し、創業しました。

―― 御社のプロダクト開発と事業化を実現できたポイントについて教えてください。

事業化する上で大きな障壁だったのは、海外には海藻の食文化がない点、効果的なブランディング方法が日本と大きく異なる点でした。

そもそも海外では海藻を食べる習慣が少なく、受け入れられづらいです。私達日本人であっても食べ慣れない海外食品が想起しづらいように、海藻食品がどんなものかイメージさせづらいのです。

また、ブランディング戦略についても、義務教育下で食育を取り入れている日本と違い、海外では食材の機能性や栄養素を押し出してもなかなか手に取ってもらえません。

こうした課題に対して、HERO戦略に取り組んだという点が事業化できた要因だと考えています。現代の米国では今まで以上に「どのブランドやファウンダーをなぜ応援するのか」が問われます。

そこで、すべての人種が思わず応援したくなるようなストーリー性をブランドや代表である私自身に持たせています。たとえば、「MISAKY」は美しい先の未来を意味し、茶道における平等の精神性に基づいているコンセプトであること、その理念を和菓子を通して表現していることを強調しています。こうした背景から、世界中の食材を用いた商品開発を行っています。

また、米国における食品業界では白人男性が大半を占める中で、弊社ではメンバーの97%が女性で、72%はマイノリティを採用をしているという点も、応援していただける理由となっています。

これらのブランディングを徹底したことで、業界で著名な方々に参画、協力してもらうことができ、営業もしやすくなりました。

―― 御社のプロダクトが普及した先の一般消費者のメリットについて教えてください。

海藻はゼラチンの代替品や、健康食品として顕著なメリットがあります。ゼラチンは主に、豚のコラーゲンから製造されており、CO2の排出問題など環境への負荷があります。大半の医療用カプセルはゼラチンからできていますが、宗教上の理由で豚を摂取できない方が多数存在し、薬品を使用できない状況も起きています。弊社技術を応用すれば、海藻由来のゼラチンを開発することができ、こうした課題を解決できます。

また、「Food is medicine.」の理念を持った弊社では、海藻は糖尿病やがん予防になり、将来的には米国での高額な医療費の問題の解決にもつながると考えています。

CEO 三木 アリッサ氏

次世代へつなぐ世界への挑戦

―― 調達資金の使途について教えてください。

資金使途としては、基礎技術開発、OoMeeの展開、海藻の啓蒙活動と大きく3つあります。今回特許の申請を行った海藻を使った高アルコール飲料を包む技術だけでなく、医療用のカプセルなど、新たな海藻技術の開発に注力します。加えて、OoMeeの展開におけるセールス・マーケティング費用や人件費に充てます。

さらに、米国における海藻の啓蒙活動を進めます。Cashi Cakeとは別に「Marine Plant Based Organization」という団体を設立し、来年には非営利団体にする予定です。すでに米国で海藻関連企業40社を集め、有名大学の教授らにも参画いただいている組織です。インタビュー記事やイベント、メディア露出を経て、海藻食文化の認知度向上を目指します。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

2030年までに、ナスダックで日本人女性初のIPOを目指しており、そのためにはまず年間で450万ドル程度の売上が必要です。そこで、フィニッシュプロダクト展開、BtoB事業、医療用品開発の3つに注力していきます。

まず、フィニッシュプロダクトとして、MISAKY.TOKYOやOoMee、その他スープやサプリメントの開発・展開を進めます。次に、BtoB事業として、日本国内の海藻食品の海外販売や弊社の技術を活用した他社の商品開発の支援を行っていきます。そして、医療分野では海藻を用いた医療用カプセルの開発を進めていきます。

―― 日本企業の海外進出にはどのようなポテンシャルが秘められていると思われますか?

日本は現在、少子高齢化など社会的な問題から閉塞感が漂っていると思います。しかし、日本ではありふれていても、世界では革新的なソリューションとして、業界をリードできる技術がたくさん埋もれています。海藻テックに限らず、多くの優れた技術が日本各地に眠っています。ぜひ多くの方に世界に挑戦してほしいです。世界は日本を待っています。

そして、海藻・食品・医療分野の企業の世界進出に際しては、ぜひ弊社にお声がけいただきたいです。弊社には、CIO・CMOといったエグゼクティブに素晴らしいメンバーが在籍しており、医学的なエビデンスの検証も行えますので、力になれるはずです。

ぜひ、弊社と共に世界に挑戦し、次世代の子どもたちに還元していきましょう。

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参考:
※1 矢野経済研究所「アグリテック・フードテック市場に関する調査を実施(2023年)
※2 農林水産省「フードテックをめぐる状況


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