株式会社エイジレス

中高年層向けのIT人材キャリア支援サービスを展開するスタートアップ、株式会社エイジレスが、シリーズAラウンドで5.6億円の資金調達を実施した。今回の第三者割当増資にはDBJキャピタル、Skyland Ventures、きらぼしキャピタル、ユナイテッドなどの機関投資家や大手企業関係者が参加し、累計調達額は6.7億円となった。
エイジレスは2021年に設立。主に40代から70代のミドル・シニア層を対象としたIT人材の転職・フリーランスマッチング、業務委託紹介、ダイレクトリクルーティング、営業顧問マッチングなど多様な人材サービスを提供している。プロジェクトマネジャーやSIer、ITコンサルタント、エンジニアなどを中心にキャリア支援を行い、「エイジレスフリーランス」「エイジレスエージェント」などの新サービスも展開。国内大手IT企業への人材紹介実績も増加している。
同社サービスの登録者の9割以上は40~60代で、成約者(転職・案件参画)は5割を超えて60代以上が占める。年齢を理由に選考から排除しない方針や、月100万円級の案件を多く取り扱う点が特徴となっている。IT業界では人手不足が深刻化しており、2023年時点でITエンジニアの求人倍率は10.07倍と高水準を維持している(doda調べ)。また経済産業省の「2025年の崖」レポートでは、IT人材不足による経済損失や中高年エンジニアの再活用の必要性が指摘されている。エイジレスはこうした課題に対し、ミドル・シニア層の知見活用に焦点を当てている。
代表取締役の小出孝雄氏は、大手企業における取締役の経験を経て、年齢によるキャリア断絶の課題に直面したことから2021年にエイジレスを設立した。共同創業者には、複数社の起業・売却経験を持つズッカーマン励司氏、エンジニアリングやデジタルマーケティング、事業売却等で実績を有する網頭翔真氏が名を連ねている。経営陣は多様なバックグラウンドを持ち、異業種出身者やシニア層を積極的に取り込む体制が特徴である。事業部リーダーには通信・マーケティング会社などで経験を積み、30代後半から未経験で業界へ転身した縣亜未氏が加わるなど、多彩な人材が経営を支えている。
日本のIT人材市場は、少子高齢化を背景に人材不足が継続しており、NEC総研の推計では2030年に最大で約79万人のIT人材が不足するとされる。一般的な人材紹介エージェントが若年層を中心にサービス展開する中、40代以上に特化した支援を行うプレーヤーは限られている。こうした市場環境の中、エイジレスはミドル・シニア層を対象とすることで差別化を図っている。登録者の選考通過率や転職成功率は利用者から高く評価されており、IndeedやGoogleでの満足度も高い水準を示している。
エイジレスは、短期的なIT人材不足と長期的な高齢化・多様就労化という二つの市場動向の両面を捉え、サービス拡充や新規事業開発を進めている。サービス取扱数や成約実績も拡大傾向にあり、2025年8月にはスタートアップ企業が集積する西五反田エリアへのオフィス移転した。
今回の資金調達により、広告投下の強化、組織拡大、経営幹部ポジションを含む人材獲得など体制の拡充を進める方針を示している。IT業界における人材確保とキャリアの多様化が進む中、ミドル・シニア層の活躍を支えるサービスの成長により、業界構造にも一定の変化がもたらされている。