「マイクロファイナンス×モビリティ」で見据える展開とは──南アフリカ・インド進出狙うHAKKI AFRICA

海外渡航者向けeSIMアプリを提供するトリファが、新規株主や金融機関から総額12億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドの引受先はANAホールディングスとグローバル・ブレイン、THE SEEDの3社。
同社が提供する「trifa(以下:トリファ)」は200の国と地域のeSIMを購入して利用できるアプリ。eSIMはスマートフォンに内蔵されたSIMを指す。eSIM搭載端末であれば、物理的なSIMカード(物理SIM)を挿入することなくモバイルデータ通信を行えるようになる。
オンラインで手続き・設定すればすぐに海外でも通信サービスが利用できるため、海外旅行時のレンタルWi-Fiなどに代わる通信手段としても有用だ。トリファでは、アプリ上で旅先と通信プランを選択するのみで適したeSIMを購入できる。購入後は最短3分で利用可能。法人向けサービスもメーカーやアパレル、建設業界などで利用が進む。
代表取締役 嘉名 雅俊氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
―― eSIMアプリ「トリファ」について教えてください。
嘉名氏:アプリ上でeSIMを購入し、海外でも通信が利用できるサービスを提供しています。海外旅行の際にレンタルWi-Fiを利用している人は多いのではないでしょうか。レンタルWi-Fiのレンタル費用は1週間の旅行で大体1万円以上かかることも少なくない中、トリファでeSIMを購入すればその半額程度で済みます。
必要な手続きはアプリ上で完結します。アプリインストール後、手順に従って設定することで最短3分ほどでの利用が可能です。単純なeSIMの卸ではなく、各国の通信会社とシステム連携しているため、データ残量もアプリ内で簡単に確認できます。
eSIMは、まだ世間一般に広く認知されている通信手段ではありません。知っていても「難しそう」という印象をお持ちの方も多いと思います。トリファはサービスコンセプトとして「安心・簡単」といったポイントを押し出していて、eSIMという単語を知らなくても「アプリを入れれば海外で通信ができる」ようなサービスとして認知を獲得していきたいと考えています。
―― 海外旅行時の通信にeSIMを利用している人はまだ多くないように感じます。
日本では、海外旅行者の約70%がレンタルWi-Fiを旅行中の通信手段として利用しています。一方で、レンタルWi-Fiは受け取りや返却に時間がかかり、荷物も増えるため持ち運びに不便です。紛失のリスクもあります。次によく使われるのがデータローミング(現地の通信事業者のネットワークを利用したデータ通信)で、その次が物理SIMといった形です。物理SIMを利用することでコストを抑えられることに加え、eSIMならさらに簡単に利用できます。
eSIMが出てきたのは2020年ごろからで、日本人の旅行者にはまだあまり知られていません。物理SIMを使っている人も多くない。逆に、海外では物理SIMの利用が主流です。もともと物理SIMを使う文化が根付いていた欧米では、アジアと比べてeSIMの利用が進んでいます。日本では、通信会社が自社回線のみ利用できるようにするSIMロックの慣習があったことで、その空白を埋める形でレンタルWi-Fiが広まったと思っています。
―― 創業のきっかけを教えてください。
大学生のころに1年ほどベトナムに行っていました。その際にスタートアップ支援の事業を手がけていたSun Asteriskでインターンすることになったんです。その際に初めてスタートアップというものを知って。何もない環境から国を変えるほど大きな影響力を持つスタートアップが東南アジアから生まれる様子を見て、自分もスタートアップの経営者になりたいと思うようになりました。
多くのスタートアップは自社プロダクトを開発します。ただ、ソフトウェアエンジニアを雇う余裕はありませんでした。そこで、帰国後に独学でプログラミングを学びはじめ、チャットボットを開発するZealsで実践的な経験を積んだ後にERAKE(現:トリファ)を創業しました。
―― その後通信アプリの事業を開始したのはどのような経緯でしょうか。
これまで教科書で学んできた日本と比べると、現在の日本にどこか閉塞感をおぼえるような自分がいたんです。キラキラした日本をもう一度作りたい。中でも、スタートアップとして自分が人生を捧げられるほどのモチベーションで取り組めるのは旅行ドメインだなと思って。もともと旅行が好きで、よく一人旅をしていたんですよ。
OTA(オンライン旅行代理店)や旅行者のマッチングなど、旅行ドメインではすでに多くのスタートアップが事業展開していました。そこでヒアリングを重ねながら、異なる切り口で旅行者のペインを解決する方法がないかと考えた際に浮かんだのが「通信」です。多くの旅行者が使っていても、レンタルWi-Fi自体にものすごく利便性を感じているユーザーはほとんどいないことがわかりました。当時IoT分野で使われていたeSIMがスマートフォン向けに商用化されるタイミングで、これを海外旅行と結びつけることで大きな利便性を提供できると考えたのです。
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
市場全体ではまだまだなものの、eSIMへの認知は徐々に拡大しています。私たちのようなプレーヤーがユーザーに訴求しているのはもちろんですが、実際にeSIMを利用して利便性を感じる人が少しずつ増えているのです。
今後は、より多くの人にeSIMを利用してもらうためのマーケティング施策を強化するとともに、プロフェッショナル人材の採用にも注力していきます。またeSIMはWi-Fiのようにモノがあるわけではなくオンラインで完結するため、海外市場への展開がしやすいと考えています。私自身、日本をグローバルでイニシアチブの取れる国にしたいという思いもある。今回の資金調達で、海外進出も進めていく予定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
今は通信アプリとして打ち出していますが、トリファの語源は「トリップ(trip)のインフラストラクチャー(infrastructure)」です。将来的にはモビリティや決済などもできて、パスポートとトリファさえあれば海外旅行に行ける、旅行のインフラとなるようなサービスにしていきたいと考えています。すでに海外旅行保険と提携し、トリファ経由で加入できる取り組みもテスト的に開始しています。ユーザーにとって便利でお得なプランにシームレスに加入できるような体験を磨きこんでいきたいと思います。
さらに、今回ANAホールディングスに株主としてご参画いただいたように、旅行関連事業者の方々とは非常に大きなシナジーを生み出せるはずです。まずは日本人の海外旅行における通信手段としてNo.1、次なる段階としてグローバル市場でもトップを目指していきます。共に事業に取り組んでくれるメンバーの採用も強化しながら、本気で世界を取りにいくサービスを作り上げていきたいと思います。
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