AIスタートアップFLUXが追加44億円を調達──国内AX需要を追い風に


企業の個人情報・情報資産管理を支援するプラットフォーム「Flows」を提供する株式会社WeDraftは、DNX Venturesを引受先とするシードラウンドで総額1億円の資金調達を実施したと発表した。AIを用いたデータ活用が企業の不可逆なトレンドとなる一方、その前提となる個人情報・情報資産の管理や法的リスク・プライバシー/セキュリティリスク対策が追いつかず、活用が止まってしまう場面が課題となっている。今回の調達資金は、プロダクト開発、初期顧客の成果創出、人材採用に充てる方針だ。
WeDraftは2026年1月に設立されたスタートアップ。主力プロダクトのFlowsは、企業が保有する個人情報・情報資産の台帳登録・管理から、台帳・施策ごとのリスク抽出・対策のタスク管理までを一貫して扱うクラウドサービスである。

企業は、台帳で管理する情報項目をあらかじめ設定しておく。個人情報などデータを取得・利用しようとしている現場部門が、その都度「どのような情報を」「どのような方法で取得し」「どのように保管・利用するのか」という申請を行うと、法令対応上の確認事項や、プライバシー・セキュリティ上の潜在的なリスク、必要な対応タスクが自動で抽出される。現場部門がそれらのチェック項目を確認した上で申請を行い、情報セキュリティ部門などの管理部門が審査・承認を行うという一連のプロセスを同一のプラットフォーム上で行える仕組みだ。


アプリケーションや業務ワークフローはノーコードで各社の業務に合わせてカスタマイズできるという。同社はプロダクトに加え、導入時の業務設計や初期設定を支援するコンサルティングメニューも併せて提供している。
代表取締役を務めるのは橋村洋希氏。Flowsの前身は橋村氏が前職のAcompanyで立ち上げたプライバシーガバナンスSaaS事業のプロダクト「AutoPrivacy Governance」(2024年4月リリース)にさかのぼる。
この事業を通じて橋村氏が向き合ったのが、企業の個人情報台帳管理の実態だった。多くの企業では台帳を表計算ソフトや独自ツールで管理しており、定期的な棚卸しのたびに各部門へファイルを配布・回収する運用が一般的だという。不備の確認や再依頼にコミュニケーションコストがかかる一方、台帳の更新自体が目的化し、本来のリスク対策まで手が回らない。「9割以上の企業がこの状態にある。台帳を管理することが目的になってしまい、データガバナンスが効いているようで効いていない。こうした運用が各社で驚くほど共通しており、ここが今のバーニングニーズになっている」と橋村氏は指摘する。
業界・業種を問わずこの課題が共通しているという確信が、事業へのフルコミットを後押しした。最終的にMBO(マネジメント・バイアウト)により事業を切り出し、DNX Venturesから資金を調達して新会社を設立する形となった。「もっと各社の役に立ちたい、我々のサービスに期待してくださっている方により深く刺さるプロダクトを作っていきたいという思いで、フルコミットを決めた。事業を独立させる選択が、両社にとっても顧客にとっても最適だと考えた」と橋村氏は経緯を語る。
背景にあるのは、データガバナンスをめぐる外部環境の変化である。
第一に、生成AIを含むデータ活用の拡大に伴い、自社の利用ルールをどう整備するかというAIガバナンスが各社の論点となっている。
第二に、データガバナンスをめぐる規制は強化される方向にある。
2026年4月に閣議決定された個人情報保護法の改正法案では、委託先による個人データ等の取扱いに関する規律の見直しなどが盛り込まれている。
加えて政府は、取引先を経由したサイバー攻撃の増加を受け、企業のセキュリティ対策レベルを星の数で可視化する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」を2026年度末頃の運用開始に向けて構築中だ。今後、取引先に求めるセキュリティ対策水準を示す際の目安として使われる可能性もある。
橋村氏はこういった状況を受け、「外部環境としてはかなり追い風が来ている」とみる。Flowsの前身プロダクトを含め、すでに国内の複数の大手企業で導入・トライアルが進んでいるという。「導入・トライアルに至った企業はすべてインバウンド。(Flowsは)企業の課題に深く刺さるという一つの証明だと考えている」と、手応えを口にする。
プロダクト面では、業界別のリスクテンプレートやAI利用を想定したテンプレートの拡充に加え、個人情報以外の機密情報を管理する機能を2026年8月にリリース予定であり、委託先管理機能などの開発も進めていくという。
AIを用いたデータ活用が今後も進んでいくと考えられる中、その前提となるデータ管理やガバナンス、プライバシー・法規制対応の重要性が高まっている。複数の民間調査では、世界の企業データ管理市場は2025年時点で1100億〜1200億ドル超の規模とされており、今後も成長が見込まれる。WeDraftは当面、個社単位のデータガバナンス強化を支えるツールとしてFlowsを展開し、将来的にはグループ企業やサプライチェーン全体のガバナンスへと対象を広げる構想を描くとしている。同社の今後の取り組みに期待が集まる。

Tag
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます