株式会社Resi For

製造現場のDX促進AIエッジデバイス「SonicAI」を開発する株式会社Resi Forが総額9000万円の資金調達を実施した。
今回の資金は、SSS Capitalおよび個人投資家からの出資、日本政策金融公庫と三井住友銀行からの融資によるものである。
Resi Forは、多品種小ロット生産を行う工場の現場において、熟練作業者の属人的な判断や工程上のボトルネックをAIエッジデバイスで解消することを目指している。日本の製造業では、単一製品の大量生産が中心だった時代から、多様な製品を少量ずつ生産する現場へとシフトが進む一方、標準化や自動化が困難なため、依然として手作業に依存する状況が続いている。このような現場では、人材確保の難しさ、品質ばらつき、生産履歴追跡(トレーサビリティ)の確保といった問題が顕在化している。
開発中の「SonicAI」は、エッジデバイス(ハードウェア)とディープラーニングソフトウェアを一体化した統合型プロダクトだ。リアルタイム性と柔軟性を兼ね備え、これまで人に依存していた現場業務を支援・代替することで、現場の省人化・高度化・標準化を実現する。
同社は2025年8月を目途に社名を「SonicAI」へ改称する予定であり、ブランドを統一することで事業の成長と認知拡大を狙う。
代表取締役の田中寛之氏は、卒業後、キーエンスやA.T.カーニーでの経験を経て、中小製造業の構造課題に強い危機感を抱き、2024年6月にResi Forを創業した。
日本の製造業を取り巻く環境は、長期的な労働人口の減少が続いている。厚生労働省によると、 2022年時点の製造業労働人口は約1044万人であり、特に多品種小ロット生産を担う中小工場では担い手の高齢化が進行し、新規人材の確保も難しくなっている。また、製品ごとに求められる品質基準は厳格化が進み、ヒューマンエラーの低減や検査工程の効率化、生産履歴の管理といった取り組みは業界全体の課題となっている。
競合環境としては、画像検査AIやロボットによる品質管理の自動化、IoT端末を用いた工程データの取得といった分野に多くの企業が参入している。特に、AIによる外観検査や製造現場の可視化といった用途では、すでに多様なソリューションが市場に存在している。ただし、製造・搬送・検査といった複数の工程を包括的にカバーし、かつ現場に設置可能な汎用的エッジデバイスとして一体型で提供される事例は限定的である。そのため、現場ごとの多様なニーズに柔軟に対応できるかどうかが、今後の競争における重要な差別化要素となる可能性がある。
今回の資金調達により、「SonicAI」シリーズの開発体制を強化し、国内外への市場展開基盤を整備する方針である。今後は、特定工程への実装からサプライチェーン全体への水平・垂直展開を進め、海外市場での事業拡大も計画しているという。