Green AI、シリーズAで総額1.2億円調達──AI脱炭素計画で海外展開も加速

Green AI、シリーズAで総額1.2億円調達──AI脱炭素計画で海外展開も加速

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脱炭素経営への対応が企業に求められる中、株式会社Green AIが総額1.2億円の資金調達を実施した。出資には脱炭素化支援機構(JICN)とスパークス・アセット・マネジメントが運営する未来創生3号ファンドが参加している。

Green AIは2023年設立のスタートアップで、AIと独自のデータベースを活用した脱炭素計画策定システム「Green AI」を提供している。企業や自治体がCO2排出削減計画を短時間で自動策定できる点が主な特徴だ。システムの中核には、1700件超(未数式化施策を含めると5000件以上)の脱炭素・省エネ施策が数式化・体系化されたデータベースがあり、各ユーザーの設備情報やエネルギー使用量などの実データと組み合わせて、経済合理性の高い施策の選定や投資対効果の算定が可能となっている。専門的な知識がない担当者でも、最短5~10分で実行可能なロードマップを作成できるとされる。

機能はCO2排出量の可視化にとどまらず、施策選定、進捗管理、効果モニタリング、レポート生成、サプライチェーン全体の排出量(Scope3)への対応までを一括してサポートする。省エネ、再エネ、バイオ燃料、カーボンクレジットなど多様な施策について、コスト削減余地や投資回収年数まで分析できる点も強みだ。

代表取締役CEOの鈴木慎太郎氏は、大学卒業後、三菱商事で米英の石油・ガス資産やシェールオイル開発案件を担当。その後、ボストン・コンサルティング・グループで大手電力会社の火力・水力・送電・燃料プロジェクトに従事。2020年に石筍舎を創業し、AI・AdTechベンチャー、ファンド、大手人材会社のプロジェクトを手がける。2022年にGreenAIを創業した。

国内の脱炭素ソリューション市場では、CO2排出量の算定・可視化サービスが先行して普及してきたが、具体的な削減施策の策定や経済効果の可視化は依然として多くの企業にとって課題となっている。中小企業が脱炭素への取り組みを進める上で「人材・ノウハウ不足」、「排出量算定方法の不明瞭さ」、「資金不足」などが大きな障壁となっている。Green AIは、データベースとAI技術の活用によって、これらの障壁を下げる仕組みの構築を目指している。

同分野には、アスエネやゼロボード、三菱総合研究所などが競合として挙げられる。いずれも脱炭素コンサルティングやSaaS型サービスを展開しているが、施策の数値化・自動組み合わせやScope3への対応、投資対効果の迅速な算定などは、今後の差別化ポイントとなりうる。

今回の資金調達はJ-KISS型新株予約権(日本版SAFE)によるもので、5月の約4100万円の1stクローズに続き、2ndクローズで約1.2億円を調達した。

調達資金は主に、プロダクト開発(開発人材の採用、機能強化、海外仕様への対応)、セールスやカスタマーサクセス部門の体制強化、新規事業やグローバル展開に充てられる予定だ。すでに台湾の政府系シンクタンクとMoUを締結するなど、海外市場への布石も打たれている。

国内では排出量取引制度やSSBJ基準の導入を背景に、製造業を中心に脱炭素計画ニーズが拡大している。Green AIは「可視化から削減実行へ」というシフトを後押しし、企業の経済合理性と環境対応を両立させることを目指す。

さらにシリーズAによる追加調達を計画し、国内導入拡大と海外市場進出の両立を進める方針だ。

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