次世代スタートアップ5社が熱戦──XLIMIT 4th Batch Demo Day開催、ThePlatoとSingular Perturbationsが受賞

次世代スタートアップ5社が熱戦──XLIMIT 4th Batch Demo Day開催、ThePlatoとSingular Perturbationsが受賞

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KEPPLE編集部
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グローバル・ブレインが主催する、シリーズA未満のスタートアップ支援を目的としたアクセラレーションプログラム「XLIMIT(クロスリミット)」の第4期採択企業による最終成果発表会「XLIMIT 4th Batch Demo Day」が、2026年1月23日(金)に東京・渋谷で開催された。

子育て支援、セキュリティ、AI議事録、経営管理支援、犯罪予測と多様な領域から選ばれた5社が登壇し、三者三様のピッチを見せた。

なお、本イベントで審査員を務めたのは以下の5名。

One Capital CEO / General Partner 浅田 慎二 氏
Project Coalis General Partner 久保田 雅也 氏
Theta Times Ventures General Partner 北尾 崇 氏
Softbank Investment Advisers UK Limited Director 千先 拓志 氏
グローバル・ブレイン General Partner 都 虎吉 氏

プロダクトの実力が光るピッチ、5社が示した成長シナリオ

子育て情報を一元化する「iiba」

最初に登壇したのは、株式会社iibaだ。同社は子育て世帯向けの地図アプリ「iiba」を提供している。代表取締役の逢澤 奈菜氏は「子どもが生まれると、今まで知っていたはずの街も知らない街に変わる。今日どこへ行くかを決めるだけで2時間かかるような生活になる」と、子育て支援に関する地域情報へのアクセスが難しい現状を語った。

逢澤氏によれば、自治体が提供する子育て関連の給付金・バウチャー(クーポン)は年間12兆円規模に達しているが、そのうち7500億円もが未使用となっているという。同氏は背景にある問題点として、バウチャーや利用可能スポットの地図が紙で配布されるため、活用プロセスが煩雑であることを指摘した。

このような課題に対し、iibaは自治体からの委託を受け、バウチャーおよび子育てマップをデジタル化し、バウチャーを利用することができる場所を地図上に表示。習い事やクリニック、飲食店などの事業者に対しても、マップへの有料掲載サービス(リカーリングモデル)を提供している。加えて、デジタル庁と連携してマイナンバー活用を進めており、子育て給付金の申請・チャージ・利用までを一気通貫で行うことができる仕組みを構築している。

直近1年間で52自治体との連携を実現しており、ユーザーの平均滞在時間は10分を超えるという。

逢澤氏は「子育て世代が地域の情報に触れることで心理的にケアされるだけでなく、給付金を活用できることで経済的な負担も軽減される。そのような街を実現していきたい」と意気込みを語った。

iibaの逢澤 奈菜氏
iibaの逢澤 奈菜氏

エンタープライズ向けセキュリティ審査を効率化するConoris Technologies

Conoris Technologies 代表取締役 の井上 幸氏は、企業向けのセキュリティチェック支援サービス「Conoris」を紹介した。元CVCキャピタリストという経歴を持つ井上氏は企業間のセキュリティ格差に着目した。

井上氏は、日本で発生するサイバーインシデントの48%が取引先や外部サービスなど自社以外に起因しており、海外の29%と比較して約2倍の高さとなっていることを指摘。「大企業がどれだけ頑張っても、その先にいる取引先が弱いと結局事業を守りきれない」と井上氏は説明する。

現状、多くの企業ではExcelで作成したアセスメントシートをメールで回覧し、チェックを行う非効率な運用が行われている。担当者は年間数百件の確認・連絡調整を担当するため業務負担が大きいという。

Conorisは、契約開始時のアセスメントから継続的な運用管理、データ管理までを一元化するプラットフォームだ。AIによるセキュリティリスクを評価する機能も評価され、すでに大手企業での導入が進んでいる。審査速度やコストを最大50%削減している事例もあるという。

Conoris Technologiesの井上 幸 氏
Conoris Technologiesの井上 幸 氏

リアルタイム翻訳・要約を実現するAI議事録「Tiro」

韓国発のスタートアップThePlato Co-FounderのYuna Hong氏は、AI翻訳・議事録サービス「Tiro」を紹介した。ピッチではリアルタイムデモが実施され、参加者はQRコードをスキャンすることで、Tiroのリアルタイム文字起こしと日本語翻訳、議事録作成を体験することができた。

Tiroの特徴は、0.5秒以内に文字起こしと翻訳を実行できる点だ。Hong氏は「人間の自然な会話の合間に翻訳することが可能で、単純な翻訳ではなく、知識豊富な通訳が隣にいるかのような体験を提供する」と説明した。

会議終了後は議事録を自動生成する仕組みで、ユーザーはRAG技術を活用した検索により、素早く必要な情報にアクセスできる。対面・オンライン会議、YouTube動画、Apple Watchなど、さまざまな場面・デバイスで活用することが可能。

当初はビジネスパーソン個人向けにBtoCで月額サブスクリプションを提供していたが、口コミによってBtoB導入が増加しているという。2024年9月の正式ローンチ以降、13万人の登録ユーザーを獲得。継続利用率も高い数値を維持しており、継続ユーザーの24%以上が有料サブスクリプションに転換している。月間経常収益(MRR)は現在1,200万円に達しているという。

ThePlatのYuna Hong氏
ThePlatのYuna Hong氏

AIエージェントで経営管理を変革する「Zaimo」

Zaimo株式会社の古城 巧氏は、経営管理AIエージェント「Zaimo.ai」を紹介した。

元コンサルタントでVCでの財務モデリング経験も持つ古城氏が着目するのは、Excel・スプレッドシートを活用した経営管理の煩雑さと作業コストだ。既存ツールは「経営企画が各事業部の計画を吸い上げて集計する」用途に寄っており、計画自体は結局Excelで作られている。

一方、Anaplanのようなプランニングサービスは高額であり、導入は大企業にとどまっているという。

Zaimoはこのギャップを突き、「中小企業版Anaplan」としてミッドマーケット以下を狙う。予算・予実管理はもちろん、計画策定側に寄せており、100以上のビジネスモデルテンプレートから数クリックで詳細な事業計画を生成できる。例えば、SaaS事業における主要な指標など、業種別のKPIツリーと財務モデルを安易に作成することが可能。加えて、自然言語で事業内容や管理したい指標を伝えるだけでAIが最適テンプレートを提案する、手軽な操作性を打ち出す。

市場規模は日本で650億円、グローバルで54兆円と見立てており、「AIネイティブでグローバルのデファクトを狙う」としている。今年は資金調達を進め本格的な成長フェーズに踏み込む方針だ。

Zaimoの古城 巧氏
Zaimoの古城 巧氏

犯罪予測AIで警備業界を革新するSingular Perturbations

株式会社Singular Perturbationsの梶田 真実 氏は、犯罪予測AI「Crime Nabi(クライムナビ)」を紹介した。Crime Nabiは、いつ・どこで犯罪が起きるかを高精度・高解像度で予測し、警備配置を最適化するシステムだ。警備コストの高騰と業界の人手不足を背景に、梶田氏は「今後、AIによる警備最適化がコアとなっていく」と語る。

同社はまず、犯罪抑止の課題感が強いブラジルへ進出。ミナスジェライス州ベロオリゾンテ市で行った同システムを活用したパトロール実証を行ったところ、銅線窃盗などのインフラ犯罪が約68%減少する成果を確認した。現在はブラジルや日本を含め、14の政府機関にシステムを提供し、サンパウロ州軍警察などと連携を進めている。

技術面では転移学習を活用し、犯罪データが乏しい地域でも他地域の学習成果を用いて最適な警備計画を生成できる点が特徴だという。民間向けには、根拠に基づいた警備人員の最適化によるコスト削減を訴求ポイントとし、犯罪被害額の大きい資源企業では30%のコストダウンが可能だとしている。まず警備最適化領域を狙い、将来的にはAIネイティブな警備会社を目指す。

Singular Perturbationsの梶田 真実 氏
Singular Perturbationsの梶田 真実 氏

ThePlatoとSingularが受賞、激戦の審査

全5社のピッチ終了後、審査員による審査と参加者による投票が行われた。参加者の投票で決まる「Audience Award」にはSingular Perturbationsが選出され、すでにブラジルで警備最適化の実績を積み上げている点と、「AI x 犯罪抑止」というインパクトの強いサービスが注目を集めた。

左から、都 虎吉氏、梶田 真実 氏、Yuna Hong 氏、百合本 安彦 氏
左から、都 虎吉氏、梶田 真実 氏、Yuna Hong 氏、百合本 安彦 氏

そして、審査員5名の総合評価で選ばれる「XLIMIT Award」はThePlatoが受賞。メンターを務めた梁 充模 氏(MUFG Innovation Partners / ファンド管理部 次長)が「私自身、2週間前に他サービスから切り替えて利用を始めた」と述べているように、素早いノートテイキング・翻訳・情報活用が可能なプロダクトの機能面などが注目された。

Hong氏は「このような素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。精一杯、世界のトップを目指していきますので、これからも応援よろしくお願いします」と受賞の喜びを語った。

グローバル・ブレインの代表取締役社長である百合本氏は閉会の挨拶で、「不確実性が蔓延し、調達環境も厳しい年になりそうだが、ここにいる皆さんと一緒に日本のスタートアップを支援していきたい」と述べた。その上で「XLIMITは次回の5th Batchから“グローバル”という要素を入れて、さらに進化させる予定だ」と今後の展開について明らかにした。

多様な領域で革新的なソリューションを提供する5社のピッチは、調達環境が厳しい中でもエコシステムを牽引していく可能性を強く感じさせるものであった。今後の展開から目が離せない。

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