「ファンに刺さるIP創りを」Plottが10億円調達──2年で新規IP100作品創出へ
IPコンテンツの企画・制作・ビジネス展開を行うPlottがシリーズBラウンドにて、約10億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ジャフコ グループ、MIXI、バンダイナムコエンターテインメント、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル、SMBC日興証券の6社。
Plottでは、YouTubeで見られるショートアニメや漫画アプリで読めるwebtoon(ウェブトゥーン)※コンテンツを数多く制作。代表コンテンツは「混血のカレコレ」(YouTubeチャンネル登録者数240万人)や「テイコウペンギン」(YouTubeチャンネル登録者数165万人)など。
好調なショートアニメ事業に加えて、3年ほど前から事業に乗り出したwebtoonは、韓国で発展してきた新しいエンターテインメントの形だ。スマートフォンに最適化されたカラーの縦読み漫画というフォーマットが一般化し、スマートフォンネイティブの若年層を中心に消費が高まっている。
さらに同社は、自社で制作するショートアニメのIPを活用して、関連する書籍やキャラクターのカプセルトイ、スマートフォンで遊べるカジュアルゲームなどもリリース。IP展開事業にも大きく注力している。
今回の資金調達により、プロデューサー・クリエイターの採用をさらに強化し、2026年末までに100作品の新規IP創出を目指す。大型ハイブリッドカジュアルゲーム10作品、楽曲50曲の制作やオフラインイベントの開催なども計画する。
代表取締役の奥野 翔太氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
スマートフォン時代のエンタメ市場に「メディアミックス」で挑む
―― Plottはこれまでショートアニメを中心とした事業展開を進めてきました。ニーズの起こりや現状について教えてください。
奥野氏:近年、エンタメを消費する人々の行動が変容してきています。ひと昔前にテレビでバラエティ番組を見ていた人が、現在はYouTubeで面白いチャンネルを探して見ている。Webで観る動画は短いものが好まれ、番組の短尺化が進んでいます。アニメやドラマなども短いものが好まれるようになり、ショートアニメやショートドラマが流行し始めました。
このような消費者の行動変化に合わせて、テレビに出ている芸能人がYouTubeでチャンネルを始めたり、プロがYouTubeで番組を作ったりする時代になりました。エンタメのプロがWebコンテンツにも参入しています。
Plottも、お金をかけて短尺のアニメをプロコンテンツとして世に出したものが受けています。運営している10チャンネルほどのYouTubeチャンネルの総再生回数は5億回を超え、延べ月間視聴者数も7000万人突破と好調です。
―― 従来のアニメ制作と比べて、ショートアニメにはどのような事業メリットや特徴があるのでしょうか。
アニメ産業は、数割のヒット作品が支えているという構造です。アニメ作品はたくさん作られても、すべてのアニメ作品でモノが売れるなど副次的な売上を得られるような状態になっていないんです。
アニメの制作会社は通常、制作委員会から制作を受注することで報酬を得ています。つまり、制作したアニメが大ヒットしてモノが売れたとしても、製作委員会に出資していない限り、制作会社がリターンを得られないような構造になっているのです。
作品に全額出資し、版権を持ちながらアニメ制作をする制作会社もありますが、かなりのお金がかかります。私たちはアニメに比べて低予算で制作できるショートアニメの事業を展開することで、自社でアニメを作れる制作会社でありながら、版権も持つというビジネスモデルで収益化しています。
―― 自社IPを二次利用したゲーム制作やグッズ販売も行っています。
Plottのショートアニメやwebtoon作品は、テレビで放映されるアニメと比べてもグッズなどの関連商品がよく売れます。
私たちは制作会社でありながら版権を持つことで、自由に幅広くプロモーションが打てます。動画の中で、キャラクターを通してグッズや関連商品へのこだわりを訴求できるということです。YouTubeチャンネルなどのメディアを持つからこそ、ファンに刺さる売り方ができるというわけですね。SNSのみを活用したプロモーションと比べても訴求力がかなり違います。
従来のアニメと異なり、ファンにピンポイントで刺しに行くようなグッズ訴求や販売の仕方に変化しているのだと思います。
インパクトのあるIPを生める企業に 新規IP創出を加速
―― 調達資金の使途を教えて下さい。
Plottとしては自社IPを活用したマネタイズがうまく走り出し、徐々に利益体質になってきたフェーズです。一方で、昨今のショートアニメ市場の盛り上がりを背景に続々とプロが参入し始めています。私たちもさらにIPを増やし、マネタイズの幅を広げて収益を上げていくために資金調達を実施しました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
基本的にはIPを作ってその売り先を広げていく方針ですが、「どれくらい大きなIPが生まれるか」が経営にとって重要です。小さな売上を生むIPを量産するのではなく、世の中にインパクトを与えられるIPがたくさんあるような会社を作っていきたいと思います。
これまでの主流なIPの作り方と異なり、Plottは制作したwebtoonを自社でショートアニメ化して広げることができます。さらにゲームや音楽、ミュージックビデオを作るほか、ファンミーティングのような形でライブをしたりグッズを販売したりする取り組みも始めています。ライセンスアウトで他社を巻き込みつつ、これらの機能を1社で担うことにチャレンジしていきたいですね。
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