株式会社M2X

設備保全クラウド「M2X」を開発・提供する株式会社M2Xは、シリーズAエクステンションラウンドの資金調達を実施したと発表した。Angel Bridge、三菱UFJキャピタル、自動車ファンドを引受先としたエクイティ調達に加え、商工組合中央金庫、りそな銀行、日本政策金融公庫からのデットファイナンスを実施。シリーズAの累計調達額は総額11.4億円となった。調達資金は、マーケティング投資と採用強化に充てるとしている。
M2Xは、2022年12月に設立された設備保全DXのスタートアップだ。工場で日々稼働する機械・設備のメンテナンス業務を一元管理するクラウドシステム「M2X」を開発・提供している。
紙とExcelに残る設備保全の非効率
製造現場における設備の保全・メンテナンスは、工場の安定稼働を支える重要な業務だ。一方で、現場では紙やExcelに記録が分散している状態で業務が行われているケースが少なくない。故障時に状況が適切に伝わらない、必要な予備品や過去の対応履歴が見つからない、記録や集計に時間がかかる、社内で情報共有できない。こうした非効率が積み重なることで、本来設備に向き合うべき時間が削られている。

代表取締役CEOの岡部 晋太郎氏は、東京大学卒業後、総務省でIT政策の企画立案に携わり、その後ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入社。製造業の中長期戦略立案やDXを担当する中で、メンテナンスの重要性に着目し、2022年に同社を創業した。
岡部氏は、創業の経緯についてこう語る。
「前職で、売上高が数兆円規模の大手製造業の修繕費削減プロジェクトに携わりました。業務の流れや使っているツールを見ていくと、日本を代表するような企業でも、設備保全の現場では紙とExcel中心のアナログな業務フローになっていたんです。大手でもそうなら、中堅・中小企業にも同じような課題があるのではないかと考え、調べ始めたのがきっかけです」
設備保全の非効率は、生産損失にも直結する。設備が止まれば、原材料のロスや不要な残業、エネルギーコストの増加にもつながる。岡部氏は、メンテナンス担当者の時間配分についてこう説明する。
「設備保全の現場では、実際に設備の前で作業する時間を『レンチタイム』と呼びます。作業に使える時間全体を100とすると、レンチタイムは20〜25程度しかないこともあります。残りの時間は、記録や集計、情報共有、履歴や予備品を探す作業などに使われている。私たちは、デジタルの力でその時間を削ぎ落とし、設備に向き合える時間を増やしたいと考えています」
M2Xは、こうした設備保全業務をクラウド上で一元管理する。点検を含む予防保全、修理依頼、トラブルの記録や過去履歴の検索、予備品の管理、設備台帳・文書管理、集計など、設備保全に関わる幅広い業務をカバーする。
スマートフォン、タブレット、PCを問わず利用でき、現場で直感的に操作できる点を特徴とする。トラブルが発生した際には、現場担当者がスマートフォンから写真や動画を添えて記録できる。過去の履歴や設備ごとのマニュアルも紐づけて管理できるため、必要な情報を探す時間を短縮できる。さらに、部品を交換した場合には使用した予備品をその場で記録し、在庫数が一定数を下回った際にアラートを出すことも可能だ。

AIとデータ連携で「ゼロダウンタイム」へ
近年は、AIエージェントが記録や情報の呼び出しを行う機能も拡充している。たとえば、現場で不具合が発生した際に、「設備で故障が発生し、30分前から15分間停止した。原因はセンサーの誤検知」と話しかけると、AIが内容を読み取り、トラブルの対象設備や停止時刻、原因などを反映したトラブル記録を自動で作成する。蓄積されたデータに対して「今月トラブルの多い設備は」と自然言語で問い合わせることもできる。
岡部氏は、AI活用について次のように話す。
「これまでは、(M2Xに)どのような機能があるかを理解しないと使いこなせない部分がありました。これからは、使い方がよく分からなくても、とにかく問いかけたり、これを作ってとお願いしたりすればM2Xを使えるようになっていく。現場の方にとって、より使いやすい形になってきていると思います」
同社は、食品・飲料、自動車、建築資材など幅広い製造現場で導入が進んでいる。トヨタ自動車九州、ロッテ、レンゴーなども導入企業に名を連ね、高い継続率を維持しているという。
今回の調達資金の使途について、岡部氏は「マーケティングへの投資と採用強化が主な柱になる」と話す。
「製品としての手応えは出てきている一方で、まだM2Xのことをご存じでない現場の方々も多い。しっかりと認知いただけるよう、マーケティングに投資していきます。あわせて、優秀な方に入っていただき、活躍してもらうための採用にも投資していきます」
今後は、工場のセンサなどから得られる情報をM2Xに接続する取り組みも進める。岡部氏は、今後工場自動化が進むほど工場内の設備や機械は増え、保全業務を効率化するシステムへの需要は高まると見る。
中長期的には、製造業にとどまらず、データセンターやロボット販売・卸売など、機械・設備の安定稼働が求められる領域にも展開していく考えだ。究極的には、工場がまったく止まらない「ゼロダウンタイム」の世界を目指す。
「今でも、設備保全には多くの非効率が残っています。そうしたものを一つずつなくしていき、滞りなくものづくりができる。そのためのプラットフォームにしていきたいと考えています」
自動化・機械化が進むほど、機械を止めないためのメンテナンスの重要性は増していく。紙とExcelに分散していた設備保全の情報をつなぎ、現場が設備に向き合う時間を取り戻せるか。M2Xの次の展開が問われる。









