中小企業に寄り添うLeafea、日常に根差した福利厚生インフラを目指す

中小企業に寄り添うLeafea、日常に根差した福利厚生インフラを目指す

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福利厚生SaaS「福利アプリ」を展開する株式会社Leafea(リーフィ)は、2025年5月にシリーズAラウンドで総額3.6億円の資金調達を実施した。出資にはXTech Venturesやきらぼしキャピタルなどが参加しており、調達した資金はプロダクト開発や人材採用の強化に充てる予定だ。

「福利アプリ」は、企業が月額料金を支払うことで、従業員が全国10万店舗以上の提携先で割引を受けられる福利厚生サービスである。

同社が掲げるミッションは、「生活に余裕を感じられない人の多い日本を、福利厚生というアプローチで支えること」。共働き世帯や高齢労働者の増加、さらに労働人口の約4分の1が貯蓄をほとんど持たないという実態など、日本社会が抱える生活・労働環境の課題がその背景にある。そうした現実を踏まえ、同社は、誰もが損をせず、持続可能に暮らしを支えられるインフラの構築を目指している。

今回は、代表取締役の森田渉氏に、創業の経緯と今後のビジョンについて話を聞いた。

8割が未導入の中小企業をターゲットに福利厚生を展開

―― 事業概要について教えてください。

森田氏:福利厚生アプリを提供しており、今年で3年目になります。

サービスの基本は、コンビニや飲食店、映画館など全国10万以上の加盟店で使える割引特典。会社から従業員に向けたギフト機能もあり、気軽に「ちょっとしたご褒美」を届けられる仕組みです。ギフトの金額や頻度は、月1回1000円、もしくは隔月500円など、企業の希望に応じて柔軟に設計できます。

ギフト送付画面
遅くまで仕事を頑張ってくれた方、中には休日も厭わず働いている方...等々、特定の従業員に向けてメッセージギフトも送付可能(画像は公式サービス資料より)

当社が特に注力しているのは、従業員50名以下の中小企業。実は、福利厚生市場は毎年80万人規模で拡大している一方で、中小企業の約8割は未導入なんです。

今、大企業が賃上げを進める一方で、中小企業は簡単に賃上げできないという現実があります。そうした企業にとって、「第三の賃上げ」とも呼ばれる福利厚生は、従業員への感謝や報酬として機能し得る選択肢です。私たちは、その導入ハードルを下げるための仕組みを提供しています。

――企業は、どのようなインセンティブを感じて導入しているのでしょうか。

やはり「日常使いできる福利厚生サービス」であること。これが、導入の大きな決め手になっています。一般的な福利厚生というと、旅行やレジャーなど“非日常”を前提としたものが多く、どうしても使う機会が限られてしまいがちです。もちろん、そうした特典にも価値はありますが、実際にどれだけ活用されているかという点では、課題も残ります。

その点、私たちのサービスは、コンビニや飲食店、映画館、出張時のホテルなど、日常生活やビジネスの中で自然と使える特典が中心です。こうした日常との親和性が高いからこそ、アプリの月間ログイン率も6〜7割と高く、“福利厚生がちゃんと使われている”という状態をつくることができています。

サービス使用画面
アプリ特化型により、簡単に使えてすぐ慣れる点がポイント、日常生活の出費削減にもつながる

さらに、従業員1人あたり月300円という料金も、導入の後押しになっています。業界内でもかなり安価な水準で、しかも掲載企業から仲介料をいただかない仕組みなので、中小企業にとっても手を伸ばしやすい価格帯です。

もうひとつ、経営層の方々に喜ばれているのが「家族も使える」機能ですね。従業員がLINEなどで専用URLを家族に共有することで、家族も同じように割引特典を受けられるようになります(※ギフト機能は除く)。自分だけでなく、家族の生活にも嬉しい影響があるというのは、企業にとっても大きな価値だと感じています。

全体を通じて思うのは、「従業員に少しでも喜んでもらいたい」「感謝の気持ちを届けたい」という、経営層のあたたかい想いが導入の背景にあるということ。そうした想いに、私たちのサービスが少しでも寄り添えていることを、とてもありがたく思っています。

スタートアップスカウト

創業の出発点は、自身の雇用不安の実体験

――創業に至るまでの経緯について教えてください。

大学では薬学部に通っていましたが、途中で中退し、その後はフリーランスとして約1年半ほど活動していました。ただこの頃は、仕事が安定せず、立場の弱さや不安定さを日々実感していた時期でもあります。周囲にも、同じように不安定な環境でがんばっている人たちが多くいて、そうした現実に直面する中で、「そういう人たちの暮らしを支えられるような仕組みをつくりたい」と強く思うようになりました。

その後はSaaS系の企業に入って、サービス開発や業務改善といった実務を経験しました。社会課題にテクノロジーで向き合える領域を探していたなかで、「福利厚生」というテーマに出会ったんです。企業の持続性を支えながら、働く人たちの生活にもプラスの影響を届けられる――この分野なら、これまでの経験やスキルを活かしながら挑戦できるかもしれない。そんな想いが、起業のきっかけになりました。

ただ、福利厚生サービスの立ち上げは簡単ではありませんでした。なかでも一番苦労したのが、アプリに掲載する提携店舗の開拓です。私たちのサービスは、まず使えるお店がある状態を整えないと、企業に導入してもらうことができません。言ってみれば、普通のSaaSよりも逆順で、店舗網を先につくらなければ始まらないモデルなんです。そのぶん、立ち上げのハードルはかなり高かったと思います。

当時は、毎日8〜10件の店舗にアポイントを取り続け、ひたすら営業に奔走していました。そうした地道な取り組みの末、少しずつ協力店舗が増えていき、サービスとしての基盤を形づくることができたのです。

ライフステージ対応・地方OEMを含む開発投資を加速

――資金調達の使い道は。

今回調達した資金では、主にプロダクト開発とサービスの展開を進めていく予定です。

プロダクト面では、労務管理システムとの連携を強化していきたいと考えています。たとえば、育休に入る方には育児中でも使いやすい特典を届ける、有給休暇を取得できていない方には休みを取ってリフレッシュできるような旅行特典を提案する、などです。単なる割引にとどまらず、働き方やライフステージに応じた福利厚生を届けられるようにしていくことが目標です。

中長期の取り組みとしては、ストレスチェック機能の実装も行う予定です。これは、労働安全衛生法の改正により、これまで義務化の対象外だった従業員50人未満の事業所にも、実施が求められる方向で制度設計が進んでいる背景があります。既存の労務管理ツールと連携しながら、企業が無理なく運用できる形を目指しています。

また、今後はアルバイトの方に向けたギフト機能の展開も検討しています。たとえば、クリスマスや年末年始など人手が足りない時期に働いてくれた方に、勤務後に企業から感謝のギフトを送れるような仕組みを作りたいですね。今はそうした見えない貢献に対するフォローが、十分に行き届いていないと感じています。だからこそ、そこに温かさのある選択肢を提供できたらと思っています。

サービスの展開にあたっては、今後、地方の金融機関との連携をより一層深めていくつもりです。具体的には、地方銀行や信用金庫の取引先企業向けに、それぞれ専用のOEMアプリをつくり、提供していくというスタイルをとっています。すでに、新潟の大光銀行さんとは「なじらね福利厚生」という名前のアプリで取り組みが始まっています。

ならじね福利厚生スキーム図
地域店舗が増えることで認知が広がり、ギフトの利用が地域の流通額を押し上げ、地域活性化に繋がる(画像はプレスリリースより)

当社にとって、地銀のネットワークを活かすことで、それまでなかなか接点のなかった地域の企業とつながれるようになったのは、大きな意味がありました。一方で、金融機関の側にとっても、取引先との関係を深めたり、地域のリアルな声を知るきっかけになっているようです。

こうした双方のメリットを活かしながら、最終的には、活気を失いつつある地域の商店街や中小事業者を少しでも元気にする一助となれればと考えています。

――今後の意気込みを教えてください。

福利厚生の領域は、これまであまりユーザー目線で考えられてこなかった市場です。当社にとっては、サービスを導入してくださる企業はもちろん大切ですが、実際に日々使ってくださる従業員の皆さんの目線がプロダクト開発に欠かせません。

使い勝手や利用シーンを徹底的に想像しながら、「自分が使うならどうあってほしいか」を常に考えています。だからこそ、ユーザーの方から喜びの声をいただくのが一番嬉しいですね。

「仕事帰りに映画を割引価格で観られて、いい気分転換になりました」、「コンビニでちょっと贅沢なお菓子を買ったら、思っていた以上に嬉しかったです」といった感想をいただくと、この事業をやっていてよかったな、と思います。ユーザーひとりひとりの日常に、本気で向き合う。その積み重ねが、この市場に新たな価値を生み出すと信じています。

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