微生物の力で排水処理問題を解決、持続可能な資源循環への挑戦

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KEPPLE編集部


微生物やその酵素を用いた技術を開発・提供する名古屋大学発ベンチャーの株式会社フレンドマイクローブが、プレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による2.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、ジェネシア・ベンチャーズ、豊田合成、住友商事、ハウス食品グループ-SBI イノベーション 2 号投資事業有限責任組合の4社。

今回の資金調達により、微生物を用いた油脂分解システム「Mibiocon🄬(マイビオコン)」の販売促進を行うとともに、微生物分解の適用範囲を広げるための開発を進める。

高性能微生物を活かした油脂分解システム

Mibioconは、食品工場の排水に含まれる油脂を分解するシステムだ。従来は物理的に水と分離させ、産業廃棄物として処理していた排水中の油脂を、名古屋大学で開発された高性能油脂分解微生物群により分解する。この技術により、油性汚泥や悪臭の発生を抑え、廃棄物処理コストの削減を実現する。また、焼却処分による廃棄処理をなくすことで、温室効果ガスの発生も減らすことができる。

Mibioconのポイント
同社の扱う微生物は、他社と比べても分解性能が圧倒的に高く、分解の速さと全ての動植物油に対応できるのが特徴だ。そして、この微生物を最大限に活かすため、微生物を増やす装置や現場で適用するためのプロセスをワンストップで開発しており、特許を取得している。

そして、ユーザーとなる食品工場などに、まず現場で微生物を増やすための装置を購入してもらい、培養の素となる微生物自体を毎月販売するリカーリングビジネスを行っている。微生物の継続購入が必要となるが、それまでの油脂の産業廃棄物処理費用と比べると大幅にランニングコストを削減できる。また、既存の処理設備を活用しながらシステムを導入できるので、初期コストも押さえられる。

すでに、国内に複数の工場を有する大手食品会社で運用されており、その他にもレトルト食品会社や総菜加工会社など数社と導入に向けた実証実験が進められている。

今回の資金調達に際して、代表取締役 蟹江 純一氏に、調達資金の使途や今後の展望などについて詳しく話を伺った。

油脂の産廃処理に新たな活路

―― 食品工場における油脂の廃棄処理にはどのような課題がありますか?

蟹江氏:廃棄処理問題の一つとなっているのが、食品に含まれている動植物油です。廃棄物となる動植物油には二種類あります。揚げ物油のように比較的綺麗な油はバイオディーゼルとなり資源循環をしてるのですが、食品工場などで機械に付着した油などは、洗浄時に排水に混じってしまい、分離・回収・精製が困難です。

さらに、食品工場の排水の油脂濃度には法定基準が定められ、一般的に工場敷地内に油脂を取り除くための排水処理設備の設置が設けられています。そこで、油を吸着する凝集剤を用いて水と油を分離させ、集まった油は産業廃棄物として焼却処分されますが、焼却にはたくさんの石油燃料が必要となり、温室効果ガスを多く排出してしまいます。また、排水処理設備で扱う油脂は、その悪臭も問題視されています。

しかし、国内の9割以上の食品工場で、このような処理が行われています。法定基準があるため処理性能が重視され、費用がかかろうが、環境に良くなかろうが、こうした処理方法を選ばざるを得ないのが現状です。

―― 微生物による油脂分解技術を開発された背景について教えてください。

当社の取締役会長である名古屋大学大学院の堀 克敏教授は、微生物で世界をよくすることを目指し、長年微生物を用いた排水処理・環境浄化の研究を行ってきました。その研究に着目したさまざまな企業から油の処理に関する相談を持ちかけられたことをきっかけに、微生物による油脂分解技術を国の研究プロジェクトなどを活用して開発し、その技術を社会実装するため、2017年に事業を立ち上げました。

事業化にあたり、教授が協力を仰いだ当社の先代の代表は、「医学生物学研究所」というバイオベンチャーの草分け的な企業を創業した方でした。当社設立時、すでに高齢だったため、数年して代表を退くタイミングで引き継ぐべく、当時教授の研究室の学生であった私に声をかけていただき、一号社員として入社後、代表に就任することとなりました。

微生物の可能性を世界へ広げる

―― 調達資金の使途について教えてください。

調達資金は、食品工場以外にも、油処理の問題を抱えるさまざまな現場で適用するためのアプリケーションの開発に充てます。

例えば、飲食店などには排水から油を分離させ、一次的に溜める「グリーストラップ」という設備がありますが、溜めた油は定期的に人力で清掃して取り除かなければなりません。この設備に替わる微生物分解システムの開発を進めます。同じように生ごみ処理においても、私たちの技術を活用していきたいと考えています。
さらなる油脂分解微生物の活用
さらに、動植物油だけでなく、機械油の処理技術の開発も進めます。ロボット産業の発展に伴い、ギアオイルやエンジンオイルなどいろいろな油の処理の需要が高まっていくことが予想されます。技術難易度は高いですが、鉱物油と呼ばれる石油由来の油を分解する技術も開発していきます。

もう一つの用途としては、微生物を培養する生産設備の拡充です。導入企業以外にも複数の企業と実証実験が進んでおり、引き合いが増えていますので、それらにしっかり対応できるように微生物の生産量を拡大します。

また、採用にも力を入れていきます。具体的には、商品開発のための技術者と、技術営業を担う人員を募集しています。今はまだ役員2名、社員2名の体制なので、再来年度までに社員を10名程度に拡大していきたいと考えています。微生物に興味があって、環境問題解決に取り組みたい、新しいことにチャレンジしたいという志をお持ちの方にぜひ応募いただきたいです。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

中期的には、先述の通り、微生物分解の適用範囲を広げていきます。長期的には、それらを使って、有用物質生産が大事なテーマです。微生物で分解ができるというのは、合成ができるということにもつながります。廃棄物の分解もとても価値がありますが、微生物を使って廃棄物から有用物質を創り出していく技術を確立したいと考えています。

たとえば、微生物の酵素を使って油脂をバイオディーゼルエネルギーに変える技術を、テーブルテストでは確認しており、特許として出願しています。今はバイオディーゼルを作るときには、廃食用油を高温にして反応させています。エネルギー生成のためにエネルギーを使っているのです。これを、微生物の酵素反応でエネルギーコストを抑えて作れるようにする技術の実用化を目指しています。さらに、CO2まで分解されたものを、イソプロパノールやプラスチックモノマーなどの有用物質に変える研究も進めています。

そして、海外展開も視野に入れています。まずは東南アジアへの進出を考えており、早い段階で、微生物による油脂分解をスタンダードにしていきたいと考えています。今回出資いただいた住友商事さんともいろいろとお話しを進めさせていただいており、近い将来海外でのビジネスも実現していくつもりです。

今は油脂分解に力を入れて、ビジネスの土台を構築していますが、今後は油に留まることなく、微生物に関するさまざまな環境技術を創り出していき、微生物の可能性を世界に広げていくことを目指します。

株式会社フレンドマイクローブ

株式会社フレンドマイクローブは、油脂分解微生物製剤を用いた排水の処理や、新規微生物関連の技術開発を行う、名古屋大学発のベンチャー企業。 比較的大規模な工場や、事業所、レストランからの排水や、生活排水など、水質を汚染したり、下水管を詰まらせたりする動植物の油脂を含む排水の処理業務を行う。微生物製剤と微生物分解法による同社の技術は、コストパフォーマンスが高く、従来技術の欠点を克服し、代替・補完し得るとして期待されている。 有用微生物を環境に投与して環境保全や衛生化を図るバイオコントロールの新理論に基づき、広範囲な環境関連技術の研究開発を続け、環境問題の解決の道筋の一つをつけていく。

代表者名蟹江純一
設立日2017年6月13日
住所愛知県名古屋市千種区千種2丁目22番8号名古屋医工連携インキュベータ104
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