世界の頂点を目指す──スタートアップワールドカップ2025 東京予選レポート

世界の頂点を目指す──スタートアップワールドカップ2025 東京予選レポート

Written by
KEPPLE編集部
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世界中のスタートアップが頂点を目指す、グローバル規模のピッチバトル「スタートアップワールドカップ」。アメリカ・シリコンバレーに本社を置くPegasus Tech Venturesが主催し、世界最大級の規模を誇るこのコンテストには、毎年数万社の応募が集まる。

予選は世界100以上の国と地域で開催され、各地の代表が最終的に10月、アメリカ・サンフランシスコに集結。優勝企業には100万米ドル(約1億5000万円)の投資賞金が授与される。

2025年の日本予選は、九州・東北・東京の3都市で展開され、7月18日にはグランドハイアット東京にて東京予選が開幕。会場には大手企業やベンチャーキャピタル(VC)、報道関係者などが多数来場し、スタートアップによる熱気あふれるピッチが繰り広げられた。

スタートアップの未来を照らす、東京予選の開幕メッセージ

東京予選の開幕に際し、主催者や政府関係者、自治体、在日米国大使館など各界のリーダーが登壇またはメッセージを寄せ、世界を目指す起業家たちに向けてエールを送った。

大会を主催するPegasus Tech Venturesの創業者兼CEOであり、本コンテストの創設者でもあるアニス・ウッザマン氏は、「この大会は単なるピッチイベントではなく、世界135カ国以上が参加するグローバル・イノベーションの交差点である」と述べ、2015年の構想開始から2017年の初開催、そして年々拡大する大会の歩みを振り返った。

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また、「この大会から日本発の世界チャンピオンが複数誕生している。今年も東京から世界を驚かせる起業家が現れると信じている」と力強く語った。

内閣官房長官・林芳正氏は、日本のGDPが現在世界の約4%に過ぎないという現実を挙げ、スタートアップが早期から海外市場を志向することの重要性を強調。「文化や常識の違いを理解することで、真のグローバルビジネスが見えてくる」と語り、言語力と現地経験の双方を兼ね備える人材の必要性を訴えた。

さらに、在日米国大使館で商務部門を担当するアラン・ターリー公使も登壇。企業家精神はイノベーションと経済成長の原動力であるとしたうえで、「このような国際舞台こそが、次世代のスタートアップを世界に押し上げる出発点になる」と本イベントの意義を評価した。「東京予選から選ばれる企業が、サンフランシスコ決勝で優勝することを期待している」と述べ、日米間におけるスタートアップ連携への期待も示した。

後半には、東京都知事・小池百合子氏より、ビデオレター形式でのメッセージが届けられた。スタートアップ支援戦略「G.I.O.S.(Global Innovation of Startups)」や、来場者数20万人を突破した「東京イノベーションベース」の取り組みを紹介し、東京都として世界を目指す起業家の挑戦を力強く後押ししていく姿勢を示した。

こうした多方面からの支援と期待が重なり合い、スタートアップワールドカップ東京予選は、まさに“世界の頂点”を目指す起業家たちの熱気に満ちた幕開けとなった。

多彩な専門性が集結──審査員陣と評価プロセス

東京予選の審査は、国内のスタートアップ支援・投資・事業開発の第一線で活躍する8名の審査員によって行われた。企業経営者、ベンチャーキャピタリスト、事業会社のCFOやCIOなど、多様な専門性を持つメンバーが揃い、それぞれの視点から鋭い質疑とコメントが交わされた。

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審査は、各ファイナリストによる「紹介映像」「3分間のプレゼンテーション」「質疑応答」の三部構成で進行され、それに対して審査員が7項目(例:ビジネスモデルの独自性、技術力、成長性、グローバル展開の可能性など)を軸に10点満点で評価。合計70点満点の専門審査に加え、来場者によるX(旧Twitter)を通じた一般投票が30点満点で加算され、最終スコアが決定される方式である。

審査員を務めたのは以下の8名:

  • 株式会社プロノバ 代表取締役社長/株式会社ユーグレナ 取締役・指名報酬委員会委員長 岡島悦子氏
  • D4V(Design for Ventures)Partner 太田明日美氏
  • アステリア株式会社 代表取締役CEO 平野洋一郎氏
  • 株式会社eiicon 代表取締役社長 中村亜由子氏
  • 株式会社広済堂ホールディングス 代表取締役社長 COO兼CFO 前川雅彦氏
  • フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長 志水雄一郎氏
  • Ci:z Investment CEO 城野親徳氏
  • MPower Partners Fund L.P. ゼネラルパートナー 村上由美子氏

各審査員は、それぞれの専門領域から登壇企業のプレゼンテーションに向き合い、厳正な選考を行った。

東京予選の栄冠は誰の手に──優勝企業と上位入賞者が決定

スタートアップワールドカップ2025 東京予選の最終結果が発表され、11社のファイナリストの中から上位3社が選出された。

第3位に選ばれたのは、株式会社NearMe。同社はAIを活用し、空港送迎・観光・通勤など多様な移動ニーズに対応したタクシーのシェア乗りサービス「NearMe」を展開する。1台あたりの輸送効率を高め、地域交通の課題解決に取り組む姿勢が評価された。

審査員からは「高齢化や人口減少という社会課題を的確に捉え、技術とビジネスを融合させたスケーラビリティの高いモデルである」とのコメントが寄せられた。

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第2位は、インターステラテクノロジズ株式会社。北海道・大樹町を拠点に、小型ロケットの開発から打ち上げまでを一貫して手がけ、低コストかつ高頻度な宇宙輸送を可能にする宇宙インフラの構築を目指している。

ロケット不足という世界的な需給ギャップに着目し、国内技術による量産体制で差別化を図る。同社に対しては「スペースXが到達していない領域にも挑戦しており、日本発の宇宙産業創出という志が心を打った」といった声も上がった。

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そして東京予選を制したのは、株式会社Acompany(アカンパニー)である。同社は、暗号化されたままのデータを安全に処理できる「秘密計算技術(コンフィデンシャルコンピューティング)」を用い、企業のAI活用における情報漏洩リスクの課題を根本から解決する「プライバシーAI」を提供している。

すでにKDDIとの業務提携や、大手企業との導入実績も進んでおり、審査員からは「セキュリティとユーザビリティの両立という難題を見事にクリアした」「日本から世界のデータ産業を変える可能性を感じる」と高く評価された。

優勝したAcompanyにはトロフィーのほか、プラチナスポンサーであるZIPAIR Tokyoより、東京—サンフランシスコ間の往復航空券(2名分)が贈呈された。

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代表の松本氏は「ファイナリストはどの企業も素晴らしく、最後まで結果が読めなかった。これから世界大会に向けて、さらに挑戦を加速させたい」と語った。

加えて、ジャパネットグループ賞には、株式会社LINK-USが選出された。同社は、金属を溶かさずに接合する独自の超音波振動技術により、接合品質と安全性を飛躍的に高めた装置を開発。EV・航空宇宙・医療など幅広い分野への応用を目指している。

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ジャパネットグループの高田旭人CEOは、「レンタルやサブスクリプションというビジネスモデルも含めて革新性を感じた」と授賞理由を述べた。

審査総評では、「11社すべてが高水準のピッチを披露し、選考は非常に困難を極めた」と審査員の多くが口を揃えた。

その他のピッチ登壇企業一覧(※アルファベット順)

次なる舞台は世界決勝。イノベーションの波は止まらない

東京予選を制したAcompanyは、世界各国の予選を勝ち抜いたスタートアップとともに、2025年10月にアメリカ・サンフランシスコで開催される世界決勝大会に出場する。世界135カ国超の代表が集う本大会では、グローバル市場で戦うための資金・ネットワーク・注目が一挙に集まる。まさに“世界の頂点”を決める舞台である。

過去には、日本発のスタートアップが世界大会で優勝した事例もあり、東京予選を勝ち上がることは世界への登竜門としての意味を持つ。今年のファイナリストたちは、いずれも社会課題に真正面から向き合い、独自技術と実装力を武器に、新たな市場を切り拓こうとしている存在だ。

東京予選を起点に、彼らがどのように事業を進化させ、世界の課題を解決していくのか──。今後の動向から目が離せない。

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