MiRESSOが18.3億円調達、BETAパイロットプラントの建設を加速──2027年度に量産開始へ

MiRESSOが18.3億円調達、BETAパイロットプラントの建設を加速──2027年度に量産開始へ

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ベリリウムの精製技術を基軸に、エネルギー転換時代のサプライチェーン課題に取り組む株式会社MiRESSOが、2025年8月にシリーズAラウンドで18.3億円の資金調達を実施した。創業から2年余りでの累計調達額は補助金を含め約42.8億円となった。今回の出資には、Spiral Capital、大平洋金属、ジェネシア・ベンチャーズが参加している。調達した資金は、パイロットプラント「BETA」の建設やベリリウムの国産化、安定供給体制の整備に充てられる。

MiRESSOは、希少金属のサプライチェーン強化を事業の軸としている。主な事業は、難溶解性鉱石からのベリリウム精製および、独自の低温精製技術を応用した他素材の精製・リサイクル事業である。従来、ベリリウムの精製には2000℃近い高温が必要だったが、MiRESSOは量子科学技術研究開発機構(QST)で培われた技術を応用し、300℃以下の常圧で精製する手法を開発した。これにより、エネルギーコストと環境負荷の低減が見込まれている。

ベリリウムは、核融合炉の中性子増倍材として不可欠な素材である。核融合技術の商業化が世界的に進む中、ベリリウムの安定調達はエネルギー政策上の重要課題となっている。核融合炉1基あたりに必要なベリリウム量は、現在の世界年間生産量(推定約300トン)を上回るケースもあり、供給制約と価格リスクが顕在化している。米国がベリリウムの最大生産地であり、他地域の供給体制は限定的である。原料鉱石からの精製には多大なエネルギーを要するため、国内製造は高温工程がCO₂を多く排出しているという課題があった。

設立は2023年5月。代表取締役CEO中道勝氏は工学博士で、日本原子力研究開発機構やQSTで長年、核融合ブランケット材料開発に従事した経歴を持つ。創業時にはQSTでの研究知見を応用し、ベリリウム供給の課題解決を目指した。共同創業メンバーには、技術開発、事業戦略、エネルギー商材の調達など多様な分野の人材が名を連ねる。

エネルギー業界では、脱炭素化の要請とエネルギー安定供給の両面から、次世代電源として核融合技術への期待が高まっている。核融合は従来型原子力発電と異なり、メルトダウンリスクが低く、高レベル放射性廃棄物もほとんど発生しない発電方式とされる。ただし、運転には極めて高い技術水準と適切な素材の確保が求められる。

MiRESSOは2024年10月に大平洋金属と包括的業務提携を締結し、同社工場内に約300㎡規模のパイロットプラント「BETA」を建設している。今回の資金調達はBETAの建設費や2027年度中の生産開始に向けた投資に充てられる予定である。さらに、2030年代初頭には年間約100トン規模の量産体制を確立する計画を掲げている。これは核融合分野での需要拡大に合わせたものだ。

また、文部科学省の中小企業イノベーション創出推進事業(SB2IRフェーズ3)による助成金20億円の採択や、国内外の技術評価制度への選出、2025年3月のEY Innovative Startup 2025認定など、官民連携による支援や評価も進展している。核融合炉向け素材開発を手がける他のスタートアップや、大手重工メーカーとの協業も始まっている。

この分野では、英国や米国で同様のビジネスモデルを展開する素材系スタートアップが資金調達を強化している。米国FIA(Fusion Industry Association)の調査によれば、2024年には核融合関連サプライチェーンへの投資が全世界で約4億ドルに達した。核融合炉の商用化を見据え、素材確保や加工技術の開発競争が国際的に活発化している。

MiRESSOは、今後BETAパイロットプラントの安定稼働を最優先課題とし、低温精製プラットフォーム技術の他鉱物分野への展開や新規事業の構築も視野に入れると説明している。国内の核融合関連産業エコシステムの中で、ベリリウムの安定供給体制確立が一つのマイルストーンとなる。核融合炉の産業化や大型商業炉建設の進展に伴い、グローバルサプライチェーンにおける日本発スタートアップの動向が注目されている。

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