ART領域のスタートアップ、アークスが2.7億円を追加調達ーー胚培養の自動化で不妊治療を変革

ART領域のスタートアップ、アークスが2.7億円を追加調達ーー胚培養の自動化で不妊治療を変革

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生殖補助医療(ART:Assisted Reproductive Technology)領域で自動化技術の研究・開発を行う株式会社アークスが、プレシリーズAラウンドで約2.7億円の追加調達を実施し、同ラウンドの調達総額は約8億円でクローズした。助成金・融資を含む累計調達額は約12.3億円に達する。

本ラウンドには、HIRAC FUND、科学技術振興機構(JST)、あすかイノベーション、三菱UFJキャピタル、未来創造キャピタルなどが新たに参加した。

2022年創業のアークスは、AIとロボティクスを用いた胚培養工程の自動化に取り組んでいる。主に不妊治療における胚培養士の人材不足や作業負担、地域間格差、標準化の遅れといった課題に対応する技術開発を推進している。

これまでに国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や厚生労働省の中小企業SBIR事業などからの助成を受け、研究開発から社会実装への取り組みを進めてきた。現在は日本国内にとどまらず、海外での臨床利用も見据え、技術実証や環境整備を進めている。

日本では出生児の約10人に1人がARTによって生まれているとされるが、高齢出産や多様な家族観を背景に不妊治療の需要は依然として高い。一方、人材不足や治療成績の地域格差、プロセスの品質担保といった医療現場の課題も顕在化している。

アークスの技術は、これらの課題に対して遠隔監視・制御が可能な自動化ソリューションを提供することで、治療成功率の向上や医療安全の確保、医療従事者の負担軽減を図るものだ。

生殖補助医療分野では、米国、欧州、中国、イスラエルなどでもAIや自動化、ラボ管理基盤の開発を手がけるスタートアップが増加しており、グローバルな技術競争が進む。2023年に130億9000万米ドルと評価され、2030年には226億1000万米ドルに達すると予測されている。

アークスの主な開発領域は、胚培養工程のAIサポートやロボット活用による自動化である。これにより治療成功率の向上、医療従事者の負担軽減、治療安全性の確保を目指している。従来、胚培養士に依存していた工程を自動化することで、遠隔監視や制御を実現し、治療プロセスの品質均一化や定量的な実施が可能になるとしている。欧米では同様の技術開発を進めるスタートアップが複数存在するが、同社は日本発の技術で国際的な臨床基準への適合を重視している点が特徴である。

代表取締役の棚瀬将康氏は、京都大学大学院を修了後、新卒でトヨタ自動車に入社し、先進安全技術の開発を推進。その後、AI系スタートアップ2社での経験を経て、アークスを創業した。前職では医療機器開発全般を主導しており、その知見を活かして、生殖補助医療における技術革新に取り組んでいる。

今回の調達資金は、研究開発、臨床研究、国内外での事業展開、人材採用に充てられる予定だ。とくに、薬事申請や事業開発、エンジニアリングの各分野で人材募集を強化しており、製品化と社会実装の加速を図る構えである。

画像はアークスHPより

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