株式会社Nicoli

SNSメディア「実況ベイビー」を運営するNicoliがシードラウンドにて第三者割当増資による5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Dawn Capital、ANOBAKA、G-STARTUP、笠原 健治氏(MIXI 取締役ファウンダー)。
同社が運営するSNSメディア「実況ベイビー」では、赤ちゃん動画に実況をつけたコンテンツを配信している。SNSの総フォロワー数は75万人、総再生回数は累計10億回を超える。創業したのは、テレビ東京でアナウンサーを務めた原田 修佑氏。今後は海外展開に向けたIPコンテンツの制作に力を入れる。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 原田 修佑氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
赤ちゃん動画×実況 親子向けコンテンツ「実況ベイビー」
―― 実況ベイビーについて教えてください。
原田氏:実況ベイビーは、赤ちゃんの日常の何気ない瞬間に、アナウンサーが実況を加えたコンテンツです。
例えば、掃除に夢中になる赤ちゃんを「一箇所の掃除専門家」として実況したり、双子の赤ちゃんのやりとりをテンポよく解説したりと、赤ちゃんの動きや表情を引き立てる工夫をしています。赤ちゃんのかわいらしさをより面白く伝えながら、親もクスッと笑えるような動画になっています。
「子どもってこんなにかわいいんだ!」と感じていただき、日本全体に育児への前向きな雰囲気を広げ、育児を楽しめる社会づくりに貢献したいと考えています。
実況ベイビーの動画作りでは、赤ちゃんの魅力がより伝わる実況を心がけています。視聴者が共感できるフレーズを選ぶことや、実況によって赤ちゃんの仕草や表情がより際立ち、いつもとは違う視点で楽しめるような表現を選ぶことが重要です。
企業とタイアップした動画制作などを行い、赤ちゃん・親向け商材のマーケティング支援事業も展開しています。集客に強い実況ベイビーを活用し、企業の商品やサービスを赤ちゃんの動画と組み合わせて紹介することで、視聴者に親しみやすく伝えるよう取り組んでいます。

――アナウンサーからの起業と、創業経緯がユニークです。
元々は、テレビ東京でアナウンサーをしていました。コロナ禍の真っ只中、自分自身がアナウンサーとして「シナぷしゅ」という赤ちゃん向け番組でキャラクターの声を担当していたこともあり、育児に触れる機会が少しづつ増えていました。ちょうどその頃に妻が妊娠していたこともあって、子育てというテーマがより身近に感じられるようになったんです。
一方で、当時担当していた経済番組で取材をする中で、コロナ禍の影響もあって、育児の現場にはネガティブな雰囲気が広がっていることも実感しました。産後うつや虐待が取り沙汰され、閉塞感の中で前向きに育児を楽しめない方が多い現状に強い危機感を覚えるようになって。そんな中、少しでも育児を明るくできるようにと、匿名で半分趣味のような形で実況ベイビーを始めたのがきっかけです。

たった数ヶ月の取り組みでも、「育児が報われた」「将来子どもに見せたい」といった声を多くの親御さんからいただきました。育児と並行で経営者に取材をする中で、「エンタメが育児にも大きな影響を与えられる」と、実況ベイビーの可能性を改めて感じるようになったんです。それから本格的に事業として取り組む決意をしました。
目指すは「世界版のEテレ」各国の親子に寄り添うコンテンツを
―― 今回シードラウンドで5000万円の調達となりました。
アナウンサーとして多くの経営者に取材していたとはいえ、起業となると資金調達の実務知識はゼロ。他のスタートアップに話を聞いて回る中で「アクセラレータープログラムに参加してみては?」と勧められ、グロービスのアクセラレータープログラム「G-STARTUP」に参加しました。今回出資してくださった方の多くはそこで出会いましたし、スタートアップ経営に関する多くの学びを得ることにつながりました。
資金は、グローバルで戦えるIP作りに使います。IP作りには多額の資金が必要なんです。生成AIを活用したIPエンタメの波が来て、市場の競争も激化する中で1日でも早く大きなIP制作に挑戦するために今回の資金調達を決断しました。
―― グローバル向けのIPコンテンツ制作について教えてください。
YouTube全体の動画で、広告収益や登録者数を基準に上位10チャンネルを見ると、そのうち半数ほどが子ども向けなんです。見られているコンテンツの大半が海外発で、日本発のものはほとんど見当たりません。エンタメやコンテンツ大国と呼ばれる日本ですが、子ども向けコンテンツのグローバル展開においては、まだまだ遅れを取っていると感じています。
世界で見れば「Cocomelon(チャンネル登録者約1.9億人)」や「Baby Shark(チャンネル登録者約8000万人)」など、非常に多くの登録者を抱える子供向けチャンネルもあります。運営企業に数千億の企業価値がつくこともあるほど、子供向けのIPコンテンツは、ビジネス的にも大きなインパクトがある市場です。
これだけの大きな市場で、日本が存在感を示せていないのは非常に悔しいというのが個人の思いです。日本国内でもエンタメの多くが大人に向いている中で、私たちも日本のコンテンツが持つ強みを生かしながら、子供向け分野でも世界に通用する作品を生み出し、世界に挑戦していきたいと思っています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
まずはプラットフォーム上でIPを作り、登録者数100万、1000万と親子の認知を広げ、ファンを獲得していきます。現在、実況ベイビーの総フォロワー数は約75万人ですが、年内には100万人を目指しています。
その後はグッズ販売やライセンス企業とのコラボなど、メディアミックス展開を進めてIPの価値をさらに高めていく計画です。最終的には「世界版のEテレ」のようなサービスをつくり、信頼できる教育コンテンツを世界中に届けることが目標です。ディズニーのように一つのブランドの中でさまざまなIPを展開し、それぞれの地域に合わせた各国の人々に寄り添えるようなコンテンツを生み出していきたいと思います。
世界中の親子が安心して育児に励める環境をつくるために、エンタメコンテンツの力は欠かせません。エンタメを通じて、少しでも多くの親子がつながるきっかけを増やしたい。その実現に向けて、一日でも早く前進できるよう全力で取り組んでいきます。
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