宇宙技術開発のダイモン、超軽量小型の探査車で挑む月面開発

宇宙技術開発のダイモン、超軽量小型の探査車で挑む月面開発

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KEPPLE編集部


2017年12月、アメリカ合衆国連邦政府は半世紀ぶりに有人月面着陸を目指し、2028年までに月面基地の建設を開始する「アルテミス計画」を発表した。アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)が主導するこのプロジェクトには民間企業の参入も決定しており、日本では株式会社ダイモンと株式会社ispaceの2社が、その権利を得ている。

ダイモンは、月面探査車「YAOKI」を開発する企業だ。このたびプレシリーズAラウンドにて、エクイティファイナンスによる資金調達を実施したことを明らかにした。また、複数の金融機関と融資による資金調達についても合意したことを発表した。調達額総額は1.4億円となる見込みだ。

今回のラウンドの引受先は、ケップルキャピタルが運営するファンド「ケップルDX1号投資事業有限責任組合」。

同社は調達資金により、今後の月面ミッションに向け、さらなる技術開発を加速する。

月面市場への参入権利を持つ数少ない民間企業

ダイモンは、2012年に創業したロボット・宇宙技術開発ベンチャーである。月面探査車YAOKIの開発に取り組む月面探査事業を主力事業として、地上ロボット事業、教育エンタメ事業も手がける。

同社は創業以来8年の歳月をかけ、特許技術を駆使してYAOKIを開発した。超軽量小型化、高強度、転んでも走行可能な性能を実現。「七転び八起き」にちなんでYAOKIと命名した。

YAOKI
NASAの月輸送プログラムにおいて、すでに2023年秋以降と2024年以降の2回、YAOKIの輸送契約を締結している。2025年以降の月面ミッションに向けたさらなる技術開発に取り組み、3回目以降の月面輸送契約についても現在交渉を行っている。月面市場に参入する権利を持つ世界でも数少ない企業のひとつだ。

また、安価で高頻度に利用できる月面実験プラットフォームとしてサービスを提供している。継続的に複数台の機体を月に送り込むことで、さまざまな企業による月面での実証実験およびデータ取得を実施する。各企業が持つ技術やサービスが、今後拡大するであろう月面市場で競争力を発揮できるよう、各社との連携を進めている。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 中島 紳一郎氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

軽量化にこだわり実現した498グラムの機体

―― YAOKIの特長について教えてください。

中島氏:YAOKIは、月面開発の最前線で活躍するロボットで、超小型、超軽量、高強度を兼ね備えた月面探査車です。小型軽量化の利点としては、月面輸送にかかる巨額の輸送費用を抑えられることです。

2017年2月に、NASAはクリプス(Commercial Lunar Payload Services)という月への商業輸送プログラムを発表し、月へ荷物を輸送するサービスを民間企業などから公募しました。しかし実際には、1キログラム当たり1億円以上の費用がかかるため、製品の軽量化が重要な課題となりました。

YAOKIの開発には8年間を費やし、従来四輪以上と考えられていた月面探査車の車輪を二輪に削減しました。二輪での走行を実現する際にも、走行性能を損なわず落下・転倒への強度にも徹底的にこだわりました。その結果、わずか498グラムという従来の10分の1の重量を達成し、YAOKIが完成しました。
YAOKI詳細

―― YAOKIの開発に取り組まれたきっかけをお聞かせください。

私は元々自動車の駆動エンジニアでしたが、東日本大震災をきっかけに退社し、起業を決意しました。車の駆動開発という地上のモビリティに関する仕事はやりきった感もあり、地上以外のもので何かできないかと考えました。そこで、究極のモビリティ開発として月面探査車に関心を持ち、取り組んでみようと思ったのがきっかけです。

そして、起業するのとちょうど同じ時期に、White Label Space Japan(現・ispace)のプロボノに参加し、月面探査のプロジェクトに協力してきました。そこで、近い将来月面探査が実現できる日がくること、当時すでに持っていた二輪のアイデアもいずれ形にできる可能性が高いことを実感し、その後自社開発で進めてきた月面探査の実現につながりました。

代表取締役CEO 中島 紳一郎氏

代表取締役CEO 中島 紳一郎氏

前例のない二輪走行の月面探査車

―― YAOKIの開発を進める中で、どんな課題があり、どのように克服されてきましたか?

やはり月面開発に関して前例がないということが一番の課題でした。軽量化のための自分のアイデアや発想を相談しても、ほとんどの人に不可能だと言われました。「二輪でまともに走れるはずがないし、月面にも適用できない」といった否定的な意見も多く、心が折れそうにもなりましたが、これまでの自身の経験とアイデアを信じて、夢の実現に向けて開発を続けてきました。

性能向上を追求する際、一般的にはサイズを大きくする必要があります。しかし、YAOKIはサイズを小さくしても性能を維持することに徹底的に注力しました。むしろ小型化によって優位性が高まり、他社にはない強みとなりました。

また、開発に着手した当初は日本から月に行くプロジェクトの計画がなく、もちろん民間企業の参入もありえない状況で、やっても無駄とも言われていました。それでも諦めずに開発を続け、2019年にYAOKIが完成した際に、駄目もとでNASAの関係者にコンタクトをとりました。すると、アルテミス計画の中にグローバルな参入も可能な枠があるので、超小型月面探査車であれば空いているスペースに載せられるかもしれないと話をもらったのです。

そこから募集期間締切まで三ヶ月でした。巨額な輸送費と契約書の準備をいろいろな方の力を借りながら大至急進め、契約にこぎつけたのです。

―― 月面開発における企業連携の状況についてお聞かせください。

当社は月面探査事業において、「技術パートナー」という形で複数の企業との提携を進めています。ソフト面、ハード面でYAOKIの技術的なパートナーとなっていただくことにより、企業はいち早く月面開発に参入し実績を作ることができ、ブランド構築にもつながります。約20項目をメニュー化しており、すでに10社程度の契約企業が決定しています。交渉中の企業も増えており、続々とお問い合わせもいただいている状況です。

また、月面探査の開発技術やノウハウを提供するOEM事業、月面探査で取得した月のデータを提供するデータ販売事業も展開しています。いずれの事業もYAOKIの取り組みに賛同いただき、ブランド価値を感じていただいた企業のみなさまと進めさせていただいています。

アバターロボットで月面旅行を楽しめる世界へ

―― 今回の資金調達の背景や使途について教えてください。

今秋以降の初回月面探査については、実証機レベルの月面探査車にて実施します。まずはシンプルな構造で故障する確率を下げ、成功実績を作ることが基本的な狙いです。

ただし、本格的な探査を行うためにはもっと性能を上げる必要があります。3回目以降の月面探査に向けてより高度なセンサーを搭載し、複数機のYAOKIによる連携探査や安定した自立走行のための、さらなる技術開発を進めるために資金調達を行いました。

―― 今後の展望についてお聞かせください。

4~5年後の月輸送の際には、100機の月面探査車を打ち上げることを目指しています。そのために、引き続き探査技術の精度向上のための開発を行います。アルテミス計画における月面基地の建設にも貢献していきたいと考えています。

また、将来的にはYAOKIをアバターロボットとして活用し、地球からの遠隔操作によっていつでもどこでも手軽に月面旅行が楽しめる環境の実現を目指します。いずれは、火星や、木星・土星の衛星へもバーチャル旅行が可能になるような時代がくると思います。そのような価値ある夢の実現にも取り組んでいきます。それこそスタートアップが手がける事業の醍醐味だと思います。

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※ ispaceの子会社であるispace technologies U.S., inc.が一員として参加するTeam Draperが、2022年7月に、NASAの商業月面輸送サービス契約を7,300万ドルで獲得した。「ispace、ミッション2・ミッション3の進捗を報告

株式会社ダイモン

株式会社ダイモンは、二輪走行の小型月面探査車『YAOKI』を開発する企業。 『YAOKI』は、カメラの左右に車輪を組み合わせたシンプルな構造によって、月面の砂の上でも横転せず走り続けるという。

代表者名中島紳一郎
設立日2012年2月22日
住所東京都大田区大森南4丁目10-20
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