VTuber事務所「Million Production」、約1.8億円を調達——リアル×バーチャルの次展開へ

VTuber事務所「Million Production」、約1.8億円を調達——リアル×バーチャルの次展開へ

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VTuber事務所を運営する株式会社Million Productionが、MIXI、バンダイナムコエンターテインメント、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約1.8億円の資金調達を実施した。

Million Productionは2023年4月1日に設立されたVTuberプロダクションで、設立当初は甘狼このみが0期生かつクリエイター枠で参加し、その後所属タレントは8名に拡大した。YouTubeを主軸にショート動画を展開し若年層向けのファン層を開拓、所属タレントの累計登録者数は230万人超、総再生回数は9億回を突破している。設立から日が浅いものの、映画「8番出口」のプロモーションや大手企業と連携したグッズ展開など、メディアミックスを意識した事業展開を進めている。

同社の特徴は、タレントをグループ全体で売り出す「箱推し」型とは異なり、個々のタレントの個性やクリエイティブを重視する方針にある。例えば、イラストレーターとしても活動する甘狼このみは、小学館「ちゃお」主催の「女子小学生が好きなVTuberランキング」で第2位を獲得するなど、若年層からの支持を集めている。また、音ノ乃ののはヴィジュアル×シンガー(VSinger)として活動し、メジャーデビュー後は楽曲が大手チェーンのCMソングに採用されるなど、音楽領域でも活躍の場を広げている。

代表取締役の島井尚輝氏は、学生時代にクリエイター向けクラウドソーシング「HorseTail」を立ち上げる。学園祭情報サービス「学フェス」ではWeb開発とマーケを担当し、2年間で70校・2万人のユーザーを獲得。その後フリーランスとして多数のWebサイト制作・運用を経験。2017年8月にPearを設立し、プロダクト「OMNI-CORE」を発表。その後2023年にMillion Productionを創業した。

国内のVTuber市場は、2023年に市場規模が約800億円に達し、2025年には約1260億円と予測されている。YouTubeやTikTokといった動画配信プラットフォームによる収益多様化に加え、グッズ販売や企業タイアップ、ライブイベントなどリアルとバーチャルを行き来するビジネスモデルが主流となっている。主要競合としては、カバー(ホロライブプロダクション)やANYCOLOR(にじさんじ)が挙げられる。Million Productionは、タレント個人の個性を前面に押し出す運営方針で差別化を図っている。

今回の資金調達によって、主に以下の3つの施策が予定されている。

  1. クリエイティブとサポート体制の強化: 有力クリエイターとの連携や3Dライブ開発に投資し、制作力を高める。タレントの継続的な活動を支えるサポート体制も強化。

  2. 実店舗と物販の基盤構築:若年層向けにグッズを手に取れる場を提供。全国パートナーと連携し、在庫管理や新商品開発、オフラインでのイベントも含めた物販体制を整備。

  3. 業界横断の事業提携推進:ホビー、音楽、出版、アニメ、ゲームなど異業種と連携し、YouTube外にもタレントの露出を広げる。投資先企業との連携を軸に新たな価値を創出する。

近年のクリエイターエコノミー拡大に伴い、VTuber事務所の役割は単なるタレントマネジメントにとどまらず、自社IP(知的財産)の開発・展開へと広がっている。業界全体では「規模の経済」を追求する大手モデルと、Million Productionが志向する「個性」やクリエイター連携による運営モデルが共存し、それぞれが異なる強みを有している。

同社は今後も、引き続きタレント個人の表現力や創作活動を重視し、リアルとバーチャル双方の接点強化や他業界との連携を進めていく方針だ。

画像はMillion Productionリリースより

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