PathAhead、砂漠の砂を活用した高耐久道路素材をアフリカへ 

PathAhead、砂漠の砂を活用した高耐久道路素材をアフリカへ 

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未利用資源である「砂漠の砂」を活用し、道路等の材料となる人工の骨材を開発するPathAhead株式会社の設立会見が、2026年3月31日に開催された。同社は人工骨材「Rising Sand(ライジング サンド)」を開発しており、アフリカ地域における慢性的な道路インフラの課題に対して素材面からのアプローチを試みる。設立と同時に、インキュベイトファンドおよびサイバーエージェント・キャピタルからの出資を受けたと公表した。

同社がCIA「The World Factbook」をもとに独自試算したデータではアフリカ地域の道路舗装率は約20%と低水準にとどまっており、道路インフラ不足は物流コストの上昇や経済成長の制約要因となっている。同社の代表取締役CEO 伊賀 将之 氏は、「(ケニアの)主要幹線道路も劣化により凹凸が目立ち、渋滞が起きることで輸送コストが上昇している。アフリカをはじめとする開発途上国の道路は非常に寿命が短く、道路開発しても1年で劣化してしまうケースもある」と、自身の渡航時の体験も踏まえながら語る。

この問題の根本には、骨材の品質のばらつきがあると同氏はみている。一般的にアスファルトの約95%(重量比)は骨材で構成されており、大小の骨材が適切な配合で噛み合うことで耐荷重構造が成立する。しかし、採掘された石や川砂などの天然骨材は産地や地層によって品質に差があり、安定した強度を確保しにくいという課題がある。一方、既存の人工骨材は品質を制御しやすく、ものによって高耐久であるが製造コストが高くつく。これら既存骨材の課題を踏まえ、「低コスト」かつ「均質」「高耐久」の人工骨材の供給を目指すのがPathAheadだ。

砂漠に広く分布する砂は100μm程度の微細な球状粒子であり、そのままでは骨材として機能しないが、PathAheadは、この砂漠の砂を独自の造粒技術によって数十mm単位の人工骨材へと加工する技術を開発した。これが「Rising Sand」であり、同社は世界初の砂漠砂由来人工骨材として打ち出している。日本の良質な天然骨材と比較して2.5倍以上の耐久値を記録しており、一般的な天然骨材を用いた道路の耐久年数が約10年とされる中、20年以上の耐久年数を見込めるとしている(同社耐久試験の結果による)。未利用資源である砂漠の砂を活用することで、天然骨材と比較しライフサイクルコストを約60%に抑えられると試算する。

Rising Sand (画像は同社プレスリリースより)
Rising Sand (画像は同社プレスリリースより)

伊賀将之氏は、2012年に本田技術研究所に入社し、10年以上にわたって四輪車のボディ金属材料研究開発に従事してきた。2023年の材料研究センター設立を機に、自動車以外の用途に向けた新材料研究をスタート。社員同士の議論を通じて、「(すでに土木資材として利用されている川砂などの)砂がこれから不足するのではないか」という問題意識と「(未利用資源である)砂漠の砂を利活用する技術」のアイデアが交差し、砂漠の砂を道路素材に転換するという着想に至ったという。「Hondaでは四輪の材料研究開発やモビリティの基礎研究に取り組んできた。そうした経験を通じて培った技術とロジックの組み立て方を、スピード感をもって社会課題の解決に直接つなげたいという思いから、PathAheadを創業した」と伊賀氏は述べる。本田技研工業の新事業創出プログラム「IGNITION」への参加後、伊賀氏は自ら現地に赴き、人生初の営業もケニアで経験した。「外に出て、いろいろな人と話さないとダメだということ。自分が出会ったことのない、思ってもいないところから助っ人が現れるということを、IGNITIONを通じて学べた」と伊賀氏は振り返る。

道路舗装に不可欠な建設用砂は世界的に不足が深刻化しており、河川・山岳からの採取が環境負荷の観点からも制約を受けつつある。こうした中でPathAheadが目指すのは、需要地のアフリカで砂漠の砂を原材料として調達し、現地生産を行う地産地消モデルだ。

2027年よりケニアを皮切りに、タンザニア、南アフリカの順で約3年間の道路舗装実証実験を計画している。現地の気候・交通条件下での施工性・耐久性・品質再現性を検証し、2028年にはケニアに自社工場を設立して量産を開始、建設事業者への安定供給体制の構築を目指す。ケニア都市道路局とは実証実験に向けたMoUを締結済みで、地元ゼネコンからも導入に前向きな声が上がっているという。2034年には売上430億円規模までの成長を狙い、将来的には砂漠を有する中東や中央アジアなど、アフリカ以外の市場への展開も視野に入れる。

「 “Barabara nzuri maisha nzuri (道が良くなれば人生が良くなる)”というスワヒリ語のことわざをケニアで教えてもらったが、まさに国づくりやまちづくりの起点は道にある。道ができて、水インフラができて、病院や学校や工場ができて、人々の生活が向上していく──その基盤になるのがこの材料(Rising Sand)だと思っている」と、伊賀氏は熱く語る。

未利用資源・砂漠の砂を活用した高耐久の道路を世界中に広げていくことができるか、同社の今後の取り組みに期待だ。

※骨材:コンクリートやアスファルトに混ぜる粒状の材料。一般的に川砂などの天然の砂利や砕石のほか、人工素材によるものがある。

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