風力発電機メンテナンスロボットの開発とロボットを活用したスマートメンテナンスサービスを提供するLEBO ROBOTICS株式会社がシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Abies Ventures Fund、三井住友海上キャピタル、KDDIなど。
今回の資金調達により、さらなるロボット開発の促進と欧米での事業展開の加速を目指す。
メンテナンスロボットで人手不足を解消
LEBO ROBOTICSは風車オーナー向けに、自社ロボットを用いた風力発電機のブレードの点検・補修サービスを提供している。
風力発電機の羽根の部分であるブレードを、メンテナンスロボットにより撮影・点検を実施し、必要に応じてロボットを用いた補修作業を行う。従来、人が行っていた高所作業の一部をロボットで代替することにより、人手不足の解消やメンテナンスコストの削減が可能となる。ロボットを通じたサービスに限らず、風力発電機のメンテナンスに必要な補修材料も自社開発している。
同社は既に、大手発電事業者が保有する合計73基の風力発電機向けに、点検サービスを提供している。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 浜村 圭太郎氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
増加する風力発電機の維持コスト
―― 日本における風力発電に関して、どのような課題がありますか。
浜村氏:再生可能エネルギーの一つである風力発電には世界中で注目が集まっており、日本でも2030年に風力発電機の数は現在の3倍になるといわれています。しかし、建設業界全体で人手が不足しているうえに、風力発電機のメンテナンスには専門的な知識が必要です。そのため、風力発電機のメンテナンスに関わる人手の不足は、喫緊に解決していくべき課題といえます。
また風力発電機の事故原因の中でも、ブレード部分は事故・故障原因として約10%を占めており、トップ3に入ります。ブレードのメンテナンスにおいては、危険な高所作業で特に人手が不足し、メンテナンスコストが高騰している現状に加え、正常にメンテナンスを行わないと、結果的に発電ロスが生じて売上が下がるという問題があります。
一方で、風力発電機の中でもメンテナンス作業を切り分けやすいという特徴があるため、当社はブレードのメンテナンスに着目しています。
日本は地理的条件により、欧米諸国に比べて風力発電機の建設が難しい側面もあるため、現存する風力発電機の保守が重要になってくると考えています。
―― 風力発電機の点検・補修ロボットの開発を始めようと思ったきっかけを教えてください。
元々、豊田通商で、20年間化学品の貿易に携わっていました。その中で、風力発電機の補修材を販売していた時期があり、風力発電機の補修方法について説明する立場でした。当時は中国をはじめとしたアジア地域の経済発展が進んでいる一方で、環境破壊が目に見える形で進行していました。
再生可能エネルギーの利用を促進すれば環境保護の一環になるのではないかと考えた際に、風力発電機のメンテナンスの一部を、人間でなくロボットが行うほうが安全で早く作業ができると考え、ロボットの開発を始めました。
当初は国内の機械メーカーを20社ほど回りましたが、ロボット開発に協力していただける企業になかなか出会えない苦労もありました。そうした中で、竹囲先生(国立弘前大学 助教)との出会いをきっかけに、ロボットの設計や実証を行ってきました。
世界で認められるソリューションに
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
前回の調達資金は、主に補修ロボットの開発に充当しました。今回の調達資金は、補修ロボットの商業化に向けた開発や採用、欧米への事業拡大に用いる資金として考えています。
補修ロボットの基本的な設計はある程度完成しているため、事業として展開していくフェーズに入っています。引き続き、さらなるロボット開発が重要ですので、主に技術開発のエンジニア採用を進めています。全体では、現在8名の人員を16名ほどにまで拡大したいと考えています。
―― 今後の展望を教えてください。
短期的には、欧米の市場をしっかりと開拓していき、2026年には、全世界で年間1万基の風力発電機に点検・補修のサービスを提供することを目標としています。技術的には、補修ロボットの自動制御化に向けた開発を進めており、ブレードへの塗装や保護フィルムを貼るなど、付加価値を出せるサービスも提供していこうと考えています。
また、風力発電機に関する、さまざまなデータを活用したサービスも開発予定です。建設環境や運用期間により、風力発電機がどの程度のダメージを受けるのか分析し、メンテナンスのタイミングを最適化するといったデータ活用は、ヨーロッパで非常に注目されています。当社が点検・補修サービスを提供する中で得られるデータは、こうした流れの中で非常に有用だと考えています。
長期的には欧米に限らず、南米やアジア、アフリカにも展開していきます。また高所作業ロボットという点では、風力発電機に限らず、ダムなどのインフラ設備等への横展開を行うことで、人手不足やメンテナンスコストの削減に寄与していくことを目指します。
LEBO ROBOTICS株式会社
LEBO ROBOTICS株式会社は、風力発電機のメンテナンスロボットの開発およびサービス・商品の販売を行う企業。 地上から操作し、風力発電機のブレード近接画像の撮影と、落雷対策の導通(どうつう)確認などの高所作業を行うブレードメンテナンスロボットを開発する。 また、ブレード保護用の高耐久性塗料や、着氷対策用高撥水(はっすい)性塗料、曲面に密着するフレキシブルヒートマットなど速乾性・作業性・安全性に優れたブレードの補修材を販売。 さらに、地上カメラで撮影したブレードの映像を AI とプロが分析するブレード AI 分析サービスも提供している。
代表者名 | 浜村圭太郎 |
設立日 | 2018年11月7日 |
住所 | 東京都杉並区松庵2丁目16番5号 |