創造力に国境はいらない、TRiCERAが創る現代アートの交差点

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KEPPLE編集部

現代アートのマーケットプレイスを運営する株式会社TRiCERAが、大日本印刷株式会社と資本業務提携を実施したことを明らかにした。

同社が運営する「TRiCERA ART」は、アーティストによる絵画や写真、彫刻を扱うオンラインマーケットプレイスだ。アーティストはTRiCERA ARTに作品を出品し、世界中に販売することができる。サービス上にアーティストや作品の情報を蓄積することで、ユーザーは好みのアートを簡単に見つけて購入できる点が特徴だ。
サービスイメージ
2019年3月にサービスをリリースし、登録アーティスト数は8000名以上、出品作品数は8万4000点を超える。126ヶ国以上のアーティストがTRiCERA ART上で作品を出品しており、同サービスにおける海外売り上げは約24%と、グローバルにビジネスを展開している。

また、同社はオンラインだけでなくオフラインでもアーティストを支援している。アーティストによる自社ギャラリーでの展示を通じて、アート作品と購入者のタッチポイントを増やしている。

今回の資本業務提携に際して、代表取締役CEO 井口 泰氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

誰もが参加しやすい仕組みづくりが必要

―― これまで、アート業界にはどのような課題がありましたか?

井口氏:インスタグラムなどのSNSの普及をきっかけに、アート作品の購入は増加しています。30代や40代の人を中心にアートへの関心が高まり、若手作家による作品価格が高騰しているというニュースもあり、現代アートのブームが到来しているといえます。
マーケットの成長
こうした状況ですが、アート業界には大きく3つの問題があります。アートの流通と流動性、価格に関する問題です。流通について、現在はアート作品の流通ルートは大きく二つ、プライマリー市場(一次市場)とセカンダリー市場(二次市場)に分けられます。アート作品が流通するにはまずプライマリー市場で作品を販売する必要がありますが、プライマリー市場はギャラリーや展示会など、物理的な場所での販売が主で、選択肢が地理的に限定されています。これは特に若手アーティストにとって大きな問題で、オンラインマーケットを活用して流通のインフラを整え、作品を海外マーケットにまで流通させることが重要です。

次に流動性についてです。現在では高額なアート作品の流動性はオークションハウスなどに限定されており、作品の価値を現金化できるのは一部の手段に限られてしまっています。この流動性の問題を解決し、アート作品のセカンダリーマーケットを活性化させることで、プライマリー市場におけるアート作品への購買意欲を刺激し、市場全体の活性化にもつながります。
アート業界の課題
そして最後に価格についてですが、アート作品の価格設定は非常に難しい問題となっています。作品の価格が作家の人気や認知度、そして作品自体の質に依存するため、その価格が妥当なのかを判断することが難しいのです。オンラインのマーケットプレイスで取引が行われることで、どの作家の作品がどのように価格があがっていったかなどのデータが蓄積されます。データをもとにして、相場感や作品価格の基準を作り出すことができると考えています。

またセカンダリー市場の取引に関しては、リセールにおいてアーティストが介在しないため、アーティストの収入源にはならないケースが多いです。ヨーロッパでは再販売の取引に対して、数%の手数料がアーティストに還元される仕組みもありますが、主要なマーケットであるアメリカや中国、日本には根付いていません。そのためTRiCERA ARTではリセールの機能があり、特定の条件下においてアーティストに成約価格の5%を支払うようにしています。

スタートアップスカウト

アートをもっと身近に

―― 創業のきっかけを教えてください。

以前、ナイキに在籍していた際に訪れたポートランドは、日本と比べてもとてもアートが身近でした。その中で驚いたのが、現地のアートフェアで日本のアートとして展示されていたのが葛飾北斎の絵だったんです。日本のアニメや漫画は海外で非常に有名で、アートに関しても国際的に著名な日本人アーティストもいますが、日本のアートは漫画やアニメほどの認知度がないことを知りました。

実は中学生頃まで役者をしており、挫折を経験しています。同じ表現者として、芸術や美術を続ける人たちはすごいと心から思っているんです。元々起業をするつもりはなかったんですが、ポートランドの経験について周囲の人と会話する中で後押しがあり、TRiCERAを創業しました。

―― TRiCERA ARTを開始してからのユーザーの反応について教えてください。

リリース当初はユーザーも数名と少なく、登録アーティストも自分で口説いた120名程度のみで、作品が数枚売れるかどうかという状態でした。コロナ禍でアーティスト登録を増やす施策に取り組んだ結果ユーザーも増え、TRiCERA ARTの価値を実感しました。また、非常に手ごたえを感じているのは、作品を購入したユーザーから、感謝のメールがたくさん届くことです。その人にぴったりの作品をサービス上で提案していることには非常に喜んでいただけており、アートに対するこうした感情を生み出しているのは非常に大きな価値だと思っています。

アート作品はイノベーションの源

―― 資本業務提携の背景について教えてください。

我々のビジネスを拡大し、アーティストのキャリアを支援するエコシステムを構築します。さらに市場の流動性を高めるために、アートの裾野を広げたいと考えています。日本を代表する大日本印刷の印刷技術と融合することで、マス層に対してさらにアートを広げていくことを目的に資本業務提携を行いました。

また、アーティストの収入源を増やすための取り組みも提携の目的の一つです。アート業界には、著作権を厳格に管理するような団体はありません。アート作品の著作権を管理して活用することで、アーティストの収入源とすることができます。大日本印刷はIPの管理にも知見があり、共同で取り組んでいきます。

―― 今後の展望を教えてください。

大日本印刷との協業を進めると同時に、セカンダリー市場の取引に関する取り組みを強化します。TRiCERA ARTの提供価値をブラッシュアップしていきながら、アジアを中心とした海外のマーケットシェアを高め、海外からの売上比率を75%程度にしていきます。3年から5年以内には、TRiCERA ARTの登録アーティストは10万人規模、出品数は200万点以上になるよう事業展開を行います。さらにアーティストに対するマネジメントやキャリア、著作権活用などを通じた支援を強化し、アーティストが自身のキャリアを成長させることのできるエコシステムを形成していきます。

一流のアートは人の心を動かすことができます。現在の技術革新が数十年前のSF小説をベースにしているように、人は刺激を受けることで新しいものを生み出してきました。人の想像力の産物が生活をより豊かにするため、こうした刺激がない世界は発展しません。アートはなくても困らないという考えもありますが、アート作品が人の心をインスパイアして新たなイノベーションを創出すると私は考えています。当社は「創造力に国境なんてない」という言葉をスローガンとしています。世界中の子どもたちの将来なりたい職業としてアーティストが上位に入り、国境や性別など、あらゆる障壁を超えて創造力が発揮される世界を目指していきます。

株式会社TRiCERA

株式会社TRiCERAは、アートマーケットプレイス『TRiCERA ART』・アートニュースサイト『ARTCLiP』を開発・運営する企業。 『TRiCERA ART』は、絵画・写真・彫刻の売買ができるオンラインギャラリー。同サービスは、風景画や人物画など多様なカテゴリーから選択してオンライン上で売却できる。検品や梱包などの作業を代行するほか、査定サービスなどが利用可能。 『ARTCLiP』は、世界のアートニュースを取り上げ発信するサイト。同サイトは、絵画や写真などの多様なカテゴリーがあるほか、アート作品の売買についての案内が閲覧できる。

代表者名井口泰
設立日2018年11月1日
住所東京都港区西麻布4丁目2番4号TheWall3F
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