AI-zen株式会社

2025年12月20日、25歳以下の起業家やスタートアップ志望者が集うイベント「TORYUMON TOKYO BURST 2025」が渋谷で開催された。
本イベントは、25歳以下の若手起業家にシード投資を行うF Venturesが主催し、2017年に福岡で初開催されて以来、今回で23回目を迎える。
当日は、25歳以下の起業家によるピッチに加え、「スタートアップと政治」をテーマとしたトークセッションなどが実施された。起業やスタートアップ就職を目指す学生、若手起業家やキャピタリスト、スタートアップへの転職を志す社会人など、約500人が来場した。
本レポートではイベントの様子を一部お届けする。
世界で闘うスタートアップを日本から輩出するための政策とは
イベント冒頭の第一部では、スタートアップ政策をテーマに、政治家によるクロストークが行われた。チームみらい党首の安野貴博氏、自由民主党の河野太郎氏、国民民主党代表の玉木雄一郎氏が登壇し、政策プラットフォームを運営する株式会社PoliPoliの伊藤和真氏がモデレーターを務めた。
クロストークは、「なぜ政治家というキャリアを選択したのか」という3名それぞれの原点に迫る問いからスタート。その後、デジタル民主主義の可能性や、スタートアップを取り巻く政策のあり方について、幅広い議論が展開された。

安野氏は、民主主義も時代の変化に合わせて進化すべきだと指摘。台湾で導入されている「デジタル目安箱」を例に、市民の声をテクノロジーによって政策へ反映する取り組みを紹介し、「テクノロジーは、1億2000万人が政治について熟議するためのコストを下げられる」と、デジタル民主主義の可能性を語った。
河野氏は、スタートアップによるイノベーションを後押しするために、政治が果たすべき役割として規制緩和を挙げた。自動運転の普及状況を引き合いに、「日本は規制が多い。規制緩和を進めると同時に、『ルールがないからできない』ではなく、『ルールがないならやってみよう』という発想の転換が必要だ」と述べた。
続いて玉木氏は、「スタートアップを邪魔しないことこそが政治の役目」と強調。国が主導してイノベーションを進めるのではなく、制度面の整備を通じて、民間の挑戦を支える環境づくりの重要性を訴えた。
セッションの締めくくりとして3名は、「国内市場にとどまらず、グローバル市場でのスケールを見据えて起業し、事業を推進してほしい」と、若手起業家や起業志向者への期待をにじませた。
熱量の高い「U25 TORYUMONピッチ」
イベント後半では、25歳以下の起業家が登壇するピッチコンテスト「U25 TORYUMONピッチ」が開催された。次世代を担う起業家たちが、それぞれの事業構想と成長戦略をプレゼンテーションした。
本コンテストの審査員は、以下の5名が務めた。
グロービス・キャピタル・パートナーズ プリンシパル 磯田 将太氏
エンジェル投資家 川崎 裕一氏
アニマルスピリッツ ベンチャーキャピタリスト 川原 あやか氏
日本電気株式会社 ビジネスイノベーション統括部 ディレクター 藤村 広祐氏
Yazawa Ventures Founder and CEO 矢澤 麻里子氏
登壇した起業家5名は、AI、農業、観光、生物多様性、業務効率化といった多様な領域での課題解決に挑む構想を披露した。
1. AI-zen株式会社 横田 大伍氏
24時間の音声を記録し、会話や思考、TODOをAIが自動で整理・可視化するアプリ「StandBy」を開発。ユーザーの「能動性」とAIの「マルチモーダル性」を掛け合わせ、物理世界のデータを活用した日本発の差別化AIプロダクトを目指す。今後はデスクトップ版の開発やAPIの公開を予定している。

2. 株式会社SATSOIL 三田 琳太郎氏
衛星データやドローンを活用し、5m四方単位での精密な土壌診断を可能にするサービスを開発。従来の土壌診断は圃場内での性質のばらつきを考慮していないため精度が低く、時間もかかるという課題に対し、農業現場で実用的なソリューションを提供する。まずは北海道など国内のJAや大規模農家で実証を進め、将来的には約3.6兆円規模とされるグローバル市場への展開を見据える。

3. 株式会社Gappy 浅野 充輝氏
訪日外国人旅行者向けに、AIチャットとAIインスピレーションを活用し、隙間時間に最適なアクティビティを提案・予約できるプラットフォーム「Gappy」を提供。旅行者が抱える空白時間と、事業者側の当日予約ニーズという双方の課題解決を目指す。渋谷を起点に、日本、そして世界を代表する「旅ナカプラットフォーム」への成長を狙う。

4. 株式会社Aqzoo 堀内 涼太郎氏
企業の生物多様性保全への取り組みを評価・ランキング化する法人向けサービスを展開。動物園・水族館で収集した生物行動データなどの自然資本データを活用し、科学的根拠に基づいた保全活動を支援する。2030年までに104兆円規模が見込まれる国内ネイチャーポジティブ市場※を背景に、自治体との連携も視野に入れて事業を拡大していく。
※ネイチャーポジティブ:生態系を保全するだけでなく、回復させていく考え方・取り組み

5. 株式会社StepAI 田山 理人氏
オペレーターに代わって架電を行う完全自動対応型AIツール「Reco」を開発。高い採用コストや離職率といった電話業務の課題をAIで解決する。自社開発の電話インフラによる低コスト化と、自然な会話体験を強みとし、将来的にはさまざまなプロダクトの基盤となるインフラプラットフォームを目指す。

U25が興していくこれからのスタートアップ
閉会式では、「U25 TORYUMONピッチ」の入賞者表彰が行われた。
審査員による総合得点が高いピッチに贈られる「TORYUMON最優秀賞」は、SATSOILの三田氏が受賞。衛星画像の農業への活用推進に寄与する点や、海外市場も見据えた今後の展開に注目が集まる。

このほか、同イベントではVCによるリバースピッチや、スタートアップ志向の学生向けのキャリアについてのセッション、急成長スタートアップによるプロダクト戦略についてのセッションなどが行われた。
若手起業家、投資家、政策関係者、学生が一堂に会した本イベントは、次代のスタートアップエコシステムの担い手として、U25世代の存在感を示す場となった。











