【アフリカ・インサイト】【Vol. 01】アフリカ市場は“現地と繋がること”から始まる──VCが語る、日本企業進出の鍵


グローバルサウスは、若年層人口の圧倒的な増加とテクノロジーの発展に裏付けられた経済成長によって、今後の「世界経済の中心地」へと確実にシフトしていく。中でも、テクノロジーを活用し現地の課題を解決する「スタートアップ」こそが、その成長のエンジンとなっている。そして、そんなスタートアップへの投資資金がそのポテンシャルに対して「最も不足している地域」にこそ、最大の機会が眠っている──。
そう断言するのは、エジプトを拠点に活動する「Sunny Side Venture Partners」代表の才木貞治氏だ。本インタビューでは、アフリカならではの「市場の分断(フラグメンテーション)」を逆に強みに変える投資哲学、日本企業の新興国での明暗を分ける「失敗の許容とコミットメント」、そして現在組成中の日本・アジア初となる「アフリカ・中南米ファンド」の全貌に迫った。「Additionality(アディショナリティ)」を武器に、未開拓の市場で財務的・戦略的リターンを生み出すことを目指す同氏に、グローバルサウス投資の最前線と新興国ビジネスの本質を聞く。
本記事では、インタビューの一部をご紹介する。
アフリカ市場は「54カ国に分かれている」というフラグメンテーション(市場の分断)が課題として語られることが少なくない。一方、才木氏は、これをむしろアフリカ投資ならではの強みだと捉えている。
インドとアフリカはほぼ同じ人口だが、インドは一つの国、アフリカは54カ国に分かれたフラグメンティッドな市場である。同じアフリカの中の国同士の比較で見る方が、インドとアフリカで見るよりも、経済規模や規制環境が近い国同士を比較できるため、ある国で成功したビジネスモデルや失敗事例を、別の国での投資判断に生かすことができる。
才木氏は、この考え方を「タイムマシン投資」と表現する。市場の分断を弱みとして捉えるのではなく、他国の成功や失敗を次の市場で再現・検証できる環境として活用することで、新たな投資機会を見出すことができるという。フラグメンテーションを逆手に取り、未来の成長市場を見極めることこそ、アフリカ投資の醍醐味であると話す。
アフリカのスタートアップ投資は、ケニア、ナイジェリア、エジプト、南アフリカの「Big4」に集中している。しかし、才木氏は「Big4だけを見ていては、アフリカ投資の本当の面白さは捉えきれない」と話す。
Sunny Side Venture Partnersでは、過去の投資件数や投資額をもとに投資合理性を評価するだけでなく、「Additionality(アディショナリティ)」という独自の視点も重視している。現在の投資水準は低いものの、将来の人口・GDP成長などを踏まえ、大きな価値を生み出せる市場を見極めているという。
実際、同社の24社目の投資先はカメルーンのフィンテック企業「PaySika」である。各国でスタートアップ支援策や制度整備が進む中、Big4以外にも未開拓の市場は数多く存在し、フィンテックに限らず幅広い分野で新たな投資機会が生まれているという。
日本企業がアフリカ市場で成功するために必要なのは、短期的な成果ではなく、長期的なコミットメントだと才木氏は話す。
成功事例として挙げられた企業では、日本人駐在員が7年間にわたりエジプトに常駐し、現地の流通や営業活動を地道に積み重ねてきた結果、エジプト市場で高いシェアを獲得している。
海外企業を買収し、現地人材だけに事業運営を任せるだけで成功するのは難しい。日本企業ならではの品質管理やオペレーション、企業文化を現地で再現するためには、本社の価値観を理解した人材が現場に入り込み、長期的に市場を育てていく姿勢が不可欠だという。
現在、Sunny Side Venture Partnersでは、アフリカに加え中南米も投資対象とする2号ファンドの組成を進めている。その理由について、才木氏は「アフリカと最も構造が似ているのは、インドや中国ではなく、中南米や東南アジアである」と話す。
インドや中国は一つの巨大市場であるのに対し、アフリカと中南米は複数の国で構成されるフラグメンテッドな市場である。共通言語を持ちながら国境を越えて事業を展開するという構造も似ており、市場の比較や横展開がしやすいという特徴がある。
さらに、中南米はアフリカより市場成熟度が高く、IPOやM&Aなどのエグジット機会も比較的豊富である。一方、アフリカには人口増加を背景とした高い成長ポテンシャルがある。成熟性と流動性を持つ中南米と、爆発的な成長余地を持つアフリカを組み合わせることで、よりバランスの取れた新興国投資が実現できるという考えだ。
将来的には、アフリカ・中南米・アジアをつなぐ「グローバルサウス特化型・独立系民間VC」を目指しているという。

才木 貞治(さいき さだはる)
Founder & General Partner, Sunny Side Venture Partners
エジプト・カイロ在住。株式会社電通東京本社にて6年間トヨタ自動車営業として同社のグローバルマーケティングを担当した後、電通インド・バンガロール本社にて3年間、Directorとして日系企業のビジネス拡大支援に従事。その後、Harvard Business Schoolへ留学し、アフリカビジネスクラブやインパクト投資クラブ等での活動や、ケニアやワシントンD.C.のベンチャーキャピタルでのインターンを経験。卒業後、McKinsey & Company東京オフィス勤務を経て、2022年にアジア初の北アフリカベースVCであるSunny Side Venture Partnersを創業。これまでに24社のアフリカ・中東のアーリーステージスタートアップに投資、投資先のオペレーションは24か国に上る。
現地エコシステムの熱心な支援者でもあり、日本経済新聞社と経済産業省が東京で開催した「日本・インド・アフリカ官民フォーラム」や、アフリカ最大のスタートアップカンファレンスであるモロッコ・マラケシュの「GITEX Africa」、エジプト最大のスタートアップカンファレンスであるカイロの「RiseUp Summit」など、これまでに15カ国23都市で90以上のアフリカ・中東のスタートアップ関連イベントに登壇・参加。
埼玉県立浦和高校・京都大学総合人間学部卒業、ハーバード大学経営大学院(Harvard Business School)にてMBA with Distinction[全学生の上位10%程度の成績優秀者]取得。GLIN Impact Capital Co-Founder。
※本記事は以上です
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