Tokyo Artisan Intelligence株式会社

こんにちは!ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チームです。今回は、独自のAI技術で人手不足問題の解決に取り組む東北大発ディープテックスタートアップのTokyo Artisan Intelligence株式会社を取材しました!
エッジAIで現場を変える東北大学発スタートアップ
東北大学発のスタートアップ Tokyo Artisan Intelligenceは、現場実装型のエッジAIプロダクトを開発しています。エッジAIとは、ディープラーニングなどを用いたAIアルゴリズムを、クラウドではなく端末側(エッジ)で実行する技術。AI×ものづくり×半導体を一体設計し、人手不足やDXに伴うコスト課題に直接効く仕組みを提供しています。中核のSEASIDEシリーズはFPGA搭載のビジョンAIコンピューティングボックスで、鉄道・製造などの厳しい環境でもクラウドレス、低消費電力で長期安定稼働の実現を目指しています。

今回の動画では、新横浜にある同社オフィスに伺い、代表取締役 / CEO, CTOの中原 啓貴
氏にインタビューしました。同社の開発する独自AI技術の強みや今後の展望などについて詳しくお話いただきました。本記事ではその内容をご紹介します!
AIシステムで人手不足を解消、安定稼働を支える
――事業概要について教えてください。
中原氏:私たちは、AIを活用したコンピュータやシステムの開発を通じて、人手不足の解消や業務自動化に取り組んでいます。特に製造業やインフラ業界では、現場で人力に頼った作業が多く残っています。
たとえば鉄道業界では、保守・点検作業を夜間に人が歩いて行い、電線や線路の状態を目視で確認しています。しかし若年層の就業者は減っており、2030年には労働人口が1割以上減少すると言われています。その一方で、賃金は20年で1.5倍上昇すると予想されています。
こうした状況の中、企業は人手を確保することが難しくなってきており、私たちは現場のニーズをヒアリングした上で、人の作業を代替できるAIシステムをゼロから開発・提供しています。
最近では顧客の要望も多様化しています。たとえば鉄道業では、以前は線路の状態だけを確認するAIでよかったものが、現在では電線や電柱、さらには前方の安全確認まで一括で行いたいというニーズが増えています。そのため、1台のAI搭載コンピュータに必要なソフトウェアが5〜6個から30個近くに増えるケースもあります。
しかし、処理内容が増えると発熱や故障のリスクも高まります。そこで私たちは、東北大学と連携しながら熱対策を含めたハードウェア技術の開発にも取り組み、それを製品に活かしています。

――導入が進む業界や現場は?
最初に導入してくださったのは鉄道業界で、JR九州さんとの取り組みから始まり、現在ではJR東日本さんとも連携しています。さらに、この2社とは資本業務提携を結び、展開を拡大しているところです。加えて、他のJRさんや私鉄さんとも契約が進んでおり、鉄道業界全体へ広がっています。
また、製造業やインフラ領域でも導入が進んでいます。これらの業界では、従来は人の手によって行われていた作業が多く、人手不足の影響を大きく受けています。ある製造業では、ロボットメーカーと連携し、AIとロボットを組み合わせて完全自動化を進めている事例もあります。
さらに、インフラ分野では道路工事の現場、流通分野ではスーパーマーケットでの食品検査にも活用が広がっています。従来、人が目視で行っていた検査作業を、AIとカメラを組み合わせて自動化と簡略化に貢献しています。
鉄道から広がる実装力、製造・インフラへ挑む
――開発技術の強みや特長は?
最初にプロダクトを作って売るのではなく、お客さまの課題を徹底的に聞き、そのニーズに応じて開発を進めてきました。私たちの強みは大きく2つあります。
1つ目は 「ニューラルネットワーク圧縮技術」 です。AI専用チップは処理の負荷で非常に高温になり、熱が原因ですぐに故障してしまいます。この課題を解決するために、私たちはAIの無駄な計算を省く技術を開発しています。
人間の神経回路に例えると、子どもの頃は神経が過剰につながり膨大なエネルギーを消費しますが、大人になると不要な神経が整理され、効率的に動けるようになります。AIも同じで、すべてを正確に計算しなくても7〜8割の処理は省略して問題ないとされています。私たちは、その「削ってよい部分」を見極めて取り除く専用プログラムを開発し、それを半導体チップに実装。現場で使えるAIコンピュータとして製品化しているのが大きな特徴です。
2つ目は 「壊れにくくする技術」 です。AIを鉄道や工場といった現場に導入する際、コンピュータは水分・ほこり・振動などで壊れやすいという課題があります。そこで弊社は、振動試験など複数の厳しい試験を突破できる壊れにくい設計を行い、現場でも安定して動作する組み込みコンピュータを開発しています。
この2つの技術を組み合わせることで、AIを現場に導入しても実用的に使えるコンピュータを提供できる点が大きな強みです。
さらに現在、海外から高価に調達している半導体チップを自社で開発し始めています。これにより小型化と省電力化が可能になり、将来的にはチップそのものを販売することで、日本発のNVIDIAのような展開を目指しています。

日本発のAI半導体事業を目指す
――今後の展望は?
お客様のご要望に応えるためには、多数のAIソフトを組み込む必要があります。しかし、そのままでは熱が原因でコンピュータが壊れてしまいます。そこで私たちは、無駄をさらに削りAI処理を効率化することで、発熱の問題を解決できる独自の FPGA半導体チップ の開発を進めています。
このFPGAチップはAI向けにカスタマイズが可能で、省電力化・小型化によって生成AIなど幅広い応用が期待できます。現在は試作段階にあり、鉄道の点検車両や駅の安全監視など実証を進めています。
将来的には通信や工場制御など他分野への展開も見据えています。半導体チップはすでに1兆円規模のマーケットがありますので、弊社は今後、AI半導体事業を拡大していく計画です。
動画では採用情報についてもメッセージをご紹介!
同社は、現在積極的に採用活動を行っているということで、代表の中原氏より最後に採用に関するメッセージも伺っています。ぜひ動画でご視聴ください!
「スタセン!」では今後も注目スタートアップを取材していきます。次回もぜひお楽しみに!
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「スタセン!」制作チーム
「スタセン!」制作チーム
ケップルが運営するYouTubeチャンネル「スタセン!(スタートアップ潜入チャンネル)」制作チーム。注目スタートアップ企業に潜入取材し、その開発技術やサービス、企業の魅力を紹介する。
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