SENRI、2億円調達で新興国流通DX加速──「新興国版セブン-イレブンOS」目指す


日本発ブランドへの投資・M&A、経営支援、海外展開支援を行うNUJP株式会社は、インキュベイトファンドおよびDRG FUNDを引受先とする第三者割当増資に加え、日本政策金融公庫からの融資により、総額約1億円を調達したと明らかにした。
調達資金は、出資・M&Aを含む日本発ブランドへの投資資金と、海外展開支援を担うグローバル人材・専門人材の採用に充てる。あわせて、買収後の経営支援や経営管理体制の高度化、卸・EC・パートナー連携を通じた海外販売チャネルの構築も進める。
NUJPは、独自の技術や思想、文化的背景を持つ日本発ブランドに投資・伴走しながら、経営管理や海外販路、マーケティング機能を共通基盤として整えていく、ロールアップ型のアプローチを掲げるスタートアップだ。創業当初は、大手家電メーカーや日用品メーカーなどのグローバル展開支援を中心に事業を行っていたが、現在は海外進出を目指す中小ブランドへと主軸を移している。
事業の背景には、代表取締役の後藤 健太氏自身の原体験がある。カンボジアやデンマークで育った後藤氏にとって、海外の街に並ぶ日本企業のロゴは、日本人としてのアイデンティティを支えてくれる存在だったという。日本人がほとんどいない環境でも、空港や街中には日本企業の製品や広告があり、現地の人々の暮らしの中に日本の製品が入り込んでいた。後藤氏は、その光景を「日本人として誇らしかった」と振り返る。
一方で、時代が移るにつれて、かつて世界で強い存在感を放っていた日本の製造業ブランドの影響力は徐々に薄れていった。海外で育った後藤氏は、その変化に寂しさを感じたという。「日本はこれから、海外でどのようにプレゼンスを発揮していくのか」。その問いが、NUJPの出発点にある。
後藤氏が注目するのは、食、アート、ファッション、IPコンテンツ、ライフスタイルといった、日本の文化的価値を持つ領域だ。かつての製造業とは異なる形で、日本発のブランドが海外市場で広がる可能性があると見る。しかし、魅力的なプロダクトやストーリーを持ちながら、言語、文化、販売チャネル、経営資源の壁によって、海外市場に十分届いていないブランドは少なくない。
後藤氏は、NUJPの役割を「翻訳」という言葉で表す。
「日本文化のプロダクトを、海外に伝わる形で翻訳していく。それが、私たちがやりたいことです」
ここでいう翻訳は、単に言語を置き換えることではない。商品そのものの魅力や背景にある思想を尊重しながら、海外市場で伝わる表現に整えることを指す。例えばお酒であれば、デザインやパッケージ、ボトルの形、味のバリエーション、飲み方の提案、ブランドハンドブックの作成まで踏み込むこともある。
後藤氏は、海外向けの商品づくりを「海外の消費者とのコミュニケーション」だと捉える。つくり手の思いを軸にしながら、実際に市場に出し、消費者の反応を受け取り、そこから共通する感覚や受け入れられる文脈を抽出していく。その橋渡しを担うのがNUJPの価値だという。
日本には、長い時間をかけて磨かれてきたものづくりや、地域に根ざしたブランド、独自の美意識を持つプロダクトが数多く存在する。一方で、後継者不足や国内市場の縮小、経営人材の不足、海外展開の難しさにより、十分な成長機会を得られない事業も少なくないのが現状だ。NUJPはそうした企業に対し、出資やM&Aを伴う伴走支援と、海外販売・マーケティング支援の両面から関わる。
「大手企業は自分たちの力で海外に出ていくことができます。一方で、海外に出たいという意思があり、海外で評価されるだけの商品力を持っていても、そこまでたどり着けていない小さなブランドや事業者が日本には数多くあります。海外展開を支える仕組みがないことが、大きな課題だと考えました」(後藤氏)
同社が支援する領域は、伝統産業だけに限らない。後藤氏は、歴史や文化を持つ老舗ブランドと、現代的な感性を持つ新しいブランドの双方に可能性があると見る。
現在の取り組みの一つが、山梨県に拠点を置く創業100年以上の酒造ブランド「近江屋」の海外展開支援だ。国内では一定の取引先を持ちながらも、海外でどのように売るのか、どのように伝えるのかについてはノウハウが限られていた。NUJPは、成果に応じて対価を得るレベニューシェア型のスキームで協業を進めている。香港や英国の展示会にも同行し、現地での説明や商談のクロージングまで伴走している。

もう一つの事例が、日本発のクラフトジンブランド「Carrot Cake Spice Gin」だ。きっかけは、NUJPのメンバーがバーで見つけた一本のジンだった。その商品をInstagramに投稿したところ、つくり手である「Spice Resonare」からDMが届いた。

「飲んでくれてありがとうございます」という連絡からコミュニケーションが始まり、やがて「これは海外で売れるのではないか」という話につながった。生産量の拡大や管理、マーケティングの支援も含め、NUJPはパートナーとしてブランドの展開を支援している。
後藤氏は「それぞれのブランドにも、協業に至るまでにもストーリーがある」と話す。投資先や支援先を単に探すのではなく、プロダクトそのものに触れ、つくり手の思いを聞き、その価値を海外に届けられるかを見極める点が、NUJPの支援の特徴だという。
チームの強みは、グローバル市場での実務経験にある。アマゾンジャパンやソニーなどの事業会社で海外マーケティングやEC運営、事業管理などを担ってきた人材や、YouTubeで450万人以上のフォロワーを抱える動画クリエイターが参画している。
「私たちは、本当に一緒に手を動かすことを大事にしています。現場で何が課題になるのか、どこで詰まるのかを同じ目線で見ながら支援できることが特徴だと思います」(後藤氏)
今回の資金調達について、後藤氏は「この時期に必ず調達しなければならなかったというより、出会いがきっかけだった」と話す。自己資金で進める選択肢もあったが、ピッチコンテストへの参加をきっかけに複数の投資家から声がかかった。資金だけでなく、投資家のネットワークや知見を得ることで、NUJP単独では届かない規模の取り組みができると考えたという。
中長期的には、海外展開を目指す日本発ブランドにとって、NUJPが想起される存在になることを目指す。
「海外に出ていきたいブランドに、私たちのことをしっかり認知してもらいたい。そして、彼らの良いところを世界の人たちに翻訳できる存在になりたい。文化的な価値、文化資本を経済のドライバーにしていくうえで、NUJPが一翼を担えればと思っています」(後藤氏)
食、ファッション、酒、クラフト、IP、ライフスタイルなど、日本発の文化的価値を持つブランドや事業には、海外市場で成長する余地がある。その価値を海外に伝わる形へと翻訳し、日本発ブランドの新たな成長機会をつくれるか。NUJPの挑戦が始まっている。
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます