株式会社Univearth

物流DXプラットフォームを開発する株式会社Univearthが、第三者割当増資による総額3.6億円の資金調達を実施した。今回のプレシリーズAラウンドによって累計調達額は5.36億円となる。
Univearthは2019年2月の設立。運送会社向けSaaSの「LIFTI carriers」と荷主企業向けの「LIFTI partners」を柱とし、物流取引や配車、請求、配送ステータス管理をデジタル化するプラットフォームを展開している。従来、FAXや紙伝票に依存していた運送現場の業務を一元化・自動化し、業務負担の軽減や効率化を図ることを目的としている。
2025年4月には岡山県の運送会社・智商運輸をM&Aで傘下に収め、7月には冷蔵・冷凍輸送に強みを持つ三之丸通商をグループ化した。これにより、全国規模で常温・冷蔵・冷凍の多温度帯輸送に対応できるネットワークが形成されている。こうしたM&A戦略は、単なるSaaS提供にとどまらず、実輸送業務を自社で統合することで、システムと現場ノウハウの双方を蓄積する点が特徴だ。
自社運送サービス「LIFTI line」も展開しており、SaaS基盤と現場の運送業務を組み合わせることで、車両手配のオンライン化や受領書・請求書の自動発行、配送状況の可視化、セキュリティ対応などを実現している。荷主企業にとっては、業務効率と品質の両面で安定したサービス利用が可能となる。
代表取締役の谷口臨太朗氏は、父の影響で18歳から写真家として活動。その後トレーラー運転手に転じて全国を走り、物流業界の課題と可能性を実感。業界をより良くしたいとの思いから、Univearthを創業した。
物流業界では、2024年問題(ドライバーの時間外労働規制強化)への対応が急務となる中、深刻なドライバー不足が見込まれている。加えて、業界の高齢化や人材確保の難しさ、小口配送ニーズの増加、原油価格や人件費の高騰など、構造的な課題が山積している。日本国内の運送事業者多数が小規模企業であり、十分なシステム投資が困難なケースが多い。こうした状況下で、現場のアナログ文化や非効率な業務プロセスが依然として根強く残っている。
物流向けSaaSの競合にはラクスル(ハコベル)、MOVO(Hacobu)、トランコムなどがあるが、Univearthは自社による実運送会社のM&Aと一体運営を強みとしている。SaaSプロダクトの提供だけでなく、実際の輸送現場まで自社でカバーする事業モデルは、国内外でも多くは見られない。これにより、荷主企業に対しIT会社以上・従来型運送会社以上のサービス水準を提供することが可能となる。特にコールドチェーンや多温度帯物流の分野で、汎用的なサービスにとどまらない価値提供を志向している。
今回の資金調達にはTheta Times、千葉道場ファンド、GREE Venturesなど複数のベンチャーキャピタルや事業会社、個人投資家が参加した。Univearthによると、調達資金はLIFTIプラットフォームの機能拡充、追加の運送会社M&A、組織拡大に向けたエンジニアや営業人材の採用強化に重点投下する方針だ。
物流業界では多重下請け構造や業務プロセスのブラックボックス化が課題とされてきた。Univearthは、荷主と運送会社の関係性をデジタルで可視化し、システムと実運送の両軸による業界バリューチェーンの再構築を進めている。小口配送や冷蔵食品流通など新たな物流ニーズへの対応と、既存プレイヤーとのネットワーク拡大も進行中である。
今後も、ソフトウェアの提供にとどまらず、M&Aによる輸送網の構築を組み合わせることで、荷主企業と運送会社双方の課題を解決し、持続可能な社会インフラの実現を目指すとしている。