グローバル・ブレインが主催するアクセラレータープログラム「XLIMIT 3rd Batch」のデモデイが開催された。本プログラムは、シリーズA未満のスタートアップを対象に、資金提供やメンタリング、法務・財務、テクノロジー、プロダクト開発、採用、PRなど各分野の専門家による講座、潜在顧客や提携先の紹介など、多岐にわたる支援を行う。
採択企業には原則として1000万円が資される。過去2期には計11社が採択され、そのうち7社がプログラム終了後に資金調達を実施している。3rd Batchとなる今期では、外部メンターの拡充や先輩起業家を招いての実用的なレクチャーとオフィスアワーなど、プログラムにおける支援の幅を広げている。
今回採択されたのはアウトラウド、any style、Seven Point One、NexaScience、LOOVの5社。3ヶ月間のプログラムを通じてブラッシュアップした事業について、各社が熱意のこもったピッチを披露した。
審査を担当したのは坂 祐太郎氏(ジャフコ グループ パートナー)や倉橋 健太氏(プレイド代表取締役CEO)ら4名。各社のピッチは、担当メンターが前振りして呼び込む形で実施された。
Seven Point One
認知症予防や早期発見を目的としたデジタルヘルスケアソリューション「AlzWIN」を提供する韓国発の企業。音声解析技術を活用し、認知機能の低下を早期に検出することを目指している。医療機関や製薬会社などへの展開を進める。
アウトラウド
エンタープライズセールス向けのAIエージェント「Pocta」を開発する。顧客や業界情報をAIが自動でリサーチ分析し、エンタープライズ営業の商談準備にかかる工数を削減・効率化するソリューションだ。データは財務諸表などの公開情報に加え、自社で契約するSFAの情報などを活用する。4時間かかっていた商談準備が5分で終了したという導入効果も得ているという。商談以降に必要な個別案件のフォローもAIが提案する。
NexaScience
マルチLLMを用いたAIエージェントを開発する。設立したのは、JST(科学技術振興機構)が推進するムーンショット型研究開発制度で、PMを務める牛久 祥孝氏。牛久氏が推進していたTAUROプロジェクトをスピンアウトする形で設立された。
同社が捉えるのは、論文や特許の数が増加してイノベーションのチャンスが増えている一方で、その膨大さから専門家ですら情報を追いきれないという課題。そこに対して独自のAI駆動型プラットフォーム「InnoSight」を提供し、研究開発の高速化や知財担当者の業務効率化を支援するという。
LOOV
営業・マーケティング向けの対話型動画ツール「LOOV」を提供している。このツールは、動画内に設問や入力フォームを組み込み、視聴者の回答に応じて動画の内容を変化させることで、個々のニーズに合わせた情報を提供する。資料を読むだけでは伝わらないサービスの特徴などについて、動画を通じてパーソナライズして伝える形だ。すでに累計100社以上が導入する。
any style
VTuberと直接会話ができる推し活アプリ「my dear.」や、法人向けのVTuberマーケティングサービス「my dear. nest」、さらにVTuber事務所「my dear. production」の運営を行う。VTuber市場が盛り上がる中で新規参入も増える一方で、YouTubeチャンネルが伸び悩むケースも多い。同社はTikTokでの新人ライバー発掘に注力しながら、VTuber事務所としてのIP作りに着手していく。2024年8月には、総勢36名のVTuberによるJR東日本のPR企画を実施した。
審査員賞受賞はNexaScience
デモデイのピッチセッション終了後、審査員からの講評が行われ、各スタートアップの強みや今後の課題が共有された。今回、審査員からの「XLIMIT AWARD」を受賞したのはNexaScience。参加者からの投票によるAUDIENCE AWARDを受賞したのはLOOVだった。
その後は参加者同士のネットワーキングが実施され、ピッチ企業や投資家、企業関係者が活発に交流した。「XLIMIT 3rd Batch Demoday」は、スタートアップエコシステムにおける注目事業の芽を感じさせる場となった。