HR共創プラットフォーム「PathosLogos」を運営する株式会社パトスロゴスがプレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による19.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコ グループ、31VENTURES Global Innovation Fund 2号、農林中金イノベーションファンドの4社。
今回の資金調達により製品開発を進め、PathosLogosの導入、およびパートナー獲得を加速する。
HRデータを一元管理する共創プラットフォーム
PathosLogosは、複数のHR SaaS間のデータ連携をシームレスに行うプラットフォームだ。
企業は用途ごとにクラウドサービスを契約する一方、サービス間で保有するデータは異なる。各サービスのデータを同社が定義するデータ項目に変換することで、データの一元管理を実現する。
各サービスのデータが連携されたデータベースを用いることにより、企業は各システムとの連携や移行業務の負担を軽減することができる。
2023年4月のリリース後、すでに7社が導入している。また、PathosLogosと接続をする「共創パートナー」として、SmartHRやカオナビなど11社との協力を進める。
さらに、エンタープライズ企業独特の制度や業務に対応する人事給与SaaS「Combosite」も提供している。
ERPパッケージ開発を行うワークスアプリケーションズ創業者である牧野 正幸氏が率いる同社は、今後もPathosLogosの導入や共創パートナーの増加に注力する。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEOの牧野氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
統合型のメリットをSaaSへ
―― エンタープライズ企業におけるソフトウェア利用の現状や課題について教えてください。
牧野氏:私は1996年に大企業向けERPパッケージを開発するワークスアプリケーションズを創業し、2019年に退任するまでCEOとして事業を牽引してきました。提供していたのは、一つの製品内ですべてのHR業務に関する機能を内包する統合型のサービスです。
必要なすべての機能を使える統合型の製品は、事業の継続性を重視する大企業にとって非常に使い勝手が良いメリットがあります。一方でこれらの製品は、一般的には機能が増えるほどシステムが巨大化して小回りが利かず、データ構造も複雑化することで機能拡張やメンテナンスにかかるコストも増加するなど、いくつかの欠点があります。
こうした中で、一部の業務領域に限定された機能であっても、非常に便利で導入コストも低いSaaS製品の利用が増えています。特に中小企業やスタートアップを中心に、複数のSaaS製品を組み合わせることで、必要な機能を補うことが主流になりました。
SaaS間のデータはAPIで連携することが可能な一方、一元的にデータを管理することができていない点は問題です。大企業もSaaSに魅力を感じる一方で、サービスごとにデータのフォーマットがバラバラであることから、利用範囲をかなり限定していることも少なくありません。そのため結果的に、企業は各機能を一つのサービス上で使えるERPを長く使ってきました。
―― どのようなきっかけからPathosLogosの開発を進めたのでしょうか?
近年では人的資本経営の観点から、人に関する情報を多角的に抽出し、分析することが求められています。それぞれのSaaSのデータを統合的に扱いたいという企業からの声が増えてきたことは、PathosLogos開発のきっかけの一つです。
SaaSベンダーも、製品単体ではエンタープライズ企業に必要な要件を満たせず、なかなか普及が進まないという課題を感じていました。自社だけで機能の幅を広げるには、時間もかかるうえに、SaaSの良さも失われてしまいます。
私自身のこれまでの経験もあり、共創プラットフォームの実現に取り組むのであれば協力すると共感いただいたSaaSベンダーも多かったことから、ユーザーとSaaSベンダー双方のニーズに応える形でPathosLogosの開発に至っています。
―― なぜHR領域のプラットフォームとして開発を開始したのでしょうか?
各サービス間のデータがとにかくバラバラで、連携できていないことが大きいです。例えば会計領域では、法律上のフォーマットに合わせたデータの持ち方をしていることも多く、データがある程度標準化されています。
一方で、人事や労務の観点でどのようにデータを管理するかについては標準化が進んでおらず、サービスごとにデータの持ち方が異なります。
また、我々には人事領域での業務を実施していた数々の経験から、企業のHRデータの扱いに関するノウハウがあります。当社であれば、ノウハウや経験を活かして標準的なデータベースを構築することができると思いました。
―― 共創パートナーになるメリットについて教えてください。
大企業が安心して使える製品である認知を得て、普及に貢献する点は大きなポイントです。また、当社は共創パートナーの製品販売も行っています。
大企業向けHRコンサルタントとしての経験を持つメンバーも多く、大企業に普及するうえで販売チャネルの拡充につながります。また、ノウハウを活かして提案するだけではなく、顧客が必要としている機能や導入の障壁など、顧客の声を反映したフィードバックを積極的に行っている点は大きなメリットです。
データの標準化による共創を支援
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
我々が提供している共創プラットフォームは、主に大企業が利用します。セキュリティや使い勝手など、導入時点から高機能で安定性が確保された製品が求められるため、プロダクトの開発を強化していく目的で資金調達を行いました。
さらに、共創プラットフォームを少しでも早く多くの企業に導入していくことが必要です。開発のほか、営業やコンサルティング体制も含めた人材採用を強化していきたいと考えています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
これから2年間で導入社数を増やし、2025年度にはARR15億円の達成が目標です。また、HRデータベース標準化への取り組みを加速していきます。データ項目やデータベースの構造を標準化して提供することで、エンドユーザーの使い勝手だけでなく、開発者の利便性向上にもつながります。
またアメリカでは、企業の給与計算を代行する企業が雇用統計を発表しています。共創プラットフォームにおいても、導入企業が増えるほどこうした統計データも増えていきます。平均報酬や昇格までの滞留年数など、人事や給与に関する情報を企業向けに情報として提供していくことも進めていきたいと思います。
株式会社パトスロゴス
株式会社パトスロゴスは、HR SaaSに関する共創プラットフォーム『PathosLogos』や、人事・給与計算システム『Combosite人事給与』を開発・運営する企業。 『PathosLogos』は、HR SaaS統一規格のデータベースを策定し、勤怠管理や給与管理などさまざまなHR SaaSを共創プラットフォームへ接続した状態で提供するプラットフォーム。 『Combosite人事給与』は、大手企業向けに給与計算や人事情報管理を行うシステム。同システムは、手当などの対象者を事前にチェックする機能や、給与計算後の明細発行、住民税や社会保険関係業務との連携をサポートする機能などを備える。
代表者名 | 牧野正幸 |
設立日 | 2020年10月21日 |
住所 | 東京都品川区西五反田2丁目19番3号 |