6.3億円調達のファンファーレ株式会社が描く、産廃業界の未来

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KEPPLE編集部

産業廃棄物業界に特化した配車管理SaaS「配車頭」を運営するファンファーレ株式会社 がプレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による6.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、既存株主であるALL STAR SAAS FUND、Coral Capitalの他、新たにENEOSイノベーションパートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルが加わった計5社。

調達した資金は、セールスやカスタマーサクセスを中心としたビジネス組織の拡大やプロダクトラインナップを広げるための開発組織強化に充て、産廃業界でより大きな価値を顧客に提供することを目指すとしている。

今回の資金調達に際して、ファンファーレの代表取締役CEO 近藤氏とCOOの王氏に、詳しく話を伺った。


―― まずは、御社の事業についてお聞かせください。

近藤氏:弊社は、産業廃棄物の業界でITサービスを提供しています。この業界は慢性的に労働人口が不足している一方、社会になくてはならないインフラの一つです。そのため、ITの力で生産性を向上させ、強靭な社会インフラを作っていきたいという思いで事業を行っています。

日本では廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分かれており、一般廃棄物は家庭から出るゴミで、産業廃棄物は工場や建設現場など産業から排出される廃棄物です。それぞれで適用されるルールや回収方法が異なります。一般廃棄物は回収日が決まっている一方、産業廃棄物は日々量やルート、種類などが変わります。そのため、毎日配車表を作り直す手間がかかっており、労働人口減少による従業員不足が叫ばれる中、各社がIT投資により産業のDX化を進めているものの、生産性が向上できていないのが業界全体の課題です。

そこで弊社では、AIにより廃棄物の収集運搬のルートを自動作成するサービス「配車頭」を提供しています。料金体系は、配車対象の車両台数に応じて月額料金が課金されるような仕組みになっています。世の中にまだない価値を提供しているので、私たちとしても適正なプライシングを模索している状況ですが、弊社サービスによって配車効率が上がり、車両1台あたりが月に1回でも多く回収できれば、十分に元が取れるような価格設定になっています。実際、導入企業ではそれ以上に配車効率が上がっていると効果を実感いただいており、利用開始後に導入台数を増やしていただくことが多いです。

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―― 「配車頭」が取り組む課題や業界の「不」について、教えてください。

近藤氏:業界の一番の課題は、従業員不足です。最大手もIT投資により業務の生産性向上を図っていますが、ニーズに追いついていない状況です。そこで、「配車頭」を使用すると数分で簡単に配車表を作成でき、乗務員のスマートフォンに配車の予定が送信されます。配車頭の導入により、既存の乗務員数でより多くの受注を受けられるようになったり、複雑な配車表の作成を誰もが行えるようになるなど、配車管理業務の手間を削減し配車業務の作業負荷を下げることができるようになります。

―― これまではどのように配車表を作成していたのでしょうか。

近藤氏:配車に必要な情報は多様にあり、これまでは電話やFAXでやり取りしながら作成していました。大きな流れとしては、車庫で人と車種をマッチングした後、ゴミが出る排出場に向かい、廃棄物品目ごとに処分場が異なるので場所を変え、何往復かしながら廃棄物を運んでいきます。必要な免許、車種、作業種別、処分場といった組み合わせが非常に多く、複雑です。

中には現場の道路環境や現場ごとに合う車種などを全て把握しているベテラン社員さんもいますが、10億円規模の会社でも1人くらいしかいない状況です。このような複雑な配車パターンも、AIの導入により効率よく配車表を作れるようになりました。

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―― 現在の事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

近藤氏:前職のリクルートで専門職種としてUXを担当しながら、副業として個人でもUXコンサルティングをしていました。美大出身で、デザインの専門職種として働いてきました。その中で、大手企業の産廃のUXコンサルティングに携わったときに衝撃を受けたんです。IT投資で現場のDXを進めようとしている一方、投資方法は非生産的で現場も非常にアナログでした。ここはもっと効率化できると思い、休日や有給休暇を使いながら1年間ほどかけて全国の産廃事業者を訪問して理解を深めていきました。そしてこの業界に対して当事者意識を持てるまで覚悟が高められたところで、退職して起業しました。


―― 今回の資金調達の背景および調達した資金の使途について、教えてください。

近藤氏:今回の調達資金は、プロダクトの幅を増やすことと、セールスやカスタマーサクセスを中心としたビジネス組織の構築に使いたいと思っています。弊社は、産廃業界の生産性の向上に寄与するというミッションで事業を行っています。

それに基づき、まずはプロダクトの幅を広げることで、産廃業者の業務フローの上流〜下流を全てカバーしたいと考えています。産廃の業務を大まかに分けると、契約、受注、配車、収集運搬、処理、計算、請求という流れがあります。配車業務に関しては圧倒的な生産性の向上ができたので、既存サービスのデータを生かし、他の業務フローで提供できるサービスを増やしていきたいと考えています。

また、セールスやカスタマーサクセスなどのビジネス組織も強化していく予定です。弊社では、半年ほど前から積極的に営業活動を進めています。しかし、現時点でメンバーはセールスとカスタマーサービスの合わせて2名しかおらず、お客様からのお問合せにすら対応し切れていないのが現状です。そのため、ビジネス組織を拡大することで、より多くのお客様に弊社のサービスを導入頂けるようにしたいと思っています。

―― このたび王玲氏が正式にジョインされましたが、王氏と近藤氏の出会いのきっかけを教えてください。

王氏:近藤とは、リクルートで同僚として働いたのが最初の出会いです。彼のチャレンジを仕事仲間かつ友人としてずっと見てきました。かねてからすごく素敵な挑戦をしていると思っていましたが、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)に到達したタイミングで、近藤からビジネスサイドを強化して、自社サービスによる顧客への価値提供を拡大再生産できるような仕組みを構築したいという相談を受けました。

私はプロダクトは作れませんが、ビジネスサイドであれば様々な業界や職種での経験があったので、自分の力やこれまでの経験を活かして貢献できると思いました。また、私自身も責任者としてCVC部門を0から立ち上げた経験があり、投資する側としてスタートアップ業界全体への理解が深まる中、ファンファーレの社会貢献性やビジネスとしての面白さを改めて感じていたタイミングでもありました。

産廃業界はあまりいいイメージを持たれないこともありますが、実際にお会いしてみると、とても真摯に仕事に向き合い、やりがいを持って仕事されている方が非常に多いです。そのため、私たちがフックになり、この業界へのイメージを覆していきたいと思っています。

―― 王氏から見たこの業界のやりがいや、今後のファンファーレとしての意気込みを教えてください。

王氏:日本のように、どこに行っても快適で綺麗な国はなかなかありません。この快適な暮らしを陰ながら支えているのが産廃業界のみなさんです。テレビドラマをきっかけに特定の職業が注目されて人気になるように、私たちがこの業界のDXを牽引する役割を担うことで「産廃業界って私たちの生活を支えてくれていて、DXも進んでいて、かっこよくて素敵な業界だよね」と人気業界に変えていけるといいなと思っています。

また、日本における業界構造としては中小企業が多いので、私たちのような存在がプラットフォーマーとなって、そこを団結させる一つのきっかけになっていきたいです。


―― 今後の長期的な展望を教えてください。

近藤氏:弊社自体がソフトウェアサービス企業として、産廃業界での社会インフラの一つになりたいと思っています。
産廃業界には、SIerはたくさんいますが、スタートアップのように資本にレバレッジをかけて先行投資をしていく企業は少なく、ここまでの額の資金調達をしているのもおそらく弊社のみです。

業界構造は分散型で市場が大きく、顧客数が多いという特徴があります。中でも中規模企業がボリュームゾーンで、全国各地で各々事業を行っている業界です。そのため、一つの中小企業が自社で一生懸命IT投資をするよりも、弊社のような汎用的なサービスを作るSaaS企業に対して皆で投資をしていく形を取れば、全国の産廃業者の生産性が上がっていくと考えています。

産廃業界が成り立ってきたのが昭和の高度経済成長期の頃ですが、今でも旧態依然の業務フローをずっと続けており、今後労働人口が減る中では業務の維持は難しくなる一方です。それに対し、アプリケーションにより配車や受注が便利になるだけではなく、ソフトウェア自体がインフラとなることで、産廃事業者の方が新しい挑戦や業務の効率化をする際にも我々のサービスで自然に実現できる状態を目指しています。

そして、弊社自体がソフトウェアサービス企業として、産廃業界での社会インフラの一つになれたらと思っています。

―― 最後に、採用に向けてメッセージをお願いします。

王氏:弊社で働くメンバーは、もともと業界への思いが強い人もいれば、これまで業界とは縁もゆかりもなかった人が一歩踏み出し、この業界を良くするために寄与したいと共感して入社してくれた人もいます。

生きていると、人間誰しも先入観で嫌な思いをすることが一度はあると私は思っています。特に、この業界では多くの人が先入観による誤った認識への悔しさを経験しています。だからこそ、悔しさをバネにして、産廃業界へのイメージを転換し、社会課題の解決に繋げていくという正の連鎖を共に作っていきたいです。そのような事業に共感してくれる仲間が増えていけば、非常に心強いと思っています。

近藤氏:私はUXデザイナー兼経営者です。UXのプロは、普段共感しづらいものに対して専門性を駆使して理解し、ユーザーの体験や行動を作る仕事だと考えています。自分がプロとして身につけたスキルを社会に還元するとき、自分のプロフェッショナリズムをどこまで発揮して挑戦できるかという面白さもあります。当事者が抱える課題や思いを観察して察しつつ、データ等で可視化して伝わりやすく表現し、共感性を拡張するのが自分たちがプロとしてやる仕事だと思っています。弊社の業務プロダクト開発は、その部分で非常にやりがいがあります。

廃棄物業界は、普段触れ合う機会がない人がほとんどのため、課題や働いている人を想像しづらいと思っています。そのため、まずは私たちがその認知的なマイノリティを乗り越え貢献すべく、サービスをPMFさせて拡大しようとしています。調達情報などからスタートアップの成長企業として弊社に興味を持ってもらえる機会は増えていますが、そこから一歩踏み出し、自ら共にチャレンジしたいと共感してくれる人とぜひ一緒に働きたいと思っています。その一歩が社会を変えていきます。ぜひ「知る」というところからでも弊社にコンタクトをとっていただけると嬉しいです。

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