J-CAT株式会社

J-CAT株式会社は、シリーズBラウンドで総額11.3億円の資金調達を実施した。今回の調達は、三井住友海上キャピタルがリードインベスターを務め、DBJキャピタル、グローバル・ブレイン、DMX VENTURES ASIA PTE. LTD.、既存株主のJFR MIRAI CREATORS Fundと三菱UFJキャピタルの追加出資、さらに日本政策金融公庫や商工中金、三菱UFJ銀行からの融資が含まれている。これにより、累計調達額は18.3億円となった。
2019年設立のJ-CATは、日本の伝統文化や地域資源と現代的な価値観を融合した高付加価値の観光体験サービスを展開している。主力サービスの「Otonami」は国内向けの体験予約サイト、「Wabunka」は訪日外国人を対象とするラグジュアリー体験予約サイトである。加えて、法人や団体向けに「Wabunka Enterprise」として特別な場所で一流講師と学べる体験プログラムも提供している。
「Otonami」は2025年4月時点で約490件の体験プランを扱い、美食・文化・アート・クラフトなど幅広い分野で知的好奇心に訴求するサービスを展開。利用者数は延べ10万人に達している。2025年1月には宿泊付き特別プランを提供する会員制「Otonami Salon」を開始し、4月には初の実店舗「Otonami Lounge Tokyo」(大丸東京店内)をオープン。これまでのオンライン予約に加え、リアル店舗での体験提供を始めたことで、新たな顧客接点の構築が進んでいる。
インバウンド向けの「Wabunka」では、日本各地の文化体験プランを約300件ラインナップし、毎月20件程度の新規プランを追加している。高付加価値・少人数制のプライベート体験に注力しており、通訳ガイド付きの完全貸し切り型が特徴。宿泊や移動、ガイド手配を含めた総合的なパッケージ商品の提供も進めている。
2025年5月15日に開催された記者向け説明会では、代表取締役CEOの飯倉竜氏が、今回の資金調達の背景と今後の展開について次のように説明した。
「宿泊や交通、通訳ガイドも含めた体験のパッケージ化を進め、Online Travel Media Agent(OTMA)としての役割を担っていきたい。体験を起点としながら、地方の文化資源を再編集し、海外富裕層の需要に応えていく」
営業責任者(CSO)の牧野雄作氏は、地方事業者との共創によって地域課題の解決にも貢献できていると語る。例えば、山梨の花火職人や京都の薬膳文化、南足柄での夜間体験など、地方に眠る文化資産を少人数・高単価で商品化。体験後の物販では約5割が追加購入をしており、地域に新たな収益機会を生み出しているという。

現在、売上構成比は「Otonami」と「Wabunka」でほぼ半々となっているが、今後はインバウンド領域の拡大を見据える。背景には、訪日外国人の旅行者数が2025年に4000万人を超える見通しや、2030年に向けた政府の6000万人目標といった市場の成長性がある。
飯倉氏は、自社の強みとして「体験コンテンツの質と量の両立」を挙げ、次のように語った。
「一部の富裕層向け体験提供者が属人的なオフライン対応にとどまるなか、我々はすべてのコンテンツを自社編集・予約決済可能にしており、拡張性のあるプラットフォーム設計が強みです」
ビジネスモデルは、初期掲載費用と成果報酬型の手数料を組み合わせた形で構成。特にインバウンド分野では、通訳やカスタマーサポートを含む手厚い対応が求められるため、手数料率は比較的高めに設定している。
今後の投資方針としては、(1)商品拡充、(2)海外顧客獲得、(3)システム自動化の三つに重点を置く。社員数も現在の約30名から、2030年までに200名規模まで拡大する計画である。