はじめに
近年は、新型コロナウイルスの蔓延も影響し、人々の健康意識が強まっている。加えて、IoT技術やスマートウォッチといったウェアラブル端末の発展により、技術的に可能なことが増加した。
医療においては、身につけるだけで脈拍や心拍数、血圧、体温、脳波といった生理的な状態をデータ化して取得できるウェアラブルデバイスも増えている。これらの背景から、健康をより手軽に、リアルタイムに管理できる医療用ウェアラブルデバイスの市場が大きくなっている。
富士キメラ総研※は、国内のウェアラブルディバイス/ヘルスケア関連機器の市場規模は、2022年の3113億円(見込)から、2027年には5026億円まで拡大すると予測している。
スタートアップ5選
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
尿がぼうこうにたまるとトイレに行くように通知するウエアラブル端末「DFree」を開発。 超音波技術を活用して尿のたまり具合をモニタリングし、一定レベルに達したらスマートフォンに通知して利用者に通知する。
介護者の監督下で装着している人にとっては適切なタイミングでトイレに付き添ってもらうことができ、大人用おむつへの依存を減らせる。 米退役軍人省や米コンチネンス協会(排せつ障害の団体)、米多発性硬化症協会などと提携している。
2023年3月に、第三者割当増資および融資などによる10億円の資金調達の実施を発表した。累計の調達額は約35億円に上る。
企業HP:https://dfree.biz/
株式会社ココロミル
医療機器を開発・販売する株式会社ZAIKENが提供するウェアラブル心電計「duranta」を用いた心電図解析サービス「kokoromil」を運営している。患者にdurantaを装着してもらい、取得した心電図データを循環器専門医師・臨床検査技師が解析して不整脈やストレス、睡眠の質や睡眠時無呼吸症候群についてのレポートを作成する。
2023年9月には、シリーズAラウンドにて総額約2.7億円の資金調達を実施した。
ジーニアルライト株式会社
医療機器・ヘルスケア分野の研究開発型ベンチャー企業。小型・高感度・低ノイズの光センサーの研究開発・製造技術を持ち、医療機関向け臨床現場即時検査(POCT)機器とモバイルヘルスケアデバイスを展開する。
モバイルヘルスケアデバイスでは、17 項目以上の生体データを計測できる小型・高感度・低ノイズの光センサーを組み込んだデバイスを提供している。デバイスは、ブレスレッド型、ペンダント型、ヘルメットへの取り付けなど多様な使用シーンに対応している。
2020年4月30日までに、株式会社ムトウ、体外診断用医薬品メーカー、りそなキャピタル4号投資事業組合、株式会社日本能率協会総合研究所の4社を引受先とした第三者割当増資を実施し、約2.4億円の資金調達を実施している。
EMC Healthcare株式会社
ウェアラブルデバイス「CALM.」の開発・提供のほか、病院経営支援や地域医療連携支援を行う。CALM.は、心電位・活動量の測定を行うことができ、専用アプリケーションから睡眠や心拍などの身体の状態を知ることができる。14g と軽量で、スポーツ用と医療用に分かれる。
2022年12月には、MCP ジャパン・ホールディングス株式会社およびエンジェル投資家から2億円の資金調達をシリーズAラウンドで実施したことを発表した。同社は、医療以外にも、介護・保育といった「Care」サービスの課題に向けたサービスも展開しており、今回の資金調達では、介護施設向けDXサービス「OwlCare」の開発・製造を加速させることを目的としている。
株式会社リモハブ
自宅にいながら医療施設とクラウド経由でつながる、遠隔管理型の心臓リハビリシステム「リモハブシステム」を開発・運営する。リモハブシステムでは、心臓病の患者にウエアラブル心電計を装着してもらい、専用アプリを通じて医療従事者が患者の心電図をモニタリングして負荷を調節しながら、エクササイズバイクを用いたリハビリを行える。 病院の送り迎えによる家族の負担を減らし、退院後のリハビリ継続率の向上に貢献する。
2022年3月11日をもって、産業ガス大手のエア・ウォーターにより買収された。2024年度中にリモハブシステムの実用化を目指している。
おわりに
今回紹介した企業は、医療用のウェラブルデバイス機器を開発し、医療のDX化やリアルタイムでのヘルス管理を可能としてきている。今後も、医療におけるデバイスを開発するスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。
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参考:
株式会社富士キメラ総研「ウェアラブル/ヘルスケアビジネス総調査 2023」