大企業を凌ぐ規模に拡大、就労者数が示す国内スタートアップエコシステムの存在感

大企業を凌ぐ規模に拡大、就労者数が示す国内スタートアップエコシステムの存在感

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KEPPLE編集部

近年、政府によるスタートアップ支援施策の後押しもあり、事業会社やベンチャーキャピタル(以下、VC)によるスタートアップ投資金額が増加している。日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)によると、2022年度の国内スタートアップの資金調達額は8774億円となり、この10年間で10倍以上に成長を遂げた。さらに、岸田政権は2022年11月に策定した「スタートアップ育成5カ年計画」において、スタートアップへの投資額を2027年度までの5年間で10倍超に拡大するとの目標を打ち出した。

スタートアップへの投資金額が増えれば、当然その雇用も増加するはずだが、これまで日本においては金額や件数に注目が集まり、就労者数についてはあまり語られてこなかった。その理由のひとつに、スタートアップの定義の難しさが挙げられる。しかし、就労者数もスタートアップエコシステムの発展の度合いを測る方法として、重要な指標のひとつとなるのではないだろうか。

ケップルはこのたび、独自のスタートアップデータベース「KEPPLE DB」の情報を基に、スタートアップの定義を検討し、集計した国内スタートアップ就労人口調査結果を、国内スタートアップ企業の従業員数ランキングとともに発表した。本記事ではその内容について紹介する。

<関連リリース>
【ケップルスタートアップ就労人口調査】新たな指標として、国内スタートアップ就労人口と従業員数ランキングを公開!

スタートアップエコシステムの新たな指標

先述の通り、スタートアップへの投資金額が拡大する中で、調達した資金の主な使途としては、事業拡大に向けた人材の獲得や社員の報酬に充てられるケースが多い。実際に、スタートアップの平均年収が上場企業を上回るといったニュースも出ている状況だ。(スタートアップ、平均年収700万円超え 上場企業上回る – 日本経済新聞)それでは、実際の就労人口はどのようになっているのか。

ケップルは昨年より、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」に月次のスタートアップ従業員数の推移を確認できる機能を追加した。

そして今回、それら情報を基に、「国内スタートアップ就労人口」の集計に至った。分かりやすい指標を作ることでスタートアップを知るきっかけにつなげること、また雇用創出やイノベーションを測る指標になることを目指している。

集計する上での考え方

今回の集計対象は、「東証グロース(旧:マザーズ)に上場したことがある企業」と「VCから出資を受けた未上場企業」とし、その合計をスタートアップ就労人口として算出した。

スタートアップ就労人口に上場したことがある企業を加えた理由は、日本のIPO要件が緩く、多くの新興企業がまだ小規模なうちに上場するためだ。上場企業の中では、東証グロースに着目した。東証グロースの前身であるマザーズ市場は、成長性が見込まれる企業に、資金調達の場を提供するという目的のもと、1999年に開設された。マザーズでの上場を認められたということは、スタートアップとして認定されたことと近い意味を持つと考えている。

未上場企業の選定にあたっては、「上場や企業売却など、EXITの意思があるか」を重視した。一般的に、VCから調達を受けたスタートアップはEXITを目標とするため、高い成長を目指すと考えられるからだ。

農林漁業従事者に迫る、スタートアップ就労人口

2023年度末時点において、国内スタートアップの就労人口は402,541人(4,504社が集計対象)となった。総務省・経済産業省の産業大分類で見ると、農林漁業の従事者数は約46万人に近い規模と言える。上場企業の中では、従業員数(連結ベース)が最も多いトヨタ自動車株式会社の約38万人を上回る規模となっている。1社あたりの従業員数の平均値は89人、中央値は19人であった。

従業員数1000名を超える未上場企業は4社

今回、発表した3種の従業員数ランキングの中で、本記事ではVCから出資を受けた未上場企業の従業員数ランキングを紹介する。

上位10社は以下となっており、スタートアップ就労人口の約5%を占めている。株式会社ビズリーチなど、親会社が上場企業であってもその会社が未上場企業の場合は、こちらのランキングに含める。


第1位は、就職・採用支援の株式会社ネオキャリア(7,597人)であった。同社は、87拠点で60の事業を展開する。事業の幅広さや人材サービスを展開していることで従業員数が多くなっているものと思われる。売上は506億円(2022年)であり、上場していても違和感のない規模だ。同社の一部門であったHRTech事業のクラウドサービスのjinjer株式会社を2021年に分社化するなど、事業の入れ替えを定期的に行っている。

第2位は、障がい者グループホームのソーシャルインクルー株式会社(3,268人)だ。障がい者グループホームとは、障がい者が支援を受けながら、アパートなどで共同生活を行うものであり、同社では障がい者の生活をサポートする方が多く勤務しているものと思われる。同社は2017年に創業し、235施設(2023年11月末時点)を展開する。

第3位は、ICTソリューションのキューアンドエー株式会社(1,380人)であった。コンタクトセンターサービス、BPOサービス、フィールドサポートサービスなど、顧客企業のバックオフィス業務における人手不足を解消していると考えられる。2013年にNECネッツエスアイ株式会社が同社を子会社化した。なお、第9位の株式会社ユーザベースは、2022年10月に法人登記した企業を指す(2023年2月に上場廃止した企業を、2023年7月に吸収合併)。

さらに拡大が期待されるスタートアップ就労人口

今回の調査では、40万人を上回る就労者がスタートアップビジネスに従事していることが明らかになった。未上場企業においても数千人を超える従業員を抱える事業会社が出てきている。

今後次々と新たな有力スタートアップが生まれてくることで、就労人口もさらに拡大し、ランキングもまた違った顔ぶれが名を連ねてくるだろう。今後の動向からも目が離せない。

なお、本調査結果では、上記内容以外にも「東証グロース(旧:マザーズ)に上場したことがある企業」も含めた2種のランキングを発表している。様々な切り口での就労人口情報に関心のある読者にはぜひご覧いただきたい。

調査結果をダウンロードすることで以下の情報をご覧いただけます。

・国内スタートアップ 従業員数ランキング(上位30社)
・VCから出資を受けた未上場企業 従業員数ランキング(上位30社)
・東証グロース(旧:マザーズ)に上場したことがある企業 従業員数ランキング(上位30社)

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