2017年から世界25都市に展開し、創業前のDay Zeroから起業家支援を行うベンチャーキャピタルのAntlerが、2022年に日本へ進出した。「Antler Cohort Program(起業支援プログラム)」では、10週間の期間で共同創業者探しからアイディア・事業のブラッシュアップを支援し、プログラムの最後に、有望なチームには2000万円の出資を行う。日本では初回となる、第一期のAntler Cohort Programが2023年1月より開始している。
Antlerの日本進出やAntler Cohort Programについて、パートナーの梅澤 亮氏に話を伺った。
DAY zero(創業0日目)から起業家を支援
―― Antlerについて教えてください
梅澤氏:Antlerはシンガポールに本拠地を構える、シード / アーリーステージのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルです。起業家支援のプログラムを、22ヶ国25都市で年2回実施しています。10週間のプログラムの最終週に投資委員会を開催し、参加者は事業プレゼンテーションを行います。有望なビジネスに対しては創業資金として2000万円を出資しています。
Antlerは、起業家が自分のアイデアを実現することができるように支援し、成功する可能性を高めるために、最善を尽くします。
ANTLER JAPAN提供
―― Antler Japan設立の背景や経緯について教えてください。
日本はスタートアップ企業にとって非常に起業がしにくい特殊なマーケットです。オフィスを借りる際にかなりの前払い金が必要となる、銀行口座の開設が難しいなど、起業へのハードルは依然として高いままです。日本政府もスタートアップ向けの支援を進めていますが、スタートアップを立ち上げるための支援はまだ不十分です。
そこでAntlerは、創業前からの支援と、グローバルネットワークの提供を行うことに意味があると考えています。
日本の多くのスタートアップは、ポテンシャルの高い技術を多く持っているにもかかわらず、日本国内での活用にとどまっています。インパクトの強い、日本に眠っている技術をAntlerを通じて世界に展開することを、コロナ以前から考えていました。
日本の起業家たちに必要な支援を提供することで、日本のビジネスシーンを盛り上げることを目指しています。
共に「やりきる」創業パートナーを見つける
―― Antler Cohort Programでは具体的にどのような取り組みを行っていますか。
Antler Cohort Programは、約10週間の起業支援プログラムです。起業を希望する1000名程度の候補者の中から100名弱が選抜され、共同創業者のマッチングから事業アイデアのブラッシュアップを10週間で行い、プログラムの最後にはビジネスへの投資判断を行います。
ANTLER JAPAN提供
まずは参加者の中で、共に事業を行っていく共同創業メンバーを探すことから始まります。参加者のバックグラウンドや人物像を、自己紹介をはじめとした、様々なアクティビティを通じて相互に理解を深めていきます。プログラム参加者内でチームを組成することもありますし、同じチームにならなかったとしても互いに励まし合いながら創業期を過ごすことになるため、積極的に自分をアピールすることが重要です。
参加者の様子(ANTLER JAPAN提供)
また、「Master Class」と呼ばれる、外部講師を招き、起業に関する実践講義を座学でも行っており、プログラム期間を通じて複数回行います。ビジネスを立ち上げるうえで必要な知識について、連続起業家、士業や専門家から講義を受けることで、事業を推進するうえで必要なことに備えることができます。
「MASTER CLASS」で講義を行うシリアルアントレプレナーのJeffery Char氏(ANTLER JAPAN提供)
事業アイデアのブラッシュアップについては、私や各国のアドバイザー、有識者と日々壁打ちを行います。メンタリングを通じて、構想する事業やマーケットの解像度を高めていきます。
―― 他のベンチャーキャピタルのプログラムと異なる点を教えてください。
共同創業パートナーを探すところから支援を行っている点は大きな特徴です。一度パートナーを見つけてチームを組んでも、事業アイデアを考える中で意見の相違もあるかもしれません。パートナーを一度決めたらそれで終わりではなく、一定期間一緒に働いてみてフィット感を確認する。違和感があれば、一度チームを解消してまた別の人と組んでみる。自分がベストだと思うパートナーを、時間をかけて見つけることができる点は非常にユニークで重要だと考えています。
また、10週間のAntler Cohort Programの期間中は、プログラムにフルコミットしていただくことをお願いしています。別の企業に在職中の方は休職を、在学中の方は休学をお願いしています。有望なビジネスは、事業に本気で向き合いながら考える中で生まれるものだと思っていますので、その覚悟がある参加者を歓迎します。
参加者の様子(ANTLER JAPAN提供)
Antlerがこれまでに培ってきた、グローバルなネットワークを活用できる点も大きな魅力です。構想する事業アイデア次第では、ニーズの検証や情報収集にかなりの時間を要します。ネットワークを活用することで、Antlerがすでに出資している企業や、各地で活躍するアドバイザーに海外事例を聞くことができます。通常であれば、自分で一から時間をかけて調査しなければならない部分も効率的に進めることができ、事業アイデアの構想および推進に注力することが可能です。
―― 今後の参加を検討している方向けに、メッセージをお願いします。
Antlerは常に起業家ファーストで、Day zeroから優秀な起業家やアイデアを支援することをミッションとしています。
第二期のAntler Cohort Programについては、今年の8月に開催を予定しています。あらゆる困難を乗り切り「やりきる」ことができる参加者の応募をお待ちしています。専門分野での経験を持つ方も同様です。ゴールに向かって、ビジョンやミッションをもって頑張ることができる方や、本気で世界に挑戦したいと思っているチャレンジ精神のある方を歓迎します。